SAE粘度分類

エンジンオイル・ギアオイル・ATFなどの性状


2001/06までのCCS粘度分類(併記の場合は括弧内が新しい基準を記載しています)
エンジンオイル
ASTM試験法 D5293 D4684 D445 D483
SAE粘度
グレード
低温側
2001/06まで
(2001/07より)
ポンピング粘度  高温側 150°C 
規定温度での最大粘度
SAE J300
J-300規格=60000mPa・s 動粘度cSt(100°C)
以上mm2/s<未満
HTHS粘度cP
0W  3250mPa・s−30°C
(6200mPa・s -35°C)
60000mPa・s(−40℃)  3.8  ー    ー   
5W  3500mPa・s−25°C
(6600mPa・s -30°C) 

60000mPa・s(−35℃)
 3.8  ー    ー   
10W  3500mPa・s−20°C 
(7000mPa・s -25°C)

60000mPa・s(−30℃)
 4.1  ー    ー   
15W  3500mPa・s−15°C
(7000mPa・s -20°C) 

60000mPa・s(−25℃)
 5.6  ー    ー   
20W  4500mPa・s−10°C
(9500mPa・s -15°C) 

60000mPa・s(−20℃)
 5.6  ー    ー   
25W  6000mPa・s −5°C
(13000mPa・s -10°C) 

60000mPa・s(−15℃)
 9.3  ー    ー   
20   ー   ー          5.6< 9.3  2.6 
30  ー    ー          9.3<12.5  2.9 
40  ー    ー         12.5<16.3  2.9(A)※
40  ー    ー         12.5<16.3  3.7(B)※
50  ー   ー         16.3<21.9  3.7 
60   ー   ー         21.9<26.1  3.7 

※(A)= 0w、5w、10w-40 (B)=15w、20w、25w-40、40
センチポアーズ(cP):cStを密度で割った粘度の単位
cP=mPa・s
cSt=mm2/s
 

上記の表はあくまでも粘度の分類を示しただけのもので、
一般ではマルチグレードオイル(0〜25W−20〜60) しか使用されてないのでその意味を説明します。

例えば、5W−40 は
 
 
エンジンオイル
SAE粘度 低温側  ポンピング粘度  高温側 150°C 
規定温度での最大粘度 J-300規格=60000 動粘度cSt(100°C) HTHS粘度cP
5W  3500mPa・s−25°C
(6600cSt -30°C)  
60000mPa・s−35℃  3.8  ー    ー   
40 ー    ー         12.5<16.3  2.9(A)※

@-35℃=60000でオイルでエンジンを始動しても オイルを吸い上げることができます。

 A100°Cの時でも12.5<16.3という高温での粘度を持ち さらに、150°Cの時でも最低2.9の高温せん断粘度を持つことが わかります。
2.6以上ないとオイル膜が薄くなりすぎて エンジンが焼き付くことがあります。

 というように、しらべます。

例えば動粘度が40度Cで30.0で100度Cで4.8のオイルの場合、高温側で決まってしまいます。
5.6以下4.1以上ですから「10w」シングルグレードとなります。
この粘度の市販油としては、フラッシングオイルなどになります。
ギアオイル
SAE粘度
SAE J306
低温側 高温側
粘度が150000cpになる最高温度 動粘度cSt(100°C)
70W −55℃ 4.1(最低)→   ―  (最高)
75W −40℃ 4.1 (最低)→    ―  (最高)
80W −26℃ 7.0 (最低)→   ―  (最高)
85W −12℃ 11.0(最低)→   ―  (最高)
80 7.0(最低)→ <11.0(最高)
85 11.0(最低)→ <13.5(最高)
90  ―    13.5(最低)→ <24.0(最高)
140 ―    24.0(最低)→ <41.0(最高)
250 ―    41.0(最低)→   ―  (最高)

自動車用ギアオイルの分類
 
 
機構名称 使用オイル 種類・グレードなど 特徴
トランスミッションオイル(T/M) 手動変速機油(マニュアルトランスミッションオイル) GL3・GL4 シンクロ機構があるため、この部分は出来るだけ高い動摩擦係数を要し、シフトフィーリングのためには静摩擦係数を低くしている
自動変速機油(オートマチックトランスミッションオイル)=ATF デキシロン(GM社)・マーコン(フォード社) 油圧機能に加え、湿式クラッチの高伝達トルクと変速ショック低減のため、摩擦調整剤が加わる。
CVT油 デキシロン・CVT油 ベルト使用のためそれに合う摩擦調整剤が加わる
アクスル(ハイポイドギア)
=デファレンシャル
ハイポイドギア(デファレンシャル)オイル GL5 高すべり速度で衝撃荷重が加わるため、高い極圧性要求から
イオウ・リン系極圧剤が入り、極圧レベルにより異なる活性を持つものも加わる。
LSDギアオイル GL5 アクスルの中にクラッチが組み込まれるので、高い動摩擦係数を要し、ノイズ防止のため低い静摩擦係数が必要となる。

劣化の判断

1.色・・・普通に使用していれば、変色はあまりないと言えますので、黒くなった場合は油温上昇による酸化物質の生成が考えられます。
また、白濁は水分や空気の巻き込みで生じます。通常水分の混入はAT等を除き、あまり考えられないと思います。
2.粘度・・・粘度変化はギアオイルに含まれる粘度指数向上剤のせん断で低下し、酸化で酸性物質の重縮合反応により増加しますが、
ギアボックス内は空気の流入が少ないため熱劣化によることが多いと思われます。普通はあまり粘度変化が少ないと言えますので、
エンジンオイルに比較しますと長期使用がされています。
3.不溶解分・・・熱酸化劣化物と摩耗粉があげられますが、作動油ほど重要性は高くないと言われます。ただ、歯車の摩耗粉は、
オイル中に攪拌されて摩耗原因となります。
 

粘度分類の比較表

ついでに、エンジンオイルとミッションオイルと工業用オイルの粘度を表にしました。

おおよそですが、エンジンオイル10W−50はミッションオイルの75W−90にあたります。
75W−90の[90]の幅が結構広いので10w−(40から60)の範囲で
粘度の違うミッションオイルが作られているわけですが
このあたりはシフトフィーリングの違いともなって現れてきます。

また、75W−80は、シングルグレードではエンジンオイルのシングルの20あたりになります。
ギアオイルのシングルグレードの90はエンジンオイルのシングルの40あたりになります。
工業用ギアオイルは40度Cを基準としたISO粘度分類がなされ、自動車用は100度Cを基準とした
SAE(J306)が一般的になります。

FR車のデフオイルとして80W−90、85W−90が特に使用されていますが
80Wと85Wの範囲はエンジンオイルの15Wから40までにあたりますから
結構固いオイルと言えます。
ですから、
ミッションデフ兼用オイルでも75W−90のギアーオイルは
80W−90指定のデファレンシャルには使用しない方が良いと言えます。
使うならば75w−140が粘度的には相当する事になりますので
これを使うか、あるいはシングルグレードの90番が良いでしょう。

また、ATF指定になっているMT用オイルには
75w−90などは使用しないで、
どうしてもという場合は5w−50あたりのエンジンオイルの方が
適合するかもしれません。

ミッションとFR車のデフオイルとは別の粘度のオイルと覚えておかれても
まんざら間違いとは言えない粘度的な違いがあるようです。
 

工業用潤滑油の粘度グレード(規格番号 ISO 3448)
ISO粘度グレード 動粘度(40度C)、mm/s 相当する
SAE
代表値 粘度範囲 エンジン油 ギア油
最小 最大
VG2 2.2 1.98 2.42
VG3 3.2 2.88 3.52
VG5 4.6 4.14 5.06
VG7 6.8 6.12 7.48
VG10 10 9.00 11.0
VG15 15 13.5 16.5
VG22 22 19.8 24.2 5w
VG32 32 28.8 35.2 10w 75w
VG46 46 41.4 50.6 10w 15w
VG68 68 61.2 74.8 5w−20、30
20w
80w
VG100 100 90.0 110 10w−30、40 85w
VG150 150 135 165 20w−40、50 80w−90
VG220 220 198 242 50 90
VG320 320 288 352 60
VG460 460 414 506 140
VG680 680 612 748
VG1000 1000 900 1100 250
VG1500 1500 1350 1650

工業用と自動車用のギア油粘度グレード表(JISK2219)
 
  種類  粘度グレード 用  途
工業用 1種 ISO VG 32〜460 主として一般機械の比較的軽荷重の密閉ギヤに用いる。
2種 ISO VG 68〜680 主として一般機械・圧延機などの中・重荷重の密閉ギヤに用いる。
自動車用 1種 SAE:
75W・80W・85W・90W・100W
主として自動車の中程度の速度・荷重で作動するギヤに用いる。
2種 SAE:
75W・80W・85W・90W・100W
主として自動車の高速・低トルク又は低速・高トルクで作動するギヤに用いる。
3種 SAE:
75W・80W・85W・90W・100W
主として自動車の高速・衝撃荷重、高速・低トルク又は低速・高トルクで作動する
ギヤに用いる。

うなり音
最近は100%合成油のギアオイルも増えてきました。 合成油は一般的に 1.添加剤が入れにくい(混ざる限度があり、あまり混ざらない) 2.高い圧力に対しては弱い と言うデメリット以外、鉱物油に対して優れているのですが、 ギアで問題になる場合多分「うなり」の発生と思われます。 時々体験するのですが、鉱物油と比較して、柔らかくできますので、 ギアなどの精度の問題から、 合成油を使用すると「うなり」が出る場合が、例外的に発生しています。 この場合、 元の鉱物油に戻すか、それでもダメな場合、そのマルチグレードをシングルに変更することで 解消されるようです。 つまり、硬いものを使用することで、フリクションが多くなりますが、 「うなり」がかなり解消するわけですが、 これはエンジンオイルの場合と似ています。 例えば、100%合成油の75w−90ですと、鉱物油ではもっと硬いわけですから、 そちらを使用するか、鉱物油シングルの90ぐらいが適当と思われます。 僅かに重くなるきらいはありますが、 「うなり」音はもっと気になりますから仕方ない選択かも知れません。 ちなみに、体験した比較でいえば、 鉱物油から合成油に替えた車両の内、軽自動車に「うなり」が集中して発生するようです。 ただ、どうしようもなく「うなり」が発生するケースもあるようです。 この記述を載せたところ、来店頂きまして、お話をお聞きしましたが、以下の通りです。 車速に反応しておこる「うなり」で、軽自動車のミッション&デファレンシャルケースから 発生しているようなんですが、40−50kmあたりで必ず出るそうです。 純正ギアオイルからアジップ(100%合成油)、ワコーズ(鉱物油)、カストロール(鉱物油) そして添加剤も入れてみるのですが、全く変化なしと言うことです。 添加剤を入れた時はさすがに「ギア鳴り」はなくなり、「騒音」は静かになりましたが、 「うなり」に関しては全く改善されずでした。 ディーラーでもOHするしかないといわれたようです。 似たケースで何台かありましたが、様々な「うなり」の出方があります。 OHして直った場合で、見てみますと ほとんど「ギアの摩耗・破損(カケ)」に原因があるようでした。 オイルを替えても、添加剤を入れても変化が出ないような場合は、ほぼこちらと言えます。


ATF−DEXRONVの性状は以下の通りです。

トルクコンバータオイルとしてはSAE20以下の低粘度油になります。
 
・ATF−DV(鉱物・部分合成油)
メーカー 40度C低温側(mm2/s) 100度C高温側 流動点(度C) 引火点(度C) 粘度指数
A社 34.9 7.2  192 176
B社 33.0 7.01 −52.5 190 181
C社 37.2 7.4  −50 195 171
D社 34.0 7.1  −50 195 175
カストロール
・ATF−DV−G(100%合成油)※1 38.9 7.6 −55 236 153
・ATF-TYPE FOUR 37.3 7.56 −50.0 212 176
・ATF-TYPE X(ホンダ・三菱専用) 33.0 7.44 −50.0 202 203
ワコーズ
・ATF・CVT・ハイパ−CVT兼用油※2 39.00 7.683 −52.5 202 171
※1.SAE70W/80W;API GL3/GL4に当たります。
※2.代表性状(粘度)だけから兼用できるか出来ないかは判らないことが理解できる。
この場合は静摩擦係数と動摩擦係数を高くすることが中心となります。
なお、ATF・CVT油は長期間交換しない場合が多いため、
合成油や高HVI油を使用すること、せん断安定性が高く、酸化安定性や清浄分散性を優れさせることで
長期耐久性を確保する必要がある。

通常は5万kmまでを目安に交換。CVT油などは3万Kmまでが交換時期とされているようですが、
車検ごと(あるいは2年2万km)の定期交換はATFによるトラブル防止になります。

国産車と外国車のATFの違い

以前から国産車と外国車のATFの性状の違いを指摘されてきていますが、
この規格はデキシロンとはまた異なる規格で
国産車のATFの規格としては「JASO 1A」があり、
国産車のAT特性を引き出す為にJASO(社)自動車技術会が制定しています。

通常のAT機構では、まあ汎用ATFがDVなら使用できるわけなのですが、
デキシロン(DUやDV)はやはり規格がアメリカ車であり、
最新の国産車の制御機構にジャダーや変速ショックを生じることがあります。

例えばTOYOTAで指定しているタイプT-U・T-V・T−Wなどはまあ通常のDVでも代用できるのですが
本当はT-Wが作られたように「スリップ制御ロックアップ付き国産車」にはそれ専用のATFが必要で
長期使用によるATF劣化や、高温になった際の振動やショックなどの違和感解消には
効果が現れているようです。

ワコーズやカストロールもそれぞれ「専用ATFあるいは専用CVT油」を販売していることから
こういった傾向は国産車限定され、使用されてゆくことと思われます。
で、国産車向けタイプのATFをDV指定の外国車に使用することは逆に出来ません。

なお関連記事はATFの添加剤のページにも記載しております。
 


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