ATFのチェックポイントと対応

パワーステアリングオイル(=PSF)は下記になります。

自分の愛車のATFを確認される場合のポイントを記載しています。
多くのATFは赤色に着色されていますので
オイルのいろの基準は「透明度の高い赤」を基準にしています。
(かき氷にかけるイチゴ色の蜜のような色です。)

色とにおいなどからチェック

1.正常な場合は色は多少薄くなっていますが、長期使用のエンジンオイルのような黒褐色にはなりませんので
  その範囲であれば、距離に応じて交換するだけで良いと思います。
  色相は問題なくともオイルの焦げた臭いがあれば、クラッチなどがかなり摩耗していると考えられます。

  推奨される交換距離は整備手帳や取り扱い説明書に記載してありますが
  おおむね20000km以上50000kmぐらいまでを目安とし、
  4−6年間ぐらいを使用期間とされた方が良いと思われます。

2.透明度が無くなり、黒ずんでいる場合は、AT内部の摩耗部品による汚れ、ブッシュやギアー関係の摩耗、
  金属粉が混じっているようでしたら内部は相当摩耗していると考えられます。
  正常に運転が出来るとしても、ATF交換を交換することで
  「滑り」が発生する場合も考えられますので、
  オーバーホールを覚悟の気持ちでATFの交換をしてください。
  摩耗の度合いは、ATのオイルパンを外して確認されれば良いのですが、無理でしたら
  ATFのドレーンボルトを外して、「オイル受け」で確認します。
  (オイルを太陽光に当てて見れば、金属粉の状態が判ります。)

3.乳白色・あるいは少しピンクがかった乳白色のある場合は、明らかに水分が混入しています。
  他から水が入ることがまれなため
  ラジエター内で熱くなったATFを冷却する一般的なオイルクーラーを設けた方式のタイプで発生します。
  この場合は、ラジエター側のクーラントに油が浮いていないか見てください。
  状況に応じて、ラジエター・オイルクーラーの修理・ATホース・クーラントの交換などとなり、
  もちろんATF自体も交換となります。

4.レベルゲージにワニス付着、色も黒褐色で粘度が増大してドロドロ下状態、焼けたような腐敗臭がする場合は、
  末期的な状態と考えられます。
  ATF交換をして良いかの判断は出来ない状況ですので、現在走行が正常ならAT自体の交換を
  頭に入れておいた方が良いかもしれません。新しいATFへ交換されますと
  清浄作用がありますので、配管内壁のスラッジを落としてしまったり、摩擦係数が変わりATが滑るかもしれません。

ATFの劣化とATのトラブルの関係  

関連性がある場合は○
 
症状(下)・ATFの状態(左) 摩擦係数の変化 粘度の変化 汚損 酸化劣化
変速ショックの発生
滑り
加速性の低下
シフトポイントのずれなど
変速・走行不良
低温始動性の劣化

走りに特に異常を感じず、正常な走行が保たれている場合で
色からもにおいからも劣化を見る事が難しい場合は、無理に交換することはありません。

ただ、ATFの劣化は時間と距離によってある程度進んできていますので
走行距離が5万kmを超えたら、あるいはそれ以下の距離でも7年目くらいで
交換されると良いと思われます。

通常は交換後は走りがきびきびとして、ATの動力性能も上がったように感じる事が多く見られます。
またATF自体も年々性能アップしていますので
交換で使用されるATFの性能によって、随分とフィールが変わるものです。
自分の自動車のAT機構とマッチするATFを選択する必要もあり、
オイルによってはフィールが合わないことも起こります。
ですから
そういった知識や経験を持つ人に相談されるのも一つの方法でしょう。
なお、製品が高い値段だからうまくマッチするとも限りません。
このあたりはエンジンオイルと似た傾向があります。


ATFの油量によるトラブル 

入れすぎ・・・回転部分に触れ、泡立ち発生。その結果、油圧系統に空気の混入が起こり、
        作動不良や油温の上昇が起りやすくなる。オイルがフィラーからあふれることもある。
少なすぎ・・・オイルストレーナーからオイルが吸えなくなり、入れすぎの場合と同様に空気が入る。
        オイルが暖まると走行不能になったり、エンジンが止まったりする。
        また、内部の摩耗が進行し、クラッチの滑りが起る。

国産メーカー別のATF油量点検方法

レベルゲージは必ず抜いて、よく拭いてから戻し、油量のチェックを行う
また、水平な場所で行い、駐車ブレーキを使用する。
 
トヨタ 日産 ホンダ 三菱 マツダ スズキ スバル ダイハツ
AT車
点検レンジ
点検前のレンジの作動
(ブレーキは踏んで作動)
P→L→P P→1→P P→L→N P→1→P P→L→P P→Lor2→P
暖機の必要 必要 必要 必要 必要 必要 必要
油温の目安 冷間25度
温間75度
50度−80度 暖機後1−2分以内 約10分走行後 65度で約10分以上走行後 70-80度 60−80度 80度
10−20分走行後
冷間時の
判断基準
COLDゲージ表示範囲 COLDの範囲HOTでも点検する COLDゲージ
表示範囲
温間時の
判断基準
HOTの範囲 HOTの範囲 油量計の範囲 HOTの範囲 F−Lの範囲 HOTの範囲 HOTの範囲 HOTの範囲
備考 S−マチックは
ラジエターファンが2回作動後1−2分間
安全のためPを使用、Nも可
CVT車
AT車と異なる箇所 レンジが
P→Ds→PかN
ラジエターファンが2回作動後1−2分間 点検はPレンジ 20度−40度は
COLD側
60度−80度は
HOT側
AT車との見分け方 メーターパネルに「CVT」「N−CVT」警告灯

セレクトレバーモードがD→L

モードセレクターに「HONDA MULTI MATIC」表示 DSモードあり
POWERモード
あり
シフトレバーにECVT表示、
メーターパネルにスポーツシフト表示
セレクトレバーモードDSあり
備考 ハイパーCVTはCOLD時は切り欠き部で確認。 安全のためPを使用、Nも可

パワーステアリングオイル(=PSF)

ATFと共用で作られてきたPSFですが、パワーステアリング専用油が出てくるようになり、
ATFを入れては不具合を生じるようになってきました。

2004年度の状況では、ATFを兼用可能なメーカーは
三菱、スズキ、スバル、マツダ、イスズ、となっています。
ただし、整備マニュアルかボンネット裏の適応表に専用のPSFが記載されていますので、必ず参照してください。

PSFとATFとの違いは

という事になります。

性状の比較

商品名 

代表性状

POLO 
パワーステアリング
フルード
POLO 
CVT フルード
(トヨタ・ホンダ用)
POLO
マルチタイプATF
(D−IIIH)
比重(API比重度) 約0.876(29.2) 約0.865(31.8) 約0.860(33.2)
粘度指数  172 160 172
引火点 度C 175 185 204.4
燃焼点 度C 198 226.2
粘度CSt
40度C/100度C

cP -40℃Brookfield
cP -18℃Brookfield

39.9/7.5

 18,000
  1,100

35.66/7.23

 18,000
  1,100

流動点 度C −42.2 −42.7 −44.4
Zn(亜鉛) % Wt. 0.0085
カルシウム%Wt. 0.03
P(リン) % Wt. 0.0325
ナチュラル

粘度指数の違いはあまり両者で大きいとは言えませんが
単純に考えてもジャダー防止に必要なATFの摩擦調整剤はPSFには必要がないし
ベースオイルが同じでも添加剤の種類によってオイルの特性が変わりますので、
PSF指定が無くても出来れば専用油が良いと思われます。

パワステポンプ全体


プーリーを外し、ベーンポンプの構造


中心となるベーンポンプの構成部品

目で見て分かるのは多少の傷ぐらいですから、漏れ、異音がない限り通常は
PSFもポンプ自体もまあ交換する事が無いのですが、
構造的にエアコンのコンプレッサーと同じと考えれば
「PSF自体も無交換で良い」と考える人も多いようです。

ただ、油脂類は使用してゆくうちに必ず劣化しますので
特に扁平率の大きなワイドタイヤに変えている車
車庫で据え切りが多い、あるいは使用上曲がり角を良く回る車など
パワステに負担をかける状況が多い場合は
パワステのオイル量を調べるリザーブタンクのオイルだけでも見ていただき
早めにオイルの色・臭いなどチェックされると良いでしょう。

エンジンオイルと同じく、回転する軸のシールがありますので
オイル劣化が漏れの原因ともなります。
下の写真はリザーブタンクの上部フィルターと下部ストレーナー。
汚れと摩耗粉などが付着しています。

リザーブタンクからのPSFの交換方法

6万km走行のノアのリザーブタンク。
リザーブタンクを少しパーツクリーナーで洗浄したが
全部落ちないほど汚れがひどい。

内部をウエスを入れ洗い落とした。
スラッジ等もかなり落ちている。

オイルの銘柄では
高品質のATFかPSFがよいのですが
メーカー指定でも構いません。
こちらでは
ワコーズのATFのハイパーSか
POLOの専用パワーステアリングフルード
を使用する場合が多いです。
通常のATFでの場合は添加剤などで
信頼出来る製品の添加も良いでしょう。
使用して異音が出たり問題がある添加剤製品もありましたので
腐食性のある極圧剤は避けた方が無難です。
当方では新車のクレームの対応をしてくれないユーザーさんのパワステの鳴き(うなり音)に
NEW-GRPの5%添加だけで直りましたのでこの添加剤は重宝しています。

交換方法は

冬は多少運転した後や暖機後の方が良いのですが、
まずエンジンを切り、ボンネットか座席下のパワステのリザーブタンクを探します。
(分からなかったら、誰かに聞いてください)
次にそのキャップを開け、フィルターが付いていたら
それも外します。
それから汚れた液を(当方の20ml用スポイトなど)大きめのスポイトを
入れて底まで抜きます。廃油はちゃんと後で処理出来るようにしておくことが肝腎です。
で、リザーブタンクの底まで抜いたら、抜いた分ほどのATFかPSFを注ぎ
エンジンを掛けステアリングを切って、オイルを循環させます。

多少面倒ですが
この作業を3回程度繰り返し、大体見た目で綺麗になったら、
抜いた後、NEWーGRPやPLUTOを50ml先に加えます。
添加剤などが無ければ、
そのまま通常の規定量になるまでATFかPSFを注ぎ
フィルターをはめ、キャップを閉めて完了です。

エアーの混入は、規定量を入れてエンジンを掛け、
ステアリングをどちらかに「いっぱいに切って少しもどす」を繰り返しますと
早く抜けます。

工事中
<資料:POLO((株)タスコ)サービスマニュアル、ワコーズ技術資料>

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