更新2015_04_25

オーバーヒートの原因と対処

エンジンオイルにとっても大敵なエンジンの高温化を考えてみました。
エンジンはガソリンを燃やしていますので、熱が出ます。
どこかで効率よく 冷却する必要があります。その中心になるのが
 
 
  • 1.ガソリン−ピストン内で気化熱を利用して冷やす。
  • 2.冷却水(LLC=ロングライフクーラント)+空気(ファンによる冷却水の冷却)
  • 3.エンジンオイル

  • になります。 どこでそれをしているのか、2.3.を表にしました。

    1.ガソリン

    ガソリンは燃えやすいのですが、液体です。液体のままでは、燃えることが出来ないので、 ピストンの中の高熱によって気体になりますが、その時に”気化熱”を奪い ピストンの温度を下げます。(注射するときのアルコール消毒は、ヒヤッとします。同じ原理。)

     ガソリンは燃焼ガスに直接触れるバルブとピストン上部をまず冷却しています。 逆に考えればシリンダー内部の温度を下げますので、燃焼効率としては 悪くなりますが、バルブやピストン面にとっては異常加熱を防ぐためいい結果となります。 普通理論空燃費より多くガソリンは供給されていますが、そのようなリスクマージン というわけです。

    2.冷却水

     エンジンには多くの穴が冷却水用に開けられています。エンジンを水でひやすためです。 けれども、沸騰してしまわないように、”ウオーターポンプ”で水を強制的に循環 させています。
    ウオーターポンプ自体はエンジンの力を借りてベルト駆動でその羽根を回して、冷却水を循環させています。
    錆によって羽根が腐蝕してなくなってしまう場合も有りますから、ラジエターの防錆剤は大切な役割があります。
    (腐蝕したウオーターポンプと新品のウオーターポンプの比較図拡大図))

    ベルトによってポンプは回るわけですから、ベルトが切れたりしますと、エンジンの熱は放熱出来ず、
    クーラントを沸騰させオーバーヒートする事になります。
    普通はいわゆる”ファンベルト”と言われるベルトですが、
    車種によっては”タイミングベルト”がこの役割を受け持っていることがあります。
    ですから、ファンベルトなどもここでは重要な役割があり、長距離走行される際はよく点検しておきましょう。
    ファンベルトが切れた場合、普通はダイナモ(オルタネータ)の駆動も兼ねていますので、チャージランプがメーターパネルで
    点灯します。チャージランプは普通「バッテリーのマーク」で描かれています。
    ダイナモ(オルタネータ)などの故障だけと判断せず、ベルトの確認もお忘れなく。
    そして高温になった冷却水をラジエターで効率よく冷やし、またエンジンへ戻しています。
    ウオーターポンプの不良の見分け方は、直接触ってガタが出ているか、ファンベルトよりすこし高音のキーンという音で 判断するか、タイミングベルトを交換する距離になって一緒に調べるかです。現在の 車は10万km位は大丈夫のようです。
    また、冷却水の管理が悪すぎると(LLCの交換をあまりにも怠ると)冷却水を循環させているウオーターポンプ自体を 錆びさせ、
    ひどい場合はその羽根が錆びて、ぼろぼろになって羽根の役割をせず、冷却水を 循環させられなくなってしまいます。
    また羽根が軸からはずれてしまうこともあります。
    こういった場合にもオーバーヒートのような症状が現れますが、こういった場合はなかなか 発見が遅れてしまい、
    かなり大がかりな修理になり、経済的ダメージも多くなることがあります。

     また、冷却系には”サーモスタット”が付いていて、エンジンが冷 えすぎないよう一定の温度に保ったり、
    す早くヒーターが効くように(実際はエンジンの保温なのだが)ラジエターへの温水をカットし、
    エンジン部の温水をまずヒーターへ流すようにするなど 水の流れを制御しています。
     

    サー モスタットについての資料集(jpg) 原理は至って簡単で、普通の車では水温が82度C(車種により温度は設定されています) になるとコイル状に巻かれたバネを縮ませふたを 広げるようにしています。ふたが広がるのでラジエターへ熱水が流れ、ラジエター部の冷水が入ってくるわけです。
    これは意外に故障しやすく、かなりオーバーヒートする原因になっています。
    最近はオーバーヒートの原因となるような閉じた状態(ラジエターへクーラントが流れず冷却しなくなるような固着)は少なくなってきていますが
    それでも、中途半端な開き方で固着している場合が多く、作動しないことによって、
    冬期は過冷却が起こり、下記は冷却不足が起こっています。
    この状態で、ラジエターの目詰まりやウオーターポンプのインペラー腐蝕による循環不良などと重なり合いますと
    やはり、オーバーヒートになってしまいます。

    水温によってサーモスタットの開閉を変えている理由の一つは、寒冷地仕様かどうかでもわかります。
    寒冷地では一般的に高温で(一般が82度とすると88度の場合が多い)作動するものが多くなり、
    作動が早いと、ヒーターからの送風の温度が低くなり、ヒーターの効き具合に影響しています。
    作動温度は78度・82度・88度あたりのものが多く見受けられます。
    開閉温度の違いはラジエターからエンジンへ冷却水が流れるその設置位置によることが大きな理由になります。
    エンジンを通ってきた暖まった冷却水がラジエターへ向かう位置にある場合は、82度C以上に設定されることが
    ほとんどになり、ラジエターで冷却された冷却水がエンジンへ向かう入り口に設置されている場合は、
    76度−82度あたりに温度設定されているようです。
    よく、冬などに長い間走行するとヒーターの効きが悪いというユーザーの方がおられますが、
    大抵の場合、サーモスタットのゴム部の劣化による密閉不良か、完全に密閉できない状態に
    なっていることが多く、ラジエターで冷却されたクーラントが暖まりきらずヒーター側へ送られる事によります。
    外観は正常に見えても、経年劣化でバネ圧が低下して、正常に開く温度よりも 低い温度で開いてしまい、過冷却になるケースも見られます。冬になると水温計が上がらないとか 走行するとすぐ下がるタイプなどにも多く見られます。
    大きく開いている場合はまずオーバーヒートに関係しませんので、故障したまま乗られていることも多いわけですが、
    過冷却はオイルのためにも良いと言えませんし、
    温度センサーを使用しているATの場合、高速でいきなりシフトダウンするという現象も、
    サーモスタットの故障によることがあります。


    理由は錆が発生して動きが鈍くなったり固着してしまい、開いたままか(過冷却)、
    あるいは閉じたままになってしまい、ラジエターへの流れを止め(エンジンの熱を冷やせずに沸騰=オーバーヒート) てしまいます。
    内部のワックスがだめになっても膨張できないので作動しません。

    上図:ワックス部をヒーターで熱しますと通常は右の大きなサーモスタットのように開くのですが
    左はオーバーヒートで入庫した車のサーモスタットで、同じようにしても写真のように開きませんでした。
    症状から見ますと、
    サーモスタットが開かないタイプのオーバーヒートの仕方は
    クーラントが沸騰してラジエターキャップの蓋の圧力より高くなり
    リザーブタンクへ冷却水を吹き返すタイプとなります。
    このため、リザーブタンクは吹き返しの痕跡が顕著に見られます。

    検証する場合は、冷却水が満タンであることを確認し、
    エンジンをかけ、車内のヒーターを全開にしてブロアーファンも最大にすると
    アイドリング状態なら通常より多少水温が高い程度で
    冬期はこの状態に近い運転ですから、気がつかず、
    この故障を見過ごす場合があります。

    ヒーターを全閉してファンも回さないと吹き返しますので
    春になって修理依頼になるケースが多くありますが
    サーモスタットは改良されてきましたので、こういった故障はかなり少なくなりました。

    最近の自動車の燃料制御装置は水温をデータとして取ることも多いので、
    サーモスタットの不完全な作動や開閉部のゴムの亀裂・破損もエンジンの不調の原因であることが 多くあります。
    また、密閉する為のスプリング自体も経年劣化して、開きやすくなりますので、
    正確な温度で開閉させるためにもある程度の経過で交換された方が無難と思います。
    5年ぐらい(サーモスタットのメーカーの指示は1年or2万キロでした) を目安に交換しておいた方がまず無難と言えそうです。

    下記の図のようにオーバーヒートなどニードルが異常に持ち上がりますと、ニードルが引っかかり、
    ふたが戻らなくなる機構がついているのですが、今までほとんどそういった機構が働いていた事を確認することはありませんでした。
    (既にそのようになっていたら、OHの必要性が高いと言えそうです。)
    ですから、今のところ定期的な交換による次善策の方が(=予防整備が)安心と言えそうです。

      エンジン内部の温度は、燃費にも加速性能にも深く関わります。
    例えば、時期だからと言ってサーモスタットと冷却水を交換しただけで、
    今までよりエンジンの調子が良くなったと言う報告は多くよせられています。水温制御系が関係したのかもしれません。
    エンジンはある一定の温度になって初めて最大の効果(出力、燃費、排気ガスのクリーン化)が 出せるように設定されています。
    その温度からずれるということは、何らか良くない結果を生み出す原因になる事は 多く考えられます。
    燃焼室が高温にシフトすれば、ノッキングが起こり易くなったりしますし、 逆に低すぎればデポジットが付きやすくなり失火などの原因にもなります。
    冷却水の管理が悪いと早く錆びますし、冷却能力も落ちます。
    それは(クーラント)は不凍液としてエチレングリコールと錆びないように防錆剤がはいっているからです。
    現在の冷却水は1年中使えるように、ロングライフクーラント=LLCと呼ばれ 通常30〜40%の濃度になっています。
    (この濃度は非常に大切です。薄すぎると錆を早くしますし、濃すぎるとヒート気味にシフトすると言われてます。)
    このLLCはやはり劣化します。出来るなら2〜3年ごとに交換をお勧めします。

    なお、ほとんどのメーカーはラジエターの腐食による水漏れのクレームは初めての車検(=3年 目)時に
    クーラントを交換するという形で保証しています。
    クーラントが色で判断して良い状態としても、交換していないと、クレーム対象にならないので、
    保証を受ける場合は必ず3年経ったら「純正クーラント」の交換をした方がいいと思われます。
    成 分についてなどはこちらでどうぞ!
    冷 却水によるトラブルはこちらでどうぞ!
    冷却水によるオーバーヒートの原因 原因、対策、処置
    冷却水の漏れ 漏れを止めるしかありません。漏れている箇所はラジエターに圧力をかけ(+0.9kg/cm2) 調べます。(1.注)
    冷却水の詰まり サーモスタットの固着、ラジエターコアの目詰まり(水垢、冷却水に溶けた金属の結晶化など、人にたとえれば尿道結石みた いなもの)
    冷却(空冷)出来ない カップリングファンの不良、ファンリレー不良、ファンモーター不良、ラジエター部水温センサー不良、テスターで調べるか 交換する
    冷却(循環)出来ない ウオーターポンプ不良=ガタや異音以外はタイミングベルト交換時などに思い切って交換・点検

    1.注・・リザーブタンク付きの場合(エンジンが冷えている時に調べる方法)・・・
     
     
    症状 クーラントの状態 原因
    リザーブタンクの水が減る ラジエターの水は減ってない  1.自然蒸発(水が半年間でタンクのHIGHからLOWの間にある)=正常
    2.ラジエターキャップの不良(+0.9kg/cm2より少ない)によりラジエター部で膨張した熱湯 がリザーブタンクに流れ込み蒸発しやすくなる
    3.どこかが少し漏れている
    リザーブタンクの水が増えている ラジエターの水は減ってない  普通こんな事は有りません
    リザーブタンクの水が増えている ラジエターの水は減っている 2.ラジエター部の膨張した熱湯が冷えるとラジエター内の気圧が下がるがラジエターキャップに気密漏れがあると外気を 吸ってしまいリザーブタンクへ流れた水を戻せなくなる。ラジエターの水は少なくなり続けヒートし易くなる。
    3.程度の軽い漏れ
    リザーブタンクの水はあまり変化してない。 ラジエターの水は減っている  2.ラジエターキャップの不良でリザーブより水が吸い込まれない。
    3.程度の軽い漏れ,漏れた箇所から外気を吸い、リザーブタンクの水が吸い込めない。


    またヒーターコアからの軽微な漏れによっても、ラジエターからの漏れ同様オーバーヒートはします。
    下記写真は軽自動車のヒーターコアです。
    エンジン始動時から油温が上がるまでの冷却水内部の圧力で僅かな漏れが起きていたのですが
    コア部にLLCを入れてもほとんど漏れが分からないような小さなピンホールの為
    ユーザーはずっと分からずに冷却水が減りやすいエンジンだという感覚のみで済ませておりました。
    このため、冬は窓ガラスが異常に曇るという症状が現れたのですが、
    夏の間の冷却水漏れの発見が遅れ、オーバーヒート気味で走行しておりましたが
    別件の整備を依頼するまで発見出来ませんでした。

    ラジエターの液が減りやすいので水道水を補充していたそうですが
    防錆効果が薄くなって、冷却水によって錆の発生がひどくなってしまいました。
    僅かしか漏れないため
    漏れの再現が難しく、エンジンをかけたまましばらく待たないと漏れが発見できなかったのです。
    今回は別の整備で30分以上エンジンをかけたまま放置しておりましたので
    車外へ錆びた茶色い冷却水が落ちて、
    それ探って行く内にヒーターコア辺りの漏れがある事が分かりました。
    また、その箇所の特定のため、部品を外しながらホースや継ぎ手やヒターコアを調べて行き
    コア自体からだと判断したわけです。
    ただ、クーラントを入れて放置してもほとんど漏れが分からないので困りました。

    こういう内部圧力が必要なパーツの漏れの確認には
    「パーツクリーナー」など揮発性のある液体を取り外したコアにある程度充填し、
    液体の入り口と出口を密閉するため指で塞ぎますと、
    寒い日でも体温や外気温で、内部の揮発性の高い液体は蒸発し、
    内部の圧力が上がりますから、
    コア周囲を良く観察しますとその液体が出てくるので分かります。
    これでやっと原因を特定出来る事になり、コアを注文し交換して修理完了になりました。

    このコアの高さは20cmほど。

    **ラジエターキャップの良否の見分け方

    正確に圧力を調べるには、ラジエターキャップテスターという圧力計を
    使うのですが、簡単にまあ大体というところでは

    エンジンが冷えている時にラジエターキャップをゆっくり回してラジエターの水が
    吹き出すぐらいあふれ出たらOK!ということにしましょう。
    ただしリザーブタンク付きタイプでタンクに冷却水がしっかり入っていること。
    新車からふつう3年目で50%、5年目で85%ぐらいは失格です。
    (キャップメーカーは1年で交換と書いています)

    新品での状態を知っておくことも大切ですので、古そうで心配な方は交換した方が
    いいでしょうね。

    **低年式車の水まわりの注意点

    サーモスタットの交換やクーラント交換やラジエターキャップの交換をすると、 まれに、限界に来ていたラジエターやホース部に負担がかかることになり、水漏れが起こることがあります。
    全部変えるわけにはいきませんので、それらの部品を交換したときに一応各部を確認しておきましょう。
    メーカーは耐久年数を高めに設定していますが、経年劣化は避けられませんので、 オーバーヒートになる前にユーザー自信の管理が大切です。
    ですから、走行中にも時々水温計にも目をやって、早めの対応が出来るように心がけると 余計な出費を避けられます。
    3.エンジンオイル
    オイルにはカムやシリンダーなど、直接冷却水では冷やせない場所を冷却する役割もあります。
    ただ地球に重力があるためそのままではオイルパンにたまっているだけなので、オイルポンプで エンジンの上部へ汲み上げ、
    循環させながら冷却するようにしています。
    オイル自身の冷却では不足なので、熱はラインを流れるクーラントへ渡され、最終的にはラジエターで、 ファンにより空冷されます。

     オイルが少ないと油温が上がり、オイルの劣化を早め、スラッジと成り易くオイルが隅々まで行き渡らなくなり
    エンジン各部の寿命を短くします。

     また、オイルラインにスラッジやオイルの流れを悪くするゴミが付着すると、エンジン内の冷却がうまくできなくなり、
    オイルの温度が上がることになります。油温が上がることはオイルの劣化のみならず、オイル膜を破壊することにもつながり、
    エンジン各部の摩耗の原因ともなり、異常燃焼にもつながります。

     さらに、オイルポンプで汲み上げられない程少ない場合は、エンジンに重大な トラブルが発生します。
    オイルのレベルは取扱説明書を見て、時々チェックしましょう。
    オイルの入れ過ぎも、良くありません。必ず、規定量を守って入れましょう。 オイルが1リッター以上多すぎた場合、
    燃焼室に入り込み燃料と一緒に燃える(白煙などが出る)事が あります。オイルが規定値より多い上限は0.5リッターぐらいです。

     参考までに、”オイルの量が減ったら、メーターパネルの油圧警告灯(魔法のランプみたいに描かれているヤツ) が赤くつくから”と言う人がいますが、あれはあくまでもオイルの圧力の異常を警告しているだけです。
    オイルの量には関係有りません。
     ※最近の油圧センサーはオイルの圧力が高くなっても(=オイルの入れすぎ、粘度が高すぎる場合も)点灯するタイプがあるので注意

    これが点灯した時にはすでに時遅しと言うこともあります。
    オイルはちゃんと入っているのに点灯する場合は、オイルポンプの故障か、
    これのスイッチである オイルプレッシャースイッチの漏れか故障を確認して下さい。


    なお参考までに ディップスティック(オイルゲージ)のLOWレベルは、
    急なカーブや急勾配によるオイル面の傾きがあってもこのオイルパンでのオイルの傾きなどによる
    エアーの吸い込みを防ぐレベルとして規定位置を示しているようです。
    仕切りの板が設けられて更に空気の吸い込みに配慮されたオイルパンも多くなってきました。
    (反対のHIGHレベルはオイルの干渉による油温上昇を防ぐための位置関係になります。)


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