肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ90

オイルや添加剤の品質ばらつきについて

同じ銘柄のオイルや添加剤でも
製造の過程で品質のばらつきがでることが多くあります。

この事自体はどんな製品にでも見られる一般的な現象であることは認知されていますので
このばらつきを減らす目的で
各製品でそれぞれの基準値が設定され、基準値以下の不良品が出回らないよう
品質管理が行われているわけです。

ですが・・・・一部の製品ではそれも行われていない、あるいは故意に基準値を下げたり
不良品でも流通させてしまう事があるので
しばしば社会的な問題になる事も起こっています。

オイルや添加剤などで起こっているこういった問題点を考えてみたいと思うわけですが
どういった事柄が問題となるか考えてみたいと思います。

1、基準値の設定に関する事柄

環境問題からの要請で、使用できる燃料に含まれる成分や、
添加できる製品(添加剤成分)などが規制の対象になってしまう事があります。
このことを受けて、代替え用になる燃料成分や添加剤の性能が従来品に追いついていないのに、
変更を余儀なくさせられてしまい流通する場合。
たとえば、含有硫黄分など燃料の品質、オクタン価やアンチノック成分など。

ここで起こる燃料側での問題点は品質の低下など様々ですが
コスト削減のための精製度の低下、オクタン価やセタン価の低下、規制対象となっている添加剤の添加や
軽油でも社会問題となったような代替えの成分を混入させたり、規制対象となっている成分を含む
製品を使用・生産規制がない海外から輸入し、合法的に販売するなどいろいろあります。

オイルなどでも、添加剤として規制品目となっている製品が添加された商品を輸入して、
販売されるケースがありますが、これらは「規制猶予期間」が定められている場合が多く
ちょうどフロンガス規制に似た様相となります。
問題点は規制が実施されても法的に守られないことかもしれません。

新開発や新機構を伴うエンジンの搭載によって、オイルや燃料への要求値が上がっているのを
エンジン単体でのラボデータでは見抜けず、
不具合が発生してしまってからオイルの規格を高めたと言うケースもありますので
メーカーの指示に従っていれば良いというわけにも行かない事があります。
(特にAPI-SJあたりの時期になるようです)
また、新規格のオイル粘度は適合するエンジンが定まっていますので
新しいからすべて良いと言うわけでも無いことも判ります。

また、環境配慮に依るオイル規格の変更によって、
今まで使用してきた添加剤成分が使用出来ず、環境には優しいが
オイル自体としてトータル的な品質が下がる事も起こる場合があり
(R−12フロンガスとコンプレッサーの関係に似ている現象、次の134aは潤滑性能が悪く、よく壊れた)、
新規格といえども、十分な性能が確保されたと言い難い場合が起こりえますので
この点は注意も必要です。

2、製造工程で発生する問題
オイルは主成分となるベースオイルで基本的な品質が決まります。
いわゆるAPIなどで決められている規格(SL、SI 、SMなど)は製品としての規格ですから
ベースオイルが悪い品質であっても、良質な添加剤などを加えることで
そのグレードを上げることが可能となります。
そこで、同じ粘度帯で同じ規格を通ったオイルであっても
違った価格となり、全く異なる特性が出てしまうわけです。
ただし、市販品でしたら記載されている基準値以下で作られて販売されることは無いと思われます。
比較されて上下を感じられるとすれば、上質と感じるオイルが
規格基準値を大きく上回っているということになります。

ベースオイルも粘度が違う種類のシングルグレードオイルをブレンドしたりしますし
(APIでSKというグレードがない理由の一つととなった
ベースオイル製造メーカーの「SK社」のHP、ブレンド用オイルの粘度帯はこちら
通常同じVHVIを混ぜたりしますが、必要に応じて
違う銘柄のオイルを、例えば鉱物油やVHVI(水素化合成油)PAO、エステルなどを混ぜたりしますから
それらの調合割合でもオイルの品質が大きく変わります。
ただし、当たり前ですが低品質のベースオイルに高品質のベースオイルを添加することはあっても
その逆はしません。PAOにシールの収縮性が懸念されるという場合もエステルを加えることで
解消するようにしています。
この場合、ベースオイルでありながらエステルは添加剤的な役割を持つことになります。

最低でも10種類以上の様々な種類の添加剤がうまく処方されて
多少低いと思われるようなベースオイルであっても良い製品となるわけですから、
添加剤の量や入れる手順が大切になります。
入れる順番などを間違えてしまったり、入れる量が違っていたり、うまく撹拌出来なかったり、
細かく言えば添加するタイミングなども失敗しますと
出来る製品の品質が大きく異なってしまいます。
ポリマー系添加剤の添加で不具合がありますと、オイルの底にゲル(ゼリー状)の層が出来てしまい
使用上でも粘度特性に変化が出てしまうことが起こります。
特にボトリング後に発生しますが、
添加剤の組み合わせや添加に関しての技術的な問題であることが多いので、
生産側では特に気をつけて頂きたい事柄です。
逆に異なる添加剤の処方で設計者が意図していた以上の高品質な製品が出来る事もありますが
(同じくらいの生産コストという意味で)
いわゆる”さじ加減”という偶然的な要素によって変わりうるということは
こういった分野でもよく起きているようです。
同じ工業製品でも初期製品の不良が多いのは
データが無いせいなのですが、これはオイルという製品を造っていく場合も同じです。
新製品の場合は2番手あたりからデータも揃い、更に良い商品に
変わるそうです。
また、同一製品ばかり生産しているわけではありませんので
異なる成分で作られている前の製品の成分が今回作るオイルに混ざってしまい
性能が発揮できないことも起こります。
ひどい場合は、基準値以下になることも起こりえます。

オイルの製造工程での僅かな違いは、通常判らない程度のものでしょうが
いつも使用しているユーザーが、同じ銘柄を使用した際に感じる違和感でフィールとして
感じられる事があります。
でも、実際に何が起こっているかは残念ながら知るよしもありません。

3、流通や販売の課程で生じる問題
製品として基準を通過している製品の品質保証期間が判らない事で
品質のバラツキが起こる事があります。
古い製品で多くの発見例での場合を見てみますと
長期在庫製品は保証期間がわからないために
(もちろん、故意ではなく気がつかない場合もありますが)
開封して使う段になって
製品自体に明らかにおかしな変質状態(=ゲル化、沈殿物発生など)がありませんと
品質が低下していても「そんなものだろう」で終わってしまうわけです。

特に添加剤の場合で特定の箇所への「修復効果」を主にしている商品の場合
例えば「シール洩れ止め剤」の場合などでは、
洩れているシールの素材に対応して反応する成分が入れられるわけですから
成分の効き目が違えば、あるいは劣化で効果が弱くなれば添加する意味がないわけです。

古いエンジンのシールに効くが、新しいシールに効かないとか、
その逆で新しい添加剤設計なので古いシールには効かないなど
販売者がその製品についての知識を持っていませんと
無意味ならともかく、シールに有害な製品を売ってしまうことにもなりかねませんので
困った問題となります。

また漏れ止め剤に加えて潤滑剤を添加することは
処方箋的には
風邪薬を栄養ドリンクで飲むのに似ています。

両方とも良質な製品で、かつ、同じ添加剤の成分が極端に重複していないなどの場合など
通常は相乗効果が得られることが多いと思われます。
ただ、逆効果もありまして
良かれと思って入れた潤滑剤の方に問題がある場合があります。
その潤滑剤成分に
漏れ止めに有害となる酸化腐食性の強い成分に変わる傾向が出る場合は
逆に漏れはひどくなる事も起こります。
「漏れ止め剤が」効かなかったのではなく、
そう言う事が裏で起こっていた事実もあるようなのです。

純正品で消耗部品などを交換する場合などでも、
例えば0リングやゴム製のブッシュやゴムホース系などは大抵の場合、材質を記載していません。
途中で材質を変えている場合もあります。
ですから、使われるオイルや添加剤が適当かどうか判断は大変難しいと思われます。

オイルなどと異なるチューンで代替え部品を使う場合などは
使う目的もあり、
普通は改良・強化タイプなどになりますので値段も高くなりますし、
その理由として上質な材料が使われているとして解説されている事はあります。
(実際には記載が無くても使っているでしょう。)
ただ、使う目的とは相反する影響も出る場合がありそれを十分承知の上で購入しないと
せっかく購入した製品が無駄になってしまいます。

排気マフラーなどの場合、抜けを良くすれば高回転は良いのですが、音量も大きくなりやすく
逆に低回転でのトルクは減る傾向が出ます。
販売する側も良い点だけではなく、
悪いと思われる影響もあれば、記載して欲しいのですが、
やはり、残念ながらほとんど隠してしまっています。

そう言った社外品が無い場合でも、
改良純正品が販売されておりますから、通常の交換に際して滅多に困ることはありません。
以前は「対策」も無いことが多かったので困りましたが
あまりにも不具合があれば、メーカーもしばしば対策を立て、特に保証期間内であれば
かなり改善されています。

基準の問題としてオイル側の問題ではAPI-SJ時期の品質の基準の低さがありましたが
メーカーの交換時期表示とディーラーの交換時期指導の差とが
大きく分かれて、違和感も感じました。
確か、某ディーラーでは純正のメーカーオイルを薦めていなかった時期もあったように思えます。
ともあれ、オイル品質が悪かったのか、製品の側の問題だったのか
両者ともかなり改善されて、オイルも規格が厳しくなり、製品も代替え改良パーツも出ていたように思えます。

オイルやフルードの粘度や代表性状などを表示しないことでは、
そのまま指定の純正品を使う場合は問題は起きませんし、
起きた場合は上記のような「運が悪い」という結果となります。
オイルメーカーや添加剤メーカー・パーツメーカーも
通常の製品はぎりぎりの予算で製品を作っていますので
それほど高品質な製品は作れません。
(ただし、粗悪ですとクレームで会社は成り立ちません)
ですから、アフターマーケットを考えた製品としてもディーラーで添加剤を売るようになってきているのですが
こういった部品を上質のタイプにするとか、添加剤を加えるといったときには、
オイルの成分や粘度が重要になってきます。
工業製品では大抵こういったエンジン油や作動油に関して
指定の粘度(VG)や材質指定、
例えば、ガレージジャッキなどの修理書はに「ブレーキフルードは使用しないでください」とか
「指定油の粘度はVG○○です」などという内容が書いてあるのですが、
驚いた事に自動車では「メーカー純正」だけを指定していてあり、
お客様相談窓口に尋ねても
「粘度も(鉱物系成分かグリコール系成分かの程度)さえも全く公開出来ません」
とだけ言われた場合がありました。
オイルメーカーの研究室に、比較試験結果があれば成分も粘度も分かり、
どういった添加剤を加えても問題は起きないか、あるいは効果が良くなるか判るのですが
何故、公開することで不具合があるのか、ちょっと疑問に思ったこともありました。
(結局仕方無く、オイルメーカーの方に教えて頂いたのですが、
これくらいの内容を非公開とするのを不思議がっていました。)
確かに、メーカー純正オイルを使用しないで故障した場合など
あるいは添加剤を入れた場合などは保証外としているケースも多い訳なのですが、
当方では全く逆のケース(=純正油での不具合が改善された)がほとんどなので、
何となくすっきりとしません。
(ディーラーでも添加剤等を売っているのですが、あれはもちろん保証をするのでしょう=製造メーカーに保証させる)
一方、JIS規格なども番号などから
OEM製品であっても純正製品であっても同じ製品である事が
「その番号」から分かってしまうようになってきましたので、
JIS規格の番号を入れなくなっていく傾向が出てくるかもしれません。


4、使用上で起きる問題点
 

添加剤もオイルも
条件が悪い状況で使用したりしますと添加剤やオイルの品質劣化が非常に早く訪れたりします。
また使い方によっては各パーツに不具合が生じやすくなる事を
知らずに行ってしまう事もあります。
オイルではいわゆる「シビアーコンディション」と言われる条件ですと
使用期間は走行距離で半減してしまい
たとえば通常の良い条件で10000km持つオイルでも
5000kmしか持たない=使用上不具合が出る事が知られてくるようになりました。
あやまった使い方の例では
ブレーキフルードのDOT5.1などのように
短期間の使用なら本来の高沸点の特性が出せるのですが
こういったレースが終わったら抜き替える必要がある製品をそのままずっと使うと
ブレーキに支障が出るようになります。
レース用によく使われるDOT5.1は吸湿性が高く、フルード内部に水分を含みやすいため
ブレーキ関係で使用される金属のパーツの腐食性やフルード自体の沸点の低下などを起こすので
様々の不具合を引き起こす元になります。
ですから、取り扱い説明書などにはそういった長期使用が出来ない旨を記載しています。
また、オイルなどでも、レース用途の製品は
1回あるいは短期間の使用がほとんどですから
そのために必要のない成分をできるだけ抜いて、設計しています。
特に清浄分散性が低く調合されていますので
塩基価は低い数値になっており、ホットチューブテストなどの評価も
そこだけ取り出しますと低品質オイル並である事が多く、
普通に一般使用しますとワニス・スラッジなどが低品質オイル並に発生する可能性も
否めません。
つまりレーシングスペックで作られたオイルは
基本的には市販の最低オイルの清浄分散剤性能と見た方が良いでしょう。
なお、「一般使用」を表記したレーシングスペックオイルの場合は
清浄分散性は普通にあり、
「ロングライフ用」を規格番号と共に表記した一般オイルは
かなり清浄分散性は高く「シビアーコンディション」でも
良好な清浄分散性を持っています。
ただし、これは長期耐久性の観点に絞った評価で
摩耗性、高温特性、剪断安定性などとは異なってきます。
ですから、「ロングライフ=だから良い」とは限りません。
オイル添加剤も同じように
最初に低温で表面処理を強くおこす製品ですと
使用していくうちにオイル側の添加剤の成分までもその作用によって消費してしまう事もあり
酸化しやすいせいでオイル中の添加剤が通常より早く消費されてしまい、
オイル寿命が短くなったり、
長期使用によって金属腐食が進行しすぎたり
かなり良くない結果も出てきます。
ポリマーなどの添加剤は
剪断安定性が重要で、安定性がきわめて悪い場合は
いわば「添加剤のゴミ」を大量に生産しますので逆にエンジンにトラブルをもたらす事があります。
通常、こういう困った添加剤メーカーは都合の悪い事は言わないものですから
ユーザーのオイル管理に責任をなすりつける事がしばしばです。
また、
フラッシングなどをしたため逆に配管閉塞したケースが良い例かもしれません。
オイル管理が悪く、あるいはシビアコンディションばかりでスラッジをためたユーザーの責任か、
それを落としたフラッシング剤や清浄分散効果の高いオイルの責任か
時々問題になっています。
また、開発当初は問題が無いと思われた製品が
後日「使用禁止」となるような問題点をはらんでいることもあります。
性能と言うより環境問題に関連してなのですが
最近では燃料のMTBE、エアコンの冷媒の134aなどがあります。
オイルの添加剤も規格基準からリンやイオウ成分が削減される傾向があります。
ですから今は良くても禁止された時の対応が大切になります。
昔の話ですが、有鉛ガソリン対応のエンジンでは
当初それに代わる良い成分が無く、大変だったと聞いています。
現在のアンチノック対策にも有機金属が禁止あるいは禁止される傾向があるのも似ています。
 
 


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