オイル中の添加剤濃度

オイル中での添加剤の成分は、そのベースオイルに溶融しやすいものを使用しておりますので、ほぼ一様に分散していまして、
一部のオイルを取って成分分析しましても、その添加量はほとんど変化のないものとして扱われています。
けれども、摺動部においては、特に圧力がかかる弾性流体潤滑域(=EHL、転がり軸受け、歯車、カムなどの潤滑)においては
ベースオイルと元から含まれるオイル添加剤の成分の割合が変化していると言うことが言われていました。
そういう潤滑でのオイル膜の厚さは数ミクロン以下になることが多く、金属に挟まれた接触域(あるいは入り口)では油膜が
高圧を受けることで、粘度−圧力係数に従い、
流体→粘弾性体→弾塑性固体と言うように、普通考えられているようなオイルの性状ではなくなっていますので、
そこに含まれるオイル添加剤成分もその濃度が減ることが一般的な現象として現れてきます。

オイル中の炭化水素分子や添加剤の分子、あるいはポリマーとしての高分子は3次元的な立体構造を持っていますので
分子自体は応力に対してどのように振る舞うか興味のある事柄と言えます。
具体的には油膜の厚さは圧力に対して変化するわけですが、
カムの摺動のように、厚いところからヘルツ接触域の中央部(油膜が摺動面に挟まる真ん中)になると、
急に油膜が薄くなります。
各添加剤成分はどのようなベースオイルを選ぶかによって、その成分濃度w%が様々に変わるのかと言うことが
調べられるようになってきたと言うことは、
どういったオイルにどのような添加剤を選べばいいのか、またその濃度はどれぐらい必要なのか
と言うことにもなりますので、大変興味あることがらです。
添加剤の効果については、実験値から、何%いれたらその効果が最も現れやすいかが調べられているのでしょうが、
複数の添加剤で混成されたオイルのどの成分がどういった割合で入り、
その結果、摺動部はどうなるかと言った事にも興味が湧きます。
(工事中)

基油とのなじみ易さ

合成油が一般的に使用されるようになり、技術的障害としての「添加剤の溶解性」が問題とされ始めてから数年以上経ちます。
基本的には、溶媒分子(基油)と溶質分子(添加剤)に同じ分子構造持っていれば、
溶解性が向上します。
そのため、特に合成油では使用したい有効な分子構造に、基油の分子構造に類似する部分構造をくっつけるとか、
熱安定性・耐揮発性を高めるため、分解しにくい構造を持つ部分を取ってしまったり、分子量を大きくする、
あるいは、他の添加剤を加えて安定化させるなど、様々な方法がとられています。
このあたりのノウハウがあるためと、合成油は添加剤を溶解する濃度に上限がある場合も少なくなく、
「合成油に添加剤?」という事が疑問視される理由があるわけです。
そのためか、各添加剤は合成油基準の新規添加剤を開発しているわけです。

ただ、エンジンオイルに使用するタイプとしては浮遊する固体潤滑剤でも有効視されているわけですから
短期間の使用では問題が発生することも少ない場合が起こりうるわけです。
後で添加するタイプの添加剤の場合、こういった市販オイルとのなじみ性を十分テストしていない製品には
注意が必要と思われます。
特に鉱物油系の添加剤として商品化されている場合、合成油に添加したりしない方が良いと思われることが
起こるわけです。
同一メーカーで、新しい添加剤がある場合などは、こういった点が考えられていると思われますので
同じメーカーでも添加剤は出来るだけ新しいタイプを選ぶ方が無難と思われます。
(工事中)


参考文献:
「トライボロジスト」Vol.44/No.9/1999.p736.日本トライボロジー学会、養賢堂
「動く分子辞典」講談社ブルーバックス、B1266本間善夫・川端潤著(CD−ROM付き)


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