新規格導入の理由と主な変更点
1.環境問題から
変更点:1.省燃費性向上に関しては、従来の規格では製品の初期性能だけが評価されてきたが米国のCAFE基準値※をクリアーする目的 オイル消費低減を求められている 高温酸化安定性に対する要求
2.エンジン試験機の部品供給性の問題から
変更点:1.試験エンジンの全面的変更がなされ、日本製のエンジンが初めて採用されるに至る。10年以上前のエンジンで試験されている 既に試験実施不可能なエンジン試験が出ている
評価項目 | 1989年〜1994年 | 〜1997年 | 〜2001年6月30日 | 2001年7月1日〜 |
APIグレード | SG | SH | SJ | SL |
ILSACグレード | ― | GF−1 | GF−2 | GF−3 |
認証方法 | 自己認証 | EOLCS | ← | ← |
エンジン試験 | ||||
防錆性 | Seq.IID | ← | ← | Ball Rust Test
(ラボ試験) |
高温清浄性 | Seq.III | ← | ← | Seq.IIIF |
高温酸化安定性 | Seq.IIIE | ← | ← | Seq.IIIF(無鉛化) |
高温動弁摩耗 | Seq.IIIE | ← | ← | ※1Seq.IIIF、Seq.VE
あるいはP≧0.08wt% |
触媒被毒防止性 | − | ≦0.12%P | ≦0.10%P | ≦0.10%P |
(中)低温動弁摩耗 | Seq.VE | ← | ← | Seq.VIA
(KA24Eエンジン) |
(中)低温清浄性 | Seq.VIE | ― | ← | Seq.VG |
軸受腐蝕 | CRC L−38 | ← | ← | Seq.VIIF
Ball Rust Test |
高温清浄性 | Cat.1H2 | ― | TEOST | ※2TEOST MHT
(ラボ試験) |
省燃費性(ILSACのみ) | Seq.VI | Seq.VI | Seq.VIA | Seq.VIB |
規格 | API | SJ | SL | ||||
ILSAC | GF−2 | −−− | −−− | GF−3 | −−− | −−− | |
粘度 | 0w−XX
5w−XX 10w−XX |
0w−20
5w−20、30 10w−30 |
その他の
SAE粘度 グレード |
0w−XX
5w−XX 10w−XX |
0w−20
5w−20、30 10w−30 |
その他の
SAE粘度 グレード |
|
ベンチ
試験 |
防錆性 | Seq.IID | ← | ← | Ball Rust Test | ← | ← |
蒸発性
|
|||||||
・NOACK法 | 22以下 | ← | 20以下 | 15以下 | ← | ||
・ガスクロ法※1 | 17以下 | ← | 15以下 | 10以下 | ← | ||
ろ過性 | 〇 | ← | ← | 〇 | ← | ← | |
泡立ち性 | |||||||
・Seq.I&II&III | 〇 | ← | ← | 〇 | ← | ← | |
・High Temp Foarming | 200/50以下 | ← | ← | 100/0以下 | ← | ← | |
触媒被毒(P含有量) | 0.1以下 | ← | −−− | 0.1以下 | ← | −−− | |
均質性と混和性 | 〇 | ← | ← | 〇 | ← | ← | |
せん断安定性 | CRC L−38 | ← | ← | Seq.VIII | ← | ← | |
高温清浄性(デポジット) | TEOST | ← | ← | TEOST MHT | ← | ← | |
低温ゲル化 | 〇 | ← | −−− | 〇 | ← | −−− | |
粘度特性 | SAE J300 | ← | ← | SAE J300 | ← | ← | |
引火点
(どちらか一方) |
200以上
(COC) 185以上 (PMCC) |
← | −−− | 200以上
(COC) 185以上 (PMCC) |
← | −−− |
例えば今まで、SJグレードでエンジン(自動車)メーカーで15000kmOKとか言われてきたオイルは、
シビアーコンディションの場合、半分の7500kmOKということでしたが、
この規格SLではそういう条件のないエンジンでも、基本的には8000kmOKですが、
シビアーコンディションでは4000kmOKという事になってしまいます。
4000kmというのが長いか短いかは、人それぞれの判断になりますが、
一応、基準的に最低ラインが出来たことは、評価されるべきかもしれません。
条件によっては8000kmOKというわけではありませんので、今までのオイルの耐久性と比較してどういうように
耐久性が向上したかがわかりにくいのですが、
規格が出来たおかげで、少なくとも最低の走行ラインは理解できるようになってきました。
ですが一方SJ規格をパスしているオイルでもSL規格をパスできない商品があることは事実です。
あえて規格の問題から一般的エンジン対応のSLを取得しない場合(レーシングオイルなど)は別として、
いかに今まで長期使用条件において摩耗性が問題にされてこなかったかが、判るような気がします。
規格はある程度「ユーザー側の利益」として設けられるのですが、
本当は企業側の問題意識の現れと見て良いような気がしてなりません。
SLのGF−3の規格では、更に省燃費性能が求められるため、暖まる事による粘度低下よりも最初から粘度を
下げてしまう事でのメリットを考えて、5w−20などの低粘度オイルが出てきています。
もちろん、摺動面の耐摩耗性能が格段に向上した設計のエンジンでしか、使用は認められませんが、
使用する側のユーザーとしては、オイルの価格に跳ね返り、交換時期も短縮されるなど、
実際の使用上で良いことばかりとは言い切れないのが実情です。
5w−20で実際に8000Km走行をよしとするのは、きわめて良好なコンディションでの走行状態のみで
通常はやはり3000Km程度での交換を勧められる事がほとんどと言えますし、
本当にSL規格の通り8000Kmを模範的走行でなく、ある程度のシビアコンディションで走行しても大丈夫と
言ってくれるような製品を適正な値段で買えたらいいなと思っています。
工事中