規格 | FMVSS
No.116 |
JIS
K2233−3種 |
JIS
K2233−4種 |
ISO(国際規格)
4925 |
SAE
J1703 |
||
DOT3 | DOT4 | DOT5 | BF−3 | BF−4 | |||
ドライ沸点(度C) | 205以上 | 230以上 | 260以上 | 205以上 | 230以上 | 205以上 | 205以上 |
ウエット沸点 | 140以上 | 155以上 | 180以上 | 140以上 | 155以上 | 140以上 | 140以上 |
粘度(cSt)−40度C | 1500以下 | 1800以下 | 900以下 | 1500以下 | 1800以下 | 1500以下 | 1800以下 |
粘度(cSt) 50度C | − | − | − | 4.2以上 | 4.2以上 | − | − |
100度C | 1.5以上 | 1.5以上 | 1.5以上 | 1.5以上 | 1.5以上 | 1.5以上 | 1.5以上 |
蒸発減量
%(100度C) |
80以下 | 80以下 |
※平衡還流沸点試験方法=JIS(k2233)
沸騰石(2mm程度のよく乾燥したカーボランダム)を3個入れたフラスコ(図1)に試料60mlを入れ温度計を設置し、
蒸発試料を28度C以下(試験中の温度上昇2度C以内)の冷却水を通して、冷却還流させる。
試料は8−12分かけ、毎秒1−5滴の速度で還流が行われるようにする。次に3−7分は毎秒1−2滴の平衡還流速度を
維持できるようにし、さらに2分間この状態を維持し、
その間の30秒ごとに4回の温度を0.5度Cまで読みとり、この平均値を測定温度とする。
*測定温度は1013hPaの値に補正する。
*2回の平均を整数にして平衡還流沸点とする。ただし、測定結果の平均値が230度C未満の場合で、2回の測定結果の
差が1度Cを超えたとき、又は230度C以上の場合で、2回の測定結果の差が3度Cを超えたときは、それぞれ試験をやり直す。
※ウエット沸点は器具としてデシケータ(図2)、試薬(TEGME、次ページ参照)を用いて同上の試験装置で行う。
水分測定装置は容量滴定法または電量滴定法に規定する装置を使用する。それぞれJIS(k0068の4.3と4.4)
※なお、DOT(Department of Transpotation)はFMVSS(米国連邦自動車安全規格)での呼び方で
BF−3(Brake Fluid、JIS3種の呼び方=DOT3)BF−4(同、JIS4種の呼び方=DOT4)
しかし、オイルに水分が入れば水分が100度Cから蒸発しますので、気泡が出来ます。
これは、天ぷらを揚げるときのようなもので、具を入れるとそこに泡が出ますので、
理解しやすいと思います。
激しいブレーキングで、パッドが摩擦熱を持ちその熱が充分放熱できないでキャリパーを伝わって
ブレーキフルードを熱し、沸点を超えるほど熱を持つと気泡が出来る、 いわゆる「ベーパロック」が発生します。
空気の層にじゃまされて、パッドに圧力が正常にかからなくなり、ブレーキが効かなくなる現象です。
この現象は水分が入ることで温度が変わりますので、「水分がないとき=ドライ」と
「水分が入ったとき=ウエット」の沸点をそれぞれ表示して規格化されています。
しかし何故、100度Cの状態で水分だけが沸騰し泡にならないかについては、
類推の域を出ませんが、ブレーキフルードの成分によって 水の分子を液体に引き止めているからだと思われます。
ラジエターキャップによって水の沸点が100度Cから100度C以上に上がるのは水の分子が
自由に動けるようになるのを圧力で外から押さえているのですが、
この場合は、水分子だけのかたまりでの現象です。
しかし、水にグリコールエーテルなどが混じりますと、一体化して第三の物資のような沸騰状態が起こります。
例えば、水だけでしたら100度Cで沸騰し、水自体も100度以上にはなりませんが、
グリコールエーテルが入ることによって沸騰する温度が広がります。 100度Cから120度Cまで沸騰するといったようになります。
こういった物質を「共沸混合物(アゼオトロープ)」と言いまして、ウエット時の沸騰点の温度に関係してきます。
このときの水分子はグリコールエーテルに取り囲まれて、水の性質が変わってしまい、100度Cでも少量であれば
グリコールエーテル中では沸騰できなくなる事になります。
違う性能のブレーキフルードを混ぜた場合、その沸点は低い方の性能になります。
これも同様と見て良いでしょう。
沸点の違いは、ポリグリコールエーテルと言う化合物の種類が多いからで、
本来「00グリコールエーテル」とか「**グリコールエーテル」と言われる化学名があるのです。
もちろんそれぞれに吸湿性も沸騰点も異なっています。
単に、「ポリグリコールエーテル」と言われているから、同じものと思われやすいのです。
なお、ベースポリマーと溶剤が別個のような振る舞いをしているように次ページで感じられるかもしれませんが
一つの成分+ブレーキ用添加剤成分とみなされた方がいいかもしれません。
DOT3 | DOT4 | |
1年目 | 2−3% | 2.4−3.6% |
2年目 | 3−4% | 3.6−4.8% |
新車の場合、大体3年間は大丈夫と言われ、メーカーによっては5年間OKと言うものも使用されています。
もちろん、値段は高くなりますが、防錆剤自体が100度ほどの熱で劣化をしてきますので、
安心は出来ません。交換の目安はやはり車検毎にする事をお勧めします。
と言うのも、ブレーキフルードが防錆効果を正常に機能していても、新車に組み込まれるそれらのパーツ自体に、
錆などが発生して(orしやすくなって)いたりする事もあるからです。
「止まる」ための装置ですから、リスクマージンを多めに取りましょう。
下記「添加剤」についてでも記載していますが、
その他の方法として防錆効果の高い添加剤を使用ブレーキフルードに添加して使用するもあります。
ただし、相当高い値段となりますし、添加するには交換作業が必要になります。
ブレーキの効き(応答性)について
ブレーキオイルも粘度を持った液体ですから、ベースオイルの違いによって粘度が変わってきます。
極端な話で言いますと、低温時(冬の始動時など)DOT3の方が柔らかく、DOT4の方が硬いと言うことになりますので、
(チューブからゼリーのような液体を押し出すより、さらっとした水のような液体を押し出した方が楽でしょ)
応答性は低粘度の方が良好なわけですから、この場合はDOT3の方がよく応答するという結論になります。
もちろん液体の圧縮があるわけで、厳密に考えれば圧縮率に違いはありますが、
普通のブレーキとしての作動圧では差を無視できるほどですから、考える必要はありません。
ですが、その粘度の差は普通は体感できるレベルとは思われないほどの差でして、
DOT3とDOT4の新油で比較して違いがわかる人はまずいないと言えるでしょう。
ただし、ブレーキオイルが劣化した状態とブレーキオイルを抜き替えて新油で比較されれば、
オイル劣化以外に僅かな気泡、水分、潤滑性などの違いが現れる可能性がありますので、差が出るかも知れません。
当然新しい、粘度の高いオイルを入れた方が硬い感じを受け、ダイレクト感が増すように感じられるかも知れませんが、
応答性とは別に考えた方がいいでしょう。
一般的な制動力の差は、ブレーキホース、ブレーキパッド、マスターバックの差での方が大きな変化が現れると思われます。
ブレーキオイルだけでの差は、どちらかと言えば100度Cを越えた温度での比較ということになり、
この時の潤滑性もその差として現れてくるようです。
つまり、常温以上ではやはりDOT4の方がドライ沸点が高い分、油膜保持も良いと言うことになり、
高温になる場合は、エンジンオイルと同じように考えれて良いことになります。
つまり、ブレーキオイルとしては「高沸点化」「低粘度化」が求められると言うことになりますが、
作動性の改善からは今後とも「低粘度化」が重要となりそうです。
また併せて低摩擦性も要求されてくるでしょう。
一般には販売されていない産業界用のグリコール用潤滑剤があり
下記3つの条件をクリアーしている製品なので、テスト用に入手しておりますので、
後日、結果を報告してみたいと思っています。
こういうブレーキフルードに使用する目的で作られているわけではありませんが、実際に作業していますと
シリンダーはピストンのエッジに当たり、磨耗している事がほとんどで、
ブレーキオイルに金属粉が混じっている場合もあります。
磨耗の問題はまた別にしても、潤滑性が上がればもっと軽く反応し、応答性も良くなると考えられます。
高温の沸点を上げる為にホウ酸エステル系を使用した製品の粘度は通常より高い粘度となっていますが
これは添加されるポリグリコールの質の問題にもよってきます。
ポリグリコールは粘度と潤滑性に関わっているようですが、この質を改良することでも
実験的なレベルとはまた違う、実際のブレーキのタッチというフィールの変化は出てきそうです。
DOTの違うオイルや添加剤を入れることについて
ブレーキオイルの成分は基本的にポリグリコールエーテルですが、粘度が違うことと添加剤成分が違うことが考えられます。
それらを化学薬品とみなせば、違う可能性の高いオイルの混合は悪い反応を促進させる可能性もあり、
お薦めできることとは思われません。
一時的な補給ではほぼ問題が発生するとは思われませんが、
長期的な混合はブレーキだけに避けたい事柄に入るように思われます。
オイルシールに適合した成分であるかどうかも問題になります。
ですから、その添加剤が
1.ブレーキフルードの沸点(ドライ時ウエット時とも)を低下させないものであること
2.混ぜた時の粘度が極端に変化しない程度のものであること
3.充分な潤滑性や防錆性、また耐久性のある製品であること
などが、満足できるデータがあれば、個人的責任の元で添加してもいいかもしれません。
また、ブレーキフルード同士で継ぎ足す場合は
出来るだけ、同じメーカーの同じDOTのブレーキオイルを使用する方が無難と言えます。
けれど、それほど高い製品でもありませんから、入っている製品がどういう銘柄かもわからない場合
不安を持って継ぎ足すより、思い切って交換されるのも一つの方法と言えます。
ただ、一般使用で車検毎に全量交換する方でしたら、途中に継ぎ足しされても使用上問題はないでしょう。
(ただし諸外国に置いては、DOT4でも5年間OKと言われているのですが、日本では リスクマージンのためか、何故か2−3年何ですね。)
次に、経年劣化で防錆力が弱くなることで、錆が発生しやすくなります。
ブレーキは外から見るとアルミ製か鉄製の装置ですが、
オイル自体を密閉して(シール剤と兼用して)いるのは、「耐油性のゴム」です。
ですから、錆が発生し、そこにゴムがこすれますと、ゴムに削れが生じ、「オイル漏れ」
になります。
また、金属製シリンダーのこすれも多々あり、金属粉がシリンダーとピストンの隙間に入り、 錆びますと、元の金属より膨張して圧力がかかりますので、いわゆる「ロック」状態になります。
錆が発生して動かないのは実はこの圧力に原因があります。
シリコーン系
ジメチルポリシロキサンが主成分となるブレーキオイルで、そのシリコーン油のもつ優れた、温度−粘度特性、耐熱性、耐寒性、
高い沸点(分解温度)などを特性に極寒冷地用に利用されつつあります。
一部レース車両やハーレーダビットソンなどに使用されているようです。
通常オイルに分類されるため、グリコール系とはことなりますので、
DOT3−4などとの混合は、分離・錆発生が起こるためしない事。
「手元にあるヘインズの取り説並びに私が使用した限りではブレーキオイルは
ジャガー XJ−6・Sr1,2,3
Hydraulic fluid to SAE J1703D (Duckhams Universal Brakeand Clutch Fluid)
XJ−6・XJ−40シリーズ
Hydraulic fluid to DOT4 (Duckhams Universal Brake andClutch Fluid)
とも鉱物油ではなく普通のブレーキオイルです。
年式やモデルによる違いがあると思いますので一概に言えないと思います・・・」
と言うご指摘を頂きました(Kさん、どうもありがとうございます)。
使用ブレーキ油がどちらになっているかは、あくまでも、取扱説明書で確認されるのがよいように思われます。
基本的にはグリコール系は水に混じり分離しませんが、鉱物油は水と混合しないため見分けがつくと思われます。
※ブレーキオイルなのかブレーキフルードなのか
ブレーキの場合、ほとんどの商品カタログでは「ブレーキフルード」とされていますが、
こういった呼び方はまだまだ決まっているわけではないようです。
ブレーキオイル(=油)として、その原料から考えれば、シリコーン油と鉱物油が使われている場合は
この呼び方でも正確と思われるのですが、
日本車の市販車ではグリコール系しか使われておらず特異な原料と考えらますから、
これらの原料もふくめてブレーキに使用する作動油は「ブレーキフルード」と呼ばれる傾向が強くなっています。
特にこの傾向はブレーキフルードメーカー内部であるようです。
トライボロジーの専門書などでは、
「潤滑剤」という大きな枠の中で
1.潤滑油(各種用途油、ブレーキフルードや添加剤も含む)
2.グリース
3.固体潤滑剤
とわけて考えられているようで、これはどうも「液体」「半固体」「固体」という、「相」からの分類と思われます。
気体も潤滑する流体としてあるわけなのですが、限定されてきますので、省かれているのでしょう。
もちろん気体については大切な学問となっています。
その中では使用される用途によって分類されるわけですから、水−グリコールやエマルションでも
作動油の分類に入れています。
特に油圧作動油を「フルード」とは言っていないようですが
フルードの意味合いが作動油と呼ばれる傾向は強くなってゆくのかもしれません。
エンジンオイルだって立派に「作動油」として機能しているからです。「エンジンフルード」と言う言い方は
あまり一般的ではありませんが、間違いとは言えないのも事実です。
オートマチックトランスミッション「フルード」かあるいはオートマチックトランスミッション「オイル」と呼ぶのか、
パワーステアリング「フルード」かパワーステアリング「オイル」と呼ぶのかを
専門紙上でちょっと調べてみましたが、10年ぐらい前は立派に「ATオイル」「PSオイル」が使用されていましたし、
会話内では同じ扱いをされていましたし、
現在もきちんと定義はされていないと言うのが実際のところではないでしょうか。
専門紙上でもパワステ、ショックアブソーバー、アクティブサスペンションなどの作動油が「オイル」とされ、
トラクション、ブレーキがフルードとされている例もあります。
なお「フルード」は液体を指しますので、水もLLCもオイルもエチレングリコールも入りますが
「オイル」には水やLLCやエチレングリコールは入れませんので、
フルード>オイルと言うように、フルードの方が大きな範囲を持っています。
で、通常はオイルと呼ばれる物は水と分離する傾向がありますのでそういった場合の物質をオイルと呼び、
エチレングリコールのように水となじむ性質の液体をフルードと呼ぶと言う考えもあるようです。
バイクVS自動二輪、自動車VS車、エンジンオイルVSクランクオイル等々呼びやすい方法で
定着した呼び名を使う事が大切で、「伝わる方法」で伝える言葉を選ぶ事もまだまだ必要と思えます。
工事中