肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ57

潤滑の学会誌を読んでいますと、ほとんど解らない数式と多少解ったような気にさせられる理論とが一緒に出てきますので
解らないところは飛ばして、資料の実験データをながめて、結論を読み、
摩擦や摩耗のそれぞれの分野での技術の進展をダイジェスト的に見ることが出来る気がします。
また、そういった実験が出来る機器についての技術の進歩にも感心させられますし、
本当に「ため」になります。(私の場合、興味を満足させているだけでしょうが)。

しかし、どういう訳か、
エンジンオイルも含めて、潤滑油に関しては、その成分や添加剤などが当たり前のベースオイルであったり
添加剤としても普通知られているものであったりするわけで、
本当に知りたい次世代的添加剤成分については一切出てこないし、そういった任意の添加剤についての実験データも
数少ないと言うことがあり、時々どうなっているんだろうと思ってしまいます。

ある程度ベースオイルが限られているという現状があるので仕方ないことなのでしょうが、
本当に知りたいのは(ユーザーの立場として)そのベースオイルに入れられている添加剤の性能や評価であって、
そういったものについては、ほとんど知ることが出来ないと言うのが普通です。
ですから、
問題点=不具合が出てきますと、いつの間にか同じ銘柄のオイルでも、新しい添加剤に変わっていたりするのは
普通ですし、添加量が増えていたり、更に新しい別の添加剤が入れられたりしているようなのですが、
現場としては何故そうしたのかについて理由がつかめないものですから、
ちょっと戸惑うこともあります。
(ついでに言いますと、パッケージだけ「新製品」で、中身が「旧製品」と同じで「値段」だけが高くなってしまうような
形での「リニューアル」も、現実にはあるようですが・・・困ったものですね。)

オイルはベースオイルが限られて来ますと添加剤の技術がそのオイルの善し悪しに影響が出ますので、
添加剤の部分が特に丸秘的になってしまうのでしょうが、
となりますと、添加剤として特殊な成分などについては
それが余程広まってきませんと実験データにも比較データにもならないわけで、
その成分名が出てきた頃には、どのオイルにも、どの添加剤にも含まれているようなものになっているか、
反対に忘れ去られているかと言う結果であることが往々にしてあります。
(で、どういうわけか、オイルと添加する添加剤にも「流行」がありまして、
後から入れるオイル添加剤としてはPTFEだったり、ポリマーだったり、亜鉛系だったり、セラミックだったり、
有機金属だったりと、変遷してきています。)

オイル販売メーカーへは、添加剤を製造する様々な会社からそれぞれ、様々な添加剤が試供品として持ち込まれ、
値段や性能に基づき「ふるい」にかけられ、通過した添加剤については様々なテストがなされ、
最後に生き残った添加剤が各種ブレンドされて商品化するわけですから、
今あるオイルに含まれている添加剤は、企業にとってメリットのある付加価値の多い商品であるはずなのです。
それで、そういった諸条件にあった問題性の少ない添加剤が各オイルメーカーへ一気に売り込まれますと、
ほとんどのオイルにそれが含まれてしまう結果となり、オイル側でも一種の流行になってしまうのかも知れません。

昔、特殊な添加剤だった「有機モリブデン」は現在は、ほとんどの(特に低粘度)オイルに含まれるようになって来ていますし、
量産出来れば高価ではなくなりますので、今後もこの傾向は続くでしょう。
ただ、この添加剤も高温になる摺動部以外の金属面でも二流化モリブデンになってしまいますので、
継続的に使用することで、積もったモリブデン膜がブロックごと剥がれ落ちてしまうとか、
オイルラインに影響が出ないかが心配なのですが、
今のところ、配合量が少量で3000−5000kmぐらいは効果がありますし、
清浄分散もきちんとされていそうですので、そう心配は無いのかも知れません。
オイルメーカーもそのぐらいの距離での交換を薦めているようです。

けれど、どうしてこういった心配についての記述がどこにも出てこないのかも不思議なんです。
「これ(黒色付着物)はエンジン側の問題で添加剤には関係ないから」という事なのでしょうか。
今まででしたら、茶色い柔らかい感じのスラッジだったのが、有機モリブデン系オイルを使用していますと、
決まって、真っ黒な薄くてすこし固い、それでいてもろく崩れる膜が付くようになってきていますので、
これが落ちたらどうなるのかと本心で心配しています。(まあ、スラッジでも同じ事でしょうし、
そうなる前にオイル交換をすればいいのでしょうが・・・。)
それ以外の摩耗によるデメリットよりも、こちらの方がましと言うことであればそれで良いのですが、
代表性状以外に成分なども表示していただき、そのメリットとデメリットも記述していただけると
本当はありがたいと思う次第です。(しないでしょうね。)

高価な製品(添加剤成分)については、オイルメーカの方でさえ知らないことも多くありますし、
知っていても、企業の方針から使用しなかったり、
特許などが切れて安価になってから使用し出したりと、やっぱり「商売の世界」と言う感は免れません。
(至る所にそういう現実がありますが、目をつぶってしまえば良いのでしょうかね?
考えてみますと「中古車選びのホームページ」など開き、そこで「うらばなし」などを書いたら、
私も生きていないでしょうね。ああ恐ろしや・・・。オイル業界の方々がHPを書かない理由も段々解りつつあります。)

ともあれ、オイルを作る側も本当に大変だと言うこともわかりますし、
そして、今あるエンジンもどういう形になって行くかわかりませんので、差し障りのないオイルが中心で動き、
良いオイルや添加剤が存在価値を持って販売されてゆく傾向はしばらく続いて行くことでしょう。
現実に販売されているオイル添加剤については、あまり論文で比較テストなどされませんし、
成分などの特許と絡む事なども書けませんし、
共有できる知識や技術は最先端では少し特殊な状況下で知ることが出来る以外は
知らなくて良いのかも知れません。

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