乗用車用タイヤの異常摩耗(工事中)
ラジアルタイヤの異常摩耗のうち、発生率の高い10種類をあげると、下記のようになります。
●特に空気圧によるもの・・・2.8.9
●整備不適正によるもの・・・1.3.4
●車両機構又は整備不適正によるもの・・・5.6.7
●車両や使用不適正によるもの・・・10
1.片側磨耗・・・図のように、左右のショルダーのどちらか一方が早く磨耗してしまう現象です。
ホイールアライメントによりタイヤは傾きをもって接地しているため、外側の部分が
早く磨耗する傾向がありますが、トーイン・トーアウトなどトー角度の狂いによって、あるいは
キャンバー角度の狂い(ラジアルタイヤは影響がすくないが)によって更に磨耗が促進されます。
同じ荷重が同一方向にかかるような動きによっても(カーブする方向のどちらかに偏っている場合も)
同様な磨耗になります。
特にフロントタイヤで発生し、トーイン過多気味になってい
る車両に多く発生します。
一般的にはトーイン過大の場合は外側が減りやすく、トーアウトになってい
れば内側が減りやすくなります。
(ただし過積載になるような場合はトーが合っていても、内側が減りやすくなります)
また路面は中央が高く外側へ傾斜して作られていますので、進行方向に対して
自動車は自然に左側への力が加わっていますから、ハンドルで僅かに右へ切らなければ
まっすぐ走りません。
僅かですがこれも偏摩耗につながる可能性があり、基本的に避けられない磨耗になります。
空気圧が不足していますと、促進要因となります。
磨耗する図の赤い線の傾き加減によって、端が急激に磨耗する「肩落ち磨耗」と通常走行でも起こる
「片減り磨耗」とが代表になります。
対策:1.空気圧を適正にし(運
転席側のドアかセンターピラー部に適正タイヤサイズと適正空気圧が記載されています。
大まかですがプライ数がある貨物用ですとプライ数の半分の数値が空気圧の目安となり
ます。
6プライのタイヤなら3.0kgf/cm2程度ということに
なります。乗用車用は通常4プライ扱いですから
2.0Kgf/cm2程度となるのですが、実際は
2.5kgf/cm2程度までさまざまにされているようです。)
無理な速度でカーブを切らない。また、段差のある通路へ進入する事が多い場合は、
ゆっくりと進入し、トーインの
ずれを少なくするようにする。トーインがおかしいと思ったら調べ、調整する。
タイヤローテーションによって前後を入れ替えることで寿命を延ばす。
2.両肩落ち磨耗(ショルダー磨耗)
オーバーロード(過荷重)及び空気圧不足のときに多く見られます。フロントに装着した場合は
トーイン、キャンバー(反り)の影響でも起こる。
対策:片側の磨
耗原因と同じ対策と過積載などを避けることで防ぐ。
タイヤローテーションが効果的なのですが、
特にFF車のフロント側に多く、気が付くのが遅かった場合は、フロント側を新品に替えた方が良い場合もあります。
空気圧を適正にする事でもある程度磨耗の速度を減らすことが可能ですし、
扁平率を1ランク上げる(80から70、70から65など)ことでも摩耗量が減ることが多く見受けられます。
扁平率はタイヤの接地(摩擦)面積を多くすることにつながりますので、単位あたりの荷重が軽減されると
摩耗量も減る事につながることとなります。
ただし、摩擦力も増えますので、タイヤのすえぎりでハンドルが重く感じられる場合も起こります。
パワーステアリングが重く感じられるような扁平率のタイヤは避けた方が良いでしょう。
なお、最近のRV車用タイヤでは、磨耗が激しいこのショルダー部の溝を深く作る事で、「もちがよい」タイヤとして
販売しています。まあ、これも1つの手ですね。
3.羽状磨耗(フェザーエッジ磨耗)・・・リブ及びサイプエッジに多く見られ、径方向へ羽状に磨耗したものですが、
トーイン、キャンバーの不良、頻繁な急カーブ、空気圧不足や路面の傾斜によっても
発生する場合があります。
対策:通常走行で起こることはあ
まりなく、コーナリングを楽しむような走行をすると起こります。
トーインやキャンバー角の異常がなければ、走行の仕方による事が原因ですから仕方がな
いという面があります。
無理な走行は気をつけてくださいね。
4.波状磨耗・・・・トーインやキャンバーの調整不良、空気圧不足、トラックなどのダブルタイヤなどで外径差や空気圧差でも
起こってきます。トレッドショルダー部に多く見られ、周方向へ波状に磨耗したもの。
図では左の状態から右の状態へ進行してゆきます。
対策:乗用車ではあまり起こらな
い症状で、トラックなどの貨物、特に複輪を持つ車両に多く見られます。
空気圧を同じように合わせ、外径差をなくすように同じ銘柄タイヤに交換する事で症状が
改善されます。
5.多角形磨耗・・・・片方のショルダーから反対側のショルダーまで磨耗域がつながっている場合で、タイヤが円形にならず
多角形になってしまったもの。下記磨耗部分が円周上に複数でてくるようです。
複輪での外径差および空気圧差がある場合、空気圧不足、ホイールバランス不良、
センターベアリングとキングピンのガタなどが考えられます。
対策:複輪の場合は貨物車になり
ますが、タイヤの大きさが違う銘柄を使用する等は避けた方が良いでしょう。
空気圧以外は、足回りの整備で発見されたり、乗っていて違和感があり、振動や騒音がで
るようです。
タイヤやホイールに偏心があったり、曲がりや足回りのガタがあったり、トー・キャン
バーの不適正、
キャスターが過大だったりということで発生しますので、ホイールバランスや足回りのメ
ンテをされていれば
滅多におきないように思えます。
6.偏心磨耗・・・上記多角形磨耗の一部だけ(下記のスポット磨耗にも似てきますが)が約半周程度に広がるように
磨耗した場合をさし、同様にタイヤ側と車両側から見る必要があります。
車両側はハブやスピンドルの偏心や曲がり、回転部分のアンバランス、
タイヤ側ではタイヤとホイールの偏心などとなっています。
対策:ほぼ上記と同じ。
7.局部磨耗(スポット磨耗)・・・トレッドの一部または数カ所が局部的(スポット)に磨耗した状態で、車両側ではブレーキドラムの
効きの不均一或いは偏心、回転部分のアンバランス、使用上からは急ブレーキ・急発進、
タイヤ側からは油類の付着・タイヤ内部に当てものをいれた場合などで発生します。
対策:ほぼ上記と同じ。発生原因
を避ければ対策出来ます。
8.中央磨耗(センター磨耗)・・・規定の空気圧を大幅に越えて空気を入れますと、タイヤも風船のように丸くなりますから
(下記、空気圧と磨耗の関係の図を参照)
トレッド中央部に接地部が偏ってそこから磨耗が進行することになります。
駆動軸では特に磨耗が早くなりますので、FR車の後輪によく見られる症状となってきます。
FF車の場合、前輪が駆動軸ですが、カーブ路面でショルダー部にも負担がかかりますので、
センター磨耗が目立つことは少ないと言えます。
逆にFF車の後輪では同じ位置で使用していた場合の比較として
前輪の2倍程度の使用をされますから、空気圧が異常に高ければ同じような磨耗を起こします。
対策:適正な空気圧(特にFR車
での駆動軸になる後輪)とタイヤローテーションによって同じ箇所が磨耗するのを避ける事で
大体は長持ちさせることが出来ます。
9.段差磨耗・・・・・・・・・・・図では1方向のヒールアンドトウ磨耗ですが、逆に磨耗する事も当然でてきます。
(ヒールアンドトウ磨耗) 1つ1つのブロック又はラグが「のこぎりの歯」のように磨耗してしまう症状で、
通常、同じ進行方向に取り付けますと(方向性のあるタイヤなどは特にですが)
大なり小なり起こってきます。理由は、発進での磨耗の量とブレーキングでの磨耗の量
が、異なることによります。タイヤの1ブロックを消しゴムと考えれば、おなじ向きばかりで
力をかけるような消し方をすれば、片方側が削れる事は直感的に理解出来る事です。
それで、動く時と止まる時が逆側で磨耗する事もわかってきます。極めてゆっくり発進し、
緩やかなブレーキングをされる方ではあまり起こりませんが、それでもやはりブレーキング側での
摩耗量が駆動側での磨耗量より多くなり、図のようにブロック後ろ側が多く磨耗する傾向を
もっています。(図はタイヤの上部ですから逆さに考えてください)
FF車でもFR車でもこの傾向は強くでます。そのためもあって
ローテーション時にタイヤを逆方向へ回転させる位置へ組むわけです。
FF車の駆動側では大きな荷重(車重が前タイヤにかかる)もかかるため特にこの傾向が強いようで
す。
もちろん方向性のあるタイヤでは排水性や摩擦の為のブロックパターンが組まれていますから
逆回転は厳禁です。
対策:急発進・急ブレーキなどを
控えた運転で摩耗量が変わるので、これらを避ければ起こりにくい。
10.早期磨耗・・・車両の高出力化によって、特にFF車の前輪で発生しやすくなっています。タイヤの磨耗が異常に促進され
これは、無理な速度を出して急ブレーキを掛けるとか、急発進・急加速や粗い路面での走行や
頻繁なGO&STOPによっても起こってきます。
対策:タイヤサイズとしては扁
平率を上げることでもある程度磨耗率は下がるようですが、基本的にはタイヤに負担となる
無理な走行条件(急発進・急停止・急旋回)を避けることです。
走行音の種類
1.パターンノイズ
2.スキール
3.道路騒音
4.弾性振動音
5.すべり音
異常摩耗の防止をどうすれば出来るか
異常摩耗は通常の避けられない磨耗と異なり、人為的に軽減可能なものですから、磨耗防止を必要と考える人にとっては
避けtられれば避けたい事象と言うことになります。
基本的には3つの側面から考えられますので、下記に点検事項を挙げておきます。
1.自動車側の問題・・・・・・・・・アライメントの異常、ホイールの変形などによる異常、ブレーキの引きづりなど機械的なもの。
2.タイヤの使用上の問題・・・・空気圧が異常に高い、或いは低い。ローテーションの時期の遅すぎ。
3.運転の仕方による問題・・・急発進、急旋回急停車や急が付く運転。
実際には、上記の要素が複合して、起こってくることがほとんどで、
異常かどうかも判断しにくい場合が多いと言えるのですが、
空気圧・トーインなどは外部からある程度確認出来る事ですし、急激な摩擦をタイヤにかけなければ
異常に減ることも少ないと思えます。
ある程度同じパターンで走行していても、早く減る傾向が出たらチェックされることをお薦めします。
タイヤ使用上の問題点
1.空気圧と磨耗の関係
空気圧が不足した場合と多い場合のタイヤトレッド部(タイヤと路面の接地部)変形の差を見ることで
どこが磨耗するかが、わかってきます。
見た目では、どちらの状態でも接触面はきちんと平面であるかのように見えますが(図は極端に書いているだけです)、
その平面の中で、圧力が高い箇所と低い箇所が空気圧の差で起こる事は容易に察知出来ます。
接地面の圧力とその面積が変わるため、接地面部で均等に受け止められる適正な空気圧が一番磨耗しにくいのですが
これは、車体の重量(荷物を積んだときは当然変化します)と関係してきます。
ですから、特に荷物を積むためのバン・トラックは、
耐荷重能力は空気圧で変化しますから、荷物の重さで本来は調整する必要があります。
運転席のある前輪に空気圧が少なく、荷重配分が大きくなる後輪車軸では、かなり大きな空気圧としますので
前輪・後輪で空気圧が違うことがほとんどです。
乗用車では標準空気圧が運転席ドア部のどこかに記載されており、大体1.8kgf/cm2ー2.3kgf/cm2あたりと思われます。
こちらでも、大抵は高めに空気圧を入れているのですが、これは、
空気圧が不足していた場合の磨耗率は大きく多すぎる場合と比べて非常に大きく、偏摩耗しやすくなるため
どうしてもプラスアルファの高めの空気圧を入れてしまいます。
毎日空気圧を管理されていないからと言う理由と
(僅かずつですが自然に空気が抜け、空気圧が低くなりますので、漏れる分を入れておこうという発想)
高速走行時の適正空気圧が+0.2kgf/cm2あたり
高めであることにもよります。
で、上記以外に、自動車を長期保管している場合など、自動車の自重でタイヤの変形がおこるわけですが、
空気圧が少ないと、それだけ変形度合いが大きくなり、元の円形から、かなりずれてしまうことが多く見られます。
一旦変形しますと、ほとんど元に戻らないので、磨耗の仕方も異常性をおび、転がる場合のタイヤノイズや
振動も発生しますから、使い物にならなくなる場合も起こってきます。
(工事中)
2.速度と磨耗の関係
3.ブレーキと磨耗の関係
4.外気温と磨耗の関係
5.運転方法と磨耗の関係
6.路面・坂道・カーブなどと磨耗の関係
工事中
参考資料:(社)日本自動車タイヤ協会「乗用車用タイヤの異常摩耗について」
ダンロップ、ブリジストン発行の資料集、その他より
タイヤの耐荷重
能力(最大値=おおむね2.3kgf/cm2)
はメーカーのHPにあります。
(空気圧が低いと下がります)
メールが送れない場合:macchann@mbox.kyoto-inet.or.jp