燃費を考えてみました−その1

燃料を燃やして、その熱量を使うと、仕事(力学的エネルギー)が出来ます。
(分かり易いのは、やかんの水を沸騰させるとフタが持ち上がることです。)
エンジンで言うと、ガソリンを消費して自動車が動かせる、という事になります。 元になるエネルギーと言えば「ガソリンとバッテリー」しかありませんから、 ガソリンがなくなり、バッテリーも上がってしまえば、もう「ただの箱」にしかなりません。 (この場合、位置のエネルギーは考えません=坂の上にある自動車はサイドブレーキを外す事で ガソリンがなくても駆け下りる事は出来ますから。)

「燃費」ということを考えてゆくと、どうしても、「なぜ燃料を燃やすことで自動車が走るんだろう?」 と疑問が湧いてきます。

そして、どうすれば「燃料代を安く」「動かせる距離は長く」出来るかを、考えてしまいます。

人の場合、仕事という労働力が賃金に反映されますので (そして少ない仕事量でたくさんの収益を生みたいと願っている場合が多いので) 、どうしても賃金によって 支払われる燃料について、経済効率のよい仕事(あるいは快適さなど、心地よい仕事) を自動車にもしてもらいたいと、願わざるを得ません。

ということで、どうしたら効率よい収支(あるいは”快”を多く生むか)が出来るかという観点から「燃費」を 考えてみました。


エネルギーとしての差引勘定

力学的エネルギーが熱エネルギーに変換するのは多くの場合、摩擦によります。
例えば、物体が固体表面上を滑る場合、擦れ合う表面に熱が発生します。摩擦によって
物体と固体の表面付近が変形されます。この変形を受けたため、物質を構成する分子・原子の
内部運動がはげしくなり、温度が上昇します=つまり「熱」が発生するわけです。

これは、走っている自動車を止めるのに、ブレーキを踏むと、ブレーキ部が 熱くなったり、タイヤが熱くなったりしていることで日常的に体験している 事です。

運動エネルギーが熱エネルギーとなり、エネルギーとしての総量は転換後も 変わらないのですが、現実には他の系に分散されて失ってしまうため、差し引き勘定としては 「同じ収支」にはなりません。

この事も現実では一般的で、例えば上記ブレーキとタイヤの摩擦で発生した熱を、今度は 自動車を走らせる運動エネルギーにしようとしても、回収率は極端に減るだろうと直感的に わかるでしょう。

エネルギーの形態の中でも、特に「熱」だけはそのすべてを他のエネルギーへ転換できないといった 例外ですので、 熱から運動へ変換する装置としての自動車も、相当ロスがあり、どういったところで そのロスが多いかを見てゆけば、「燃費」向上に役立つと思われます。


燃費の悪化はほとんどが”加速する際に”出る!?

10・15モードという燃費がカタログについていますが、これはほぼ40km/h以下での 走行テストに、ちょっとだけ50−70km/hを加えただけで、実際は路上ではまず無理な 走り方です。

0−−40km/hにするのに14秒とか、50−−70km/hにするのに22秒という 加速の仕方では、まず走れません。
実際には100km/h定地走行がこの10・15モードに一番近いようなのですが、これも なかなか難しそうです。

また、実際の燃費は市街走行ではこの10・15モードに対して70−80%の値になることを ほとんどの人が知っていますが、理由は、「加速のし方」にあるのです。

普通、めいっぱいアクセルを踏めば、0−−40km/hは約3−5秒間。 50−−70km/hは約3−6秒間ですから、いかにゆっくりとした加速かわかります。(自動車工学各号新車データより)

しかし反対に、10・15モードの走り方をすると、ほとんどどんな燃料添加剤を入れても ほぼ差が出なくなるのですから不思議なものです。(オートメカニック1994−9月号参照)
ノッキングを減らし、加速タイムを短くし、完全燃焼させているのは燃料添加剤のおかげなんでしょうが、 ゆっくり加速すれば、燃費とは関係ないかのように思われるデータです。

また、登坂走行は加速に加え、重力に逆らって自動車を上部方向へ持ち上げているわけですから、 二重の力が必要になります。自ずと燃費は悪くなります。
ここで、「自動車工学」より2台の新車のデーター載せさせていただきました。


正確なデータなどを取ろうとしても、労力が多いだけで、仕事にも差し支えますので、
上記のgifの内容に従ってロス分がどれぐらいあるか見てゆきたいと思います。

1.燃料は果たして全部燃えているのか

燃料が完全燃焼すればいいのですが、ほとんどの場合、未燃焼ガスは出るように設計されています。 エンジンはアルミ製が主流になり熱伝導率も良いのですが、温度上昇による溶解や変形も起こりますので リスクマージンとして、燃料はリッチ側にあります。燃料は液体ですから、燃焼室に 霧状に吹き込まれると、まわりの熱を奪い気化します。薄いより幾分か濃い方(リッチ)が 冷却効果はでます。この冷却は”発熱防止”と”ノッキング防止”なっています。

以前の自動車は、そういった未燃焼ガスの”HC”を大気へ垂れ流していましたが、現在は公害性も 重視され”EGR”に代表されるような 装置で大気へ放出せず、排気ガスを再使用しています。燃えた排気ガスの一部を 再燃焼させることで、排気ガスが綺麗になり、さらに有害物質を減少させる事が可能になりました。
それでも発生している未燃焼ガスや不完全燃焼ガスすべてを完全燃焼させる事は出来ないので、触媒によって 二次的に酸化させています。

未燃焼ガス自体はほとんど仕事をしてませんので、もったいない話しです。(排出ガスが COやHCをほとんど出さなくなったとはいえ、安全な成分としてロスのまま触媒で燃やされる(酸化) わけですから、触媒の前の段階で再使用してエネルギーとして利用できた方がいいに決まってます。)
燃料添加剤やオイル添加剤などで燃費がよくなった、それもかなり伸びた場合は、多分この未燃焼ガスが 燃焼室に多く混じっている場合と思われます。 改善値が高くなる理由の一つはやはり”完全燃焼”と思われます。
燃料添加剤はそういった未燃焼ガスを 効率よく爆発・燃焼へと導きますし、耐ノッキング性能や潤滑剤としての効果にも期待が 持てそうです。
ただし、ほぼ完全燃焼しているエンジンに、完全燃焼を促す燃料添加剤を入れたとしても 効果が極端に出た場合を中心に載せている添加剤のカタログ に表示してあるような効果を期待すると、がっかりさせられます。

完全燃焼に近づいている自動車の燃費をそういった形で伸ばすとは おもわれません。
それ以上改善の余地がないほど、燃料がきれいに燃えていれば燃料添加剤での効果は期待出来そうもないでしょう。 ただし、その他の項目での向上の余地は充分あります。
例えば、燃焼エネルギーの高いガソリン成分(トルエンなど)を入れれば良いのですが、それはそれで 問題はありそうです。燃焼エネルギーが一般のガソリンより高いと言うことは、それだけ少しの燃料で トルクが出るわけですから、加速もよくなるし、アクセルの踏み込みも少なくなり、燃費に貢献します。

リーンバーンエンジンはよく、走らないとか、排気量の割に馬力が出ない、などと言われますが、 燃料自体が薄いから燃焼エネルギーも少なくなるわけで仕方のないことです。けれどそこまで言われても 現在使用されているエンジンの他に、よいエンジンが開発されない以上、 未燃焼ガスの問題は今後も改善される方向に向かうことでしょう。

ここで、燃やすためのプラグとか点火方式などの問題も出てくるのですがそれはまた別の話として 考えてみたいと思ってますし、プラグについての資料なども参照してください。

ハイブリッドタイプは加速などでロスの多いところを電気(モーター駆動)で、 安定した定速走行などエンジンに有利なところは ガソリンをエネルギーとして使用します。 定速走行はガソリンエンジンでもかなり高効率に熱から運動へエネルギーを変換できるためです。

2.摩擦熱はどこで作られどこへ消えるのか

摩擦熱は動いている物同士が擦れ合うことで発生します。ですから、物と物が触れ合い、摺動している場所では、 間違いなく、摩擦熱が発生し、運動エネルギーを減らした分だけ摩擦熱に変わっています。

たとえば 、高速道路などで長時間走ればタイヤは熱を持ちます。路面とタイヤの摩擦によって、 自動車は動くわけですから、その摩擦熱も相当高熱になるはずです。しかしゆっくり走行している場合、つまり 加速しないで一定速度を維持している場合のタイヤはそれほど摩擦は発生しません。 この事は、ころがり抵抗が一桁摩擦係数が少ないことでも理解できます。タイヤが摩耗するのはほとんどフロントタイヤという事からも 分かることです。ハンドルを動かせばその分タイヤは変形したりちぎれたりします、その部分は熱を発生したりして運動エネルギーを 確実に減らすわけです。

運動エネルギーを減らしている分が摩擦熱などになって消える(他の系に熱を受け渡す)わけですから、逆に摩擦によって摩耗する場所を考えてみれば そこが摩擦熱の作られている場所ということもできます。
(重さは同じでも)グリップ力のよいタイヤは燃費が悪くなる理由はここにあります。

同様に、オイル添加剤などの効果も摩擦・摩耗を減らすことを重要な目的にしています。 摩擦熱を発生しにくくすれば、摺動部の熱を下げ、オイルの温度上昇も抑えられオイルの寿命も伸びます。

温度上昇は酸化劣化を起こします。
確かめるのには、鉄製の包丁などを砥石で研いでみるとすぐ分かります。 まず水で研ぎます。すぐには錆はでません。次に湯沸かしなどの熱いお湯で研いでみてください。 すぐに錆が発生します。酸化反応は原子の運動エネルギーが高いほど反応が 早くなるわけですから当たり前といえばそれまでですが、そういったことがオイル中で起こっている と考えてみれば、オイルの温度が高すぎるのは酸化しやすいという理由が分かります。当然水分などは 金属部を錆びさせるのでよくないことも分かるでしょう。

原子レベルでは粒子の持っているエネルギーが他の粒子に受け渡されることですが、 運動エネルギーは普通の状態では必ず熱エネルギーになって他の物質に奪われてしまうのが現実です。 それは、この世界の物質が様々な原子や「場」に置かれているからなのです。
石を投げても、地球の重力場にあるため地上に落ちてきます。石に与えられた 運動エネルギーは空気の分子に当たり空気の分子に運動エネルギーを与え、空気を熱する(他の系に拡散)・ 運動エネルギーが重力ポテンシャルに変わり速度が遅くなる(他のエネルギーに変換)・落下し(前の逆)・ 地上に落ちる(地面の物質に当たりそれを動かす、または熱を発生させる−他の系に拡散)で終了します。

もし。無重力で空間に他の物質がないなら、初速で与えられた運動エネルギーはそのまま変わらず、
どこまでも運動する(移動する)わけです。

けれど、実際は他の物質が充満していますので、どこまでも飛び続けられません。
自動車で言えば、ピストンを動かす事やブレーキでの減速、タイヤの摩擦、方向転換での運動エネルギーロスなどなど。
「動く事=熱を発生する」といってもいいほどです。ですから摩擦は運動させるさせないに深く関わってきました。 ブレーキなどはダイレクトに運動を熱に変えますから、ホイールに発電器をつけて再利用しようなどと実際されているわけです。
上記の図で、減速時について書くとすればせっかく運動しているそのエネルギーを 熱に変えてしまい、全く100%無駄にしようという行為ですから、どうすればブレーキを踏まないでいられるかを考えると 燃費に大きく貢献することは間違いないことでしょう。

3.無駄な冷却と効果的冷却

エンジンは鉄やアルミで作られています。金属はある温度を超えると液体状になったり酸化したりして、元の作られた 目的にあった状態でいられなくなってしまいます。

冷却ということは、その機械を維持するために必要なのです。ですからガソリンなどの炭化水素から エネルギーを有効利用しようとしてもその機械を「維持」させるために 都合の悪い高熱は奪い取ってしまわなければなりません。
エンジンには耐久性が要求されますので、 1度きりの爆発だけでものを粉砕させてしまう爆弾とは趣を異にし、 あくまでも(たとえ燃費が悪くなろうが)長期に渡って使用できる製品でなければなりません。
ですが、あまり冷却しずぎても無駄ばかりになってしまいます。 エンジン自体の温度を下げて大気へ捨てると言うことは、オーバーヒートにはならないかもしれませんが、 燃焼エネルギーを運動エネルギーに変えるという目的からは「燃料の浪費」になります。
目的にあったエネルギーを得ようとするとき必ずこういったロスがつきまとうわけですが、 このロスを少なくし、かつ オーバーヒートをさせないというバランスが段々進歩してきました。 近年コンピューターによって、燃料の噴射時間(燃料の濃度)のきめ細やかな演算や ユーザーの走行パターンの学習、ノッキングの防止や制御などが その類です

走行パターンの学習についてこんな経験はないでしょうか。
例えば、高速道路を優秀な省エネ燃費で走った後、翌日や一旦時間をおいて走行する際に、 なんだかトルク不足というか、アクセルをうんと踏まないと走りが悪いなどと言う現象です。
これは自動車の学習によるものと思われますが、高速道路などでは 無駄のないガソリン供給をしているからなんでしょうね
そういった走り方を覚えてしまうと、エンジンはガソリンが薄く配給され、燃費にはいいのでしょうが 走りは悪くなるようです。 約1週間以内に元に戻ると思われますが、そういった例を良く聞くものですから、 新しいタイプの燃料制御システムにはこういった現象が時々起こるようです。

そのためには、それぞれの場所にセンサーが必要になりました。 センサー自体が正常ならばその時々に応じた燃料が 燃やされ、冷却もファンによって無駄が無いように管理されているので、 随分燃費にも貢献しています

ただし、裏を返せば水温管理に関わるセンサーなどが壊れた場合、 エンスト、燃費悪化、さらにはオーバーヒートというように 直接影響もでるわけです。
冷却系のセンサー・スイッチは必ずラジエター液に触れていますし、燃料制御系も水温に関連して 信号を出す場合が多いので、 燃費が急に悪くなった場合そういったところのチェックや思いきった交換も必要でしょう。
(自動車のメンテナンスを他人任せにするのではなく、積極的に自動車の償却を考えながら 自発的に取り組むという姿勢は(時間的・経済的に許されるなら)本当は大事なことと思われますが、 そんなゆとりは現代人には評価されないかも知れませんね。)

効果的な冷却はエンジンのノッキング防止やオーバーヒート防止につながり、燃費を改善できます。 ガソリンは燃えてこそ効果があるわけですが、その燃え易さのため場合によっては勝手に燃えることが あります。いわゆるノッキングです。
ノッキングとは異常燃焼のことです。異常というのは目的に対してそぐわないということですから、 燃焼エネルギーが運動エネルギー(仕事)にならないということですが、困ったことにそれ以上に「エンジンを壊す」 事もあります。

普通はノッキングによってピストンが、一番圧縮が高いところで燃え切るようになって いるわけなんです(実際はほんのちょっと手前ですが)。ノッキングの燃焼スピードが普通の爆発よりかなり速いスピードで 完了してしまうため、上死点より幾分か前で圧力は最高値に達します。すると その圧力によって上がろうとしていたピストンに逆向きの力が掛かりますので 今作られた力を押さえようとします。つまりピストンに抵抗が加わるわけです。 この事は、パワーがなくなるという事ですから、燃費がよくなるはずありません。

上記図で混合気の自然発火の場合はタイミングを僅かにずらせることで解決できます。 あるいは、耐ノッキング策としてレギュラーガソリンをプレミアムに変えてみるとか、 燃料添加剤の成分でノッキング防止するとかという方法もあります。
場合によっては、冷却効果が落ちている場合も考えられますので、 時期が来ていたらクーラント交換・ラジエター内や冷却系の洗浄・サーモスタット交換などが 効果がある場合もあります。

また、デポジットなどによる表面着火の場合は燃焼速度は正常ですが、燃焼室内は高温になりプラグの 温度が950度Cあたりからプレイグニッションを起こしてしまい、普通より早く燃料に火がついてしまい 爆発してしまいます。これも運動エネルギーをロスさせる原因です。
ノッキング音は出ないので、燃焼室の内部は見られませんが、 プラグのくすぶり方で確認できます。
燃料が濃い場合、オイルが燃焼室に入ってくる場合(オイル下がり)によく起こる現象ですが、 ひどくなってしまいエンジンを切ってもエンジンが回る症状が出て初めて気が付くことが多い 現象です。こういう時は、エアクリーナーなど吸気系を点検したり、上記サーモスタットを交換したり あるいは、デポジットの原因になる様々な原因を突き止めて対応することが必要でしょう。

無駄な冷却は普通「過冷却」と呼ばれる症状で、サーモスタットの弁の固着・損傷による 場合(開きっぱなしで水温が下がりすぎる)が多くみられます。
また、エアコン自体に不良がない場合で効きが悪い場合にたまにヒーターコックが錆びたりして 閉じられなくなっていて、ヒーターの温風をエアコンで冷やすといった状態になっていることもあります。

何故こういったように温度の問題が出るかと言いますと、
エンジンはある一定の温度で最も効率よく作動するように設計されているからです。
つまり、エンジン各部はオイルやクーラントの冷却によって制御されて いるからです。
規定量として、ラジエターのクーラントの量が段々少なくなり、オイルの量も少なくなってきているのは この「燃料のロスではあるけれど、効果的な冷却に関っている温度管理をするパーツ] に1回毎に奪われる熱量を少なくする ということなのですが、
少なくなった分、余計にそれらに負担がかかるようになってきました。

高性能化や安全性の問題から自動車はどんどん「制御」装置が増えてました。 その制御装置自体も最初は正常に作動するのですが、徐々に劣化しますし、 耐久性の限界があります。それらは改良され良くなってきていますが、
オイルやクーラントはエンジン部の温度を最初に伝える(冷却・保温する)ところですので、 温度管理という面からのトラブルの原因にならないように、最初から早めの交換が 意図されています。
効果的に冷却ロスが減るようにエンジンは改良されてきましたが、ユーザーが出来る事は 段々負担が多くなってゆく その負担を軽くするということになります。



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