燃費を考えてみました−その2

4.排気ガスにはどれくらい熱量があるか

仕事量は取り出せた化学反応の差し引き計算である程度表せます。
ロス分が一番多いのは排気ガスなどの温度が随分高い温度のためです。 ですから、

 仕事をした(利用できた)熱量=燃えたガソリンの熱量−排気ガスの熱量

 とすることもできます。
ですから燃費は「燃やす方を多くする」「排気ガスの温度を下げる」
によって変わってきますが、手っ取り早いのは 先に揚げた「燃やす方を多くする」という事の方が簡単(?)だと言うことは わかります。
爆発したガスの温度は最高約2500度Cほど・圧力50kg/cm2ですが、 まずプラグの電極の金属で冷やされ 同時にシリンダーや燃焼室側面でも冷やされます。
炎は冷やされている部分で弱くなりますが、温度差はそれでも2000度Cほどあります。 (プラグ辺りでは温度差1700度Cぐらい=プラグの外側電極温度800度Cとして) このガスが膨張し、膨張する力でピストンを押し下げますと、ガスの温度は 下がります。圧力が下がると温度は下がるからです。つまりこれが仕事をする熱量と言えます。

 (エアコンのガスは液体−気体の気化熱を利用してますが、燃焼サイクルの反対をすることで 外気の空気の熱量を奪い、冷やすわけになります。)
燃料が完全燃焼量より多いと、発熱量も多くなり、膨張する圧力も増加します。
その結果ピストンを押す力も強く、素早くなるので回転数は上がり、加速するわけです。
排出されるガスにはまだ多くのエネルギー(高温と言うこと)が残っているわけですが、残念ながら これを有効に使う方法は下記暖機や暖房ぐらいしか出来ない状態です。

 夏で30度前後、冬で15度前後として排気ガスの温度を考えればまだまだ熱利用できそうなのですが、 実際はしません。
何故かというと、おわかりのように利用するためのコストが、捨てる以上にかかってしまうからなのです。
自動車のように加速・減速を頻繁に行う熱機関には、利用しにくいといった事も関連します。
排気ガスを利用するとなるとそれ自体が抵抗になって燃焼を妨げますし、移動するわけですから重い装置も かえって燃費を悪化させます。

太陽熱温水器のように動かない物であれば、排気ガスは使えるはずなのですが、
自動車では、温水をためて走る方が燃費が悪くなり、逆効果です。
ただし、ワゴン車に湯沸かしみたいな装置はありますが、これはクーラントの熱から取ってます。

こういった排気ガスの熱利用の方法を考えてみると面白いのですが、
熱は冷たい物を暖める方向しか進まないのでやっかいですね。

5.各部の暖機にどれくらい熱が必要か

自動車がその性能を発揮するためにはある程度の暖機や走行が必要となります。
理由はいたって簡単で、「そういった温度で性能を出すように作られている」からです。
と言うことで暖機などが必要な(意図された温度を持っている)パーツを見てみましょう。
 
 

6.空気抵抗とは何か

走行スピードが増すにつれて、風(空気)の抵抗は増加することは、 体験的にわかります。特にバイクなどに乗れば風の強さで今何キロぐらいか分かるほど、 スピードに関係します。

 流れ星のようなスピードでは、空気との摩擦によって表面の摩擦熱が5−600度以上になります。 そのため、燃えて輝くといった現象が見られるのですが、自動車の場合早くて300km/h。 この場合、空気との摩擦より、空気を押しのけるのに必要な力、つまり空気の圧力だけを 考えた方が良いみたいです。 空気は人が走るぐらいの速度ではほとんど問題になりません(陸上では記録に絡むため風速が表示されますが)。
ちなみに、飛行機などの翼は効力係数は0.1ぐらい。
自動車では0.3−0.55ぐらいの値になっています。

 空気抵抗の計算の仕方は

 空気抵抗=効力係数(いわゆるCD値)*2/1*空気の密度*前面投影面積*車速の2乗

 という式で表されます。
ここで、ユーザーの意志で変わるのは車速=スピードだけです。

 例えば1500ccクラスの定速走行でも60km/hと120km/hでは速度は2倍ですが、 燃費は70−60%ほどに下がります。さらにスピードを上げると50−30%になり、最後は 風圧でそれ以上スピードが出せなくなります。
ラジエターなど取り込まなければならない部分でも小さくしないと、空気抵抗に なってしまうので、(放熱と抵抗のどちらを優先させるかは設計者とデザインと車種によって 変化してきます)出来るだけ小さくなってきました。フロントガラスの形状も最高速度の辺りでは かなりの影響があります。
この、空気の圧力を逆手に取った走り方として「スリップストリーム」と呼ばれる走り方があります。 原理としては、空気抵抗をなくすように前を走行する車両にぴったりとくっついて、空気の圧力から 身を守るような走り方になるわけです。
実際どれぐらい燃費に貢献するかはテストしたことがありませんので、不確かなのですが 高速走行ほど効果が現れることは上記計算式から間違いないようです。
実験としては下敷きのなどのようなものを扇風機の前に垂直に置いてその後ろに、風船か何か軽い ものを置けば分かります。風船単体ではすぐ飛ばされてしまいますが、前についたてを置くことで 飛ばされにくくなるか、風の乱流によって飛ばされず、逆についたてに近づく現象で分かります。
道路に落ちた新聞や紙がその上を走る自動車の後ろをついてゆく事も、日常で見られる現象です。
風速30m/sの台風の風圧は108km/hの速度の自動車が受ける風圧と等しくなりますから、 この圧力がいかに大きいか分かります。
燃費をよくしたいなら、スピードも控えめにした方がいいわけなんですが、 前の空いた高速道路では無理ですよね。

7.その他

1.季節による燃費の差
外気温度によって燃費が変化することは、体験的に知られています。
エンジンの設計上、外気温は通常ラボテストで一般的な20度C−25度Cに 設定されていると思われますので、実際の走行とのズレが生じてきます。

 そのズレによる燃費への影響は、機械の設定された温度までの暖機時間の差として現れる場合が 1番大きく出るものと思われます。
つまり、始動時は設定温度以下になってますので、

 一定時間における燃費=通常運転に必要な燃料+暖機までの過剰燃料差分

 という形で現れます。
ですから、自動車が暖機されて各部が最適な条件になるまでの燃料の差分は、 外気温によって左右されることになります。
よく聞かれるように、「夏が良い」「夏でも冬でも変わらない」などという事は、 暖機時間が、1回の走行時間にどれぐらい影響するかにもよります。( エンジンその他正常に機能している場合を基本とします。)
例えば、通勤に1時間要する人と15分必要とする人では、暖機時間を夏5分冬10分とすると、
その影響は満タンで6時間とすれば下記のようになります。
ただし暖機は通常の1.2倍の燃料を使用するとします。
暖機時間=5分 60分間走行 600分での影響=50分間暖機+550分間通常 燃料増加率={1.2*50+1*550}/600=1.0166
15分間走行 600分での影響=200分間暖機+400分間通常 燃料増加率={1.2*200+1*400}/600=1.0666
暖機時間=10分 60分間走行 600分での影響=100分間暖機+500分間通常 燃料増加率={1.2*100+1*500}/600=1.0333
15分間走行 600分での影響=400分間暖機+200分間通常 燃料増加率={1.2*400+1*200}/600=1.1333

実際は、同じ季節でも外気温が変化していますし、
暖機状態に必要な時間もそれぞれの自動車や乗り手によって異なるでしょう。
また、アイドルアップによる燃料の”濃さ”も外気温で変化しますし、 暖機中に加速したり、エアコンやヒーターも”ON”しますので表のようには現れないでしょうが、 参考までに。
 
 

2.エアコンやヒーターによる燃費の差
エアコンについてはその冷却能力がエネルギーとして出されてますので、メーカーに資料があると思います。 コンプレッサーの回転数による使用馬力を引けば大体推測できることでしょう。
これは、コンプレッサーによって決まっていますが、エアコンガス容量や配管途中での温度上昇でのロスを 計算に入れなければなりませんし、エアコンON時のアイドルアップも関係してきます。
普通は単純に1km/Lほどといわれています。
ただし、外気温や室内温度にも影響されます。 ヒーターも同様に、考えられるのですが、エンジン温度がサーモスタットで制御されてますので、 エアコンほど影響がありません。
それでも、燃料をどれぐらい「濃い=リッチな状態」にするかは、オートチョークにより制御されていますので、 オートチョークの仕組みがその燃費に関係してきます。

 普通ラジエターのサーモスタットと同様に、水温で作動する構造が一般的です。
エンジンの温度はラジエター側のサーモスタットが閉じていますので、 燃焼室まわりのクーラントだけを暖めます。その暖まったクーラントをバイパスしてオートチョークへ伝えます。
バイパスホースなどで運ばれた暖まったクーラントにより、オートチョークのワックスが膨張し、アイドリングを下げるという 構造ですから、 ラジエター側のサーモスタットが密閉できないと、速やかな暖機が出来ず、燃料の制御がうまくできなくなるため勝手にアイドルアップしたり、燃焼室まわりの温度が 下がってうまく爆発できなかったり(失火やひどい場合はエンスト)します。
オーバークール状態ではヒーター機能もうまく働きません。
これは走行してみると分かるのですが、アイドリングでは水温計はあがっているのに、 走行して強制冷却されると今までと違って下がりだしたりする事でわかります。
特に冬にヒーターが効かない事で体験されます。

 逆に、閉じたままや開きが悪いとオーバーヒート気味になり、ノッキングを起こしたり、エンジンを壊してしまう恐れもあります。
こちらの場合は、水温計が異常に上がりますのでわかると思います。 ただしわかった場合は即修理ですね。
 
 

3.積載物の影響
これは、説明しなくとも経験上おわかりの事と思われます。
同じ自動車でなら、乗車人数が多いほどまた、重たい荷物を積んだ場合の方が燃費が悪くなると言うことです。
エンジンやその他の性能が格段に進化して、燃焼効率も良くなってきましたが、
その自動車全体を丸ごと加速しなければならない構造ですから
軽い構造をとるためにも、日夜研究されています。
ですから、燃費を良くしたいと思われている人は、まず「不必要な荷物を積まない」ということで、 燃費向上をされるのも1つの方法です。

 車重が少しでも減らせれば、加速フィーリング、レスポンスも変わりますので燃費にも影響が出てきます。
車両の重量にどのように比例しているかは正確にはわかりませんが(車重が2倍になれば、燃費が半分になるという形で 正確に出てくるかどうかはまた別)
サーキットを走るレーシングカーの軽量化を考えれば、相当考慮が必要と思われます。

4.タイヤやホイールによる影響
タイヤとホイールについてはよく報告されているのですが、これも軽量化が燃費に影響が出るだろう事は 考えられます。
以前、扁平率82のタイヤを70に変えて最高速と燃費を比較したことがありました。(1995年ぐらいの昔の話しで恐縮です)
結果は、どちらとも”82”の方が良かった(正確には燃費が10%近く悪くなり、最高速も10km/h下がった)という結果でした。
アルミホイールに交換していれば、軽量化によって、同じぐらいの燃費や速度になっていたかもしれませんが、 「タイヤの重量が多少増えた」+「グリップが良くなって摩擦抵抗が多くなった」事が悪化の理由としてあげられます。

 ただし、数値的な正確さは保証できませんし、走行条件その他もありますので参考までと言うことです。
また、それでもグリップ力の向上や乗り心地に関する面では「良くなった」ように記憶しています。
普段はそんな走行はしませんので、いつも使う場面での「気持ちよさ」の方が大切かもしれません。

 タイヤ空気圧に関しての燃費向上効果については、テスト自体微妙すぎて出来ませんが、
経済的な面からは「規定値を大きく外れた空気圧」は好ましくないことが言われています。
乗り心地やタイヤの消耗の仕方にもある程度影響がありますが、詳しいデータを持っていません。

「新品に入れ替えたタイヤの空気は何故減りやすいのか」と言うことをメーカーさんに問い合わせたことがありましたので参考までに。 などすべて「空気の漏れ」のようです。
普通の条件では、タイヤの膨張によって空気圧が 下がるほど変形しないそうですが
空気は分子が小さいので、 タイヤのゴムやそれ以外の金属部の隙間などから、
つまりどこからでも漏れる可能性があるようです。(自然に空気が抜けると言うこと)

新品の場合に早く空気圧が下がる場合は
リムとタイヤの接地面が なじんでないため 隙間が広く、漏れる量が多くなることもあると聞いていますが
約6ヶ月から1年ぐらいで なじむようになり(密閉性が良くなり) 漏れが少なくなるみたいです。
もちろん、自然な漏れ(ゴムの隙間を通っての空気の漏れ)も同時に起こっています。


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