オイル中の水分はどこへ消えるのか

ラジエターからの水の混入もなく、どこからも水が入る事は無いように思われるエンジンオイルですが、
実は「内燃機関」と言うことで、燃焼した燃料からHOを生成していることがわかります。
三元触媒や排気ガス再循環(EGR)によってもHOは増加します。
EGRは比熱が大きいCOを混合気に再び取り入れることで
燃焼時の温度を下げ、NOxを減らそうと言う装置ですが、生憎、HO、その他も取り入れられてしまいます。

また、大気中には湿度として表される湿気を含み、混合気となる際も含まれていることになります。
それらの水分はガス(未燃焼ガス成分=HC、CO、燃焼ガス成分=N、CO、HO、その他NOx、SOxなど)として
ピストンリングでは密閉出来なかったピストンとシリンダーの隙間からクランクケースへ
吹き抜ける(ブローバイする)ことで、オイルと接触する事になります。

通常、オイルに含まれる水分は0.01%以上あるわけです。
けれど、オイル劣化の目安となる水分量は3%程度と見積もられているわけですから、
相当な水分量としてオイル中に溜まることになります。
4L入るのオイルタンク中、最大120ccも水分を含むわけですから。

この水分の混入は大気中から攪拌によって含まれる場合も起こりますが、
どう考えても上記ブローバイガス成分として混入したと考える方が適当と思われます。
大気中・燃料中の水分が燃料タンクに溜まるという現象のほうは「水抜き剤」と言う商品から
すでにご存じのことと思われます。

「水と油」のたとえのように、燃料と多少異なり、通常オイルそのものに水分が入っても普通はどちらの境界層も保たれ、
分離するのですが、
ある程度熱が加わりますと、オイル分は細かくなり、混濁しやすくなって少し乳白色化します。
エンジンオイルの場合、防錆剤・防乳化剤・清浄剤と言う、いわば「石けん」のような作用をする添加剤が
含まれていますので、水分を取り込んでしまう形となり、オイル中の水分量が増えると言うことになります。
ですから水分量が多くなってゆきますと、「僅かな濁り」と言う程度から「白濁乳化」になってしまうわけです。

ただ、エンジンオイルの性格上、使用中は燃焼による熱を絶えず受けて、高温化しておりますので、
あまりにも多くの水分を含むことは出来ません。
天ぷら油のように高温ではありませんので、水分を入れると、はじけるというような事は無いと思いますが、
高温になったオイル中の水分は蒸発という形を取ることになると思われます。
(相当量水分が入っている場合でしたらすでに相当乳化してますでしょうが・・・)
さて、蒸発した水分はどこへ行くのでしょう。
少量の水蒸気の場合であれば、
クランクケース内の冷えた底に溜まるか、
比較的低温になりやすいタペットカバー・オイルレベルゲージ穴などに結露するか
と言う形を取ることが多いようです。

そのため、結露しやすい部分に乳白色の塊が付くことになります。
オイルフィラー(キャップ)の裏やディップスティックに付く場合は、そういう現象と思われます。
水蒸気が冷たい物に触れますと水滴となり、そこにオイル滴がかかりますと(逆でも可)、
エマルジョンのような状態になるわけです。
ただ、すべての自動車でこういった乳白色状の塊が付いているとも経験上思われません。

この場合、オイル中の水分が多いための原因で、そのような現象が起こっているのか、
単にクランク室中の水蒸気が結露しやすい、冷却されやすい部分に当たって起こる、エンジン構造のためそうなのか、
あるいは、オイル中の添加剤成分が乳化を促す原因なのかは
オイルの成分分析を行いませんと正確には判断できない事もあります。
新油に変えたばかりでも、乳化物が出来やすいエンジンも知っているからです。
添加剤成分としてはカルシウム系添加剤が入っている場合、その飛沫と結露した水分が乳白色化しやすく、
特に目立つと言うようなことも起こりやすいようです。
また、マグネシウム系添加剤成分も水分がありますと白い沈殿物を生成します。

今のところ、特に寒い時期は水蒸気の結露も起こりやすいと思われますので、注意して各自動車のオイルフィラーを
観察していますが、オイルの新しさ・古さでは判断できず、後から入れる添加剤の使用・未使用についても
発生はバラバラと言ったところです。
特にアイドリングが多い運転をするユーザーさんに起こるというわけでもなく、
エンジンの走行距離などからも判断できない状態です。
発生率はどう高く見積もっても10%も発生しているとは思われませんし、
燃焼で生まれた水分の行方は、今後、オイル成分試験場で結果を見るしかないようです。
データはH4式HC33ローレルで、5000km走行後に調べてもらうつもりです。
それまで、あれこれ考えていましょう。

工事中



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