オイルの清浄分散作用−その3

オイルの汚れから故障を診断出来るか

いつも、特定の期間・距離を走行して、オイル交換している場合、オイルがいつも以上に汚れていると言った事を感じることがあります。
「エンジンの状態がおかしいように感じる」と指摘された例から、オイルの汚れと症状の関係を見て行きたいと思います。

1.オイルが汚れる理由
二流化モリブデンのように、添加剤の色で最初から黒くなる場合を除き、
一般的にオイルは着色料の色によって、新油はブラウン系かグリーン系の透明な色をしています。
特殊な着色料以外、エンジンオイル用としての着色剤は
添加剤成分に反応することもなく、オイルにとっては劣化成分として扱うほどのものではありませんので
ここでは除外できます。

オイルが汚れる理由は大きく3つ考えられます。

1、オイル中の添加剤によるもの
2、オイル自体の炭化(酸化)などによるもの
3、清浄分散作用によって、ススなどの汚れを落とすことによるもの(外部から混入した異物を含む)
(酸化についてはオイルの酸化防止剤についてと酸化劣化因子についてを参照)
A、オイルの変色
未使用での変色
オイル中の添加剤は、使用しない場合でも、空気中の酸素とか水分を含みますと劣化して、オイルと分離してしまう事があります。
劣化による分離などは保管の悪い状態のオイルなどで確認できる事があります。
特に、湿気を含む場合は、オイルに透明度がなくなって、「曇り」が出ます。
オイルと水を攪拌させますと白くなります、ですからオーバーヒートした時に、
整備士がオイルの状態を見て、エンジンを冷却しているクーラントが混じっていないかを
確認するわけです。白くなっていたらガスケットに亀裂が出来ているか、シリンダーブロックの繋ぎ目が
変形しているか、あるいはブロックに亀裂や穴が空いていることが考えられます。
ただし、オイル中・ブローバイガス中の水分が水蒸気となり、
オイルキャップの裏側、タペットカバーの裏側、ディップスティック(=オイルレベルゲージ)などに結露して
白く乳化する事があります。ある程度はオイル自体吸湿性のある添加剤を使用していることもあり
起こりえる現象ですが、あまりにもひどい場合は要注意かもしれません。
参照:オイル中の水分はどこへ消えるのか
場合によっては、オイル缶の底に、固体の微粒子として沈殿する場合があります。
沈殿成分は、基本的にはオイルに含まれる清浄分散剤か酸化防止剤と思われます。
そういう沈殿物が出た場合は、メーカーに問い合わせられると良いでしょう。
たぶんに、そういった成分は増量されていますので、沈殿物を使用しなければ、上澄みオイルは
普通に使用できるものと思われます。
この場合、オイルの粘度が変化していないか(どろどろとゲル化していないか)確かめるだけで良いように思えます。
また、粘度の高いオイルは一般的に外気温が下がってきますと、
湿気とは別の現象で「曇り」が出ることがあります。
未使用でも油の温度を下げて行きますと、オイル中のロウ分が白くなって曇りが出る事がありますが、
(ろうそくが固体の時は白く、液体になるくらいの温度では透明なのと同じ現象)
こういった傾向は、どうも粘度の高いオイルに見受けられるようです。

また成分劣化とほぼ関係ない「変色」と言う現象もあります。
オイルの色が僅かに「濃く」なる現象です。
こちらは、同じ製品でも製造工程の僅かな違いのためなのか、違う製造ロットと比較すると、
時々おきていることがあるようですが、もちろん性能劣化ではありません。
容器が透明なボトルの場合、光に当たる場所に保管すると、変色する場合もあります。
「色」だけで、性能劣化を判断する事は難しく、
それぞれのオイルがそれぞれの「色合い」を付けておりますので、
透明度・沈殿物の有無以外でオイルの状態を決めるのは至難の業と言えそうです。

オイル中の添加剤が劣化するのは、オイル以外の成分を取り込むことか、
または添加剤自体の成分劣化になりますので、
未使用のオイルの場合は湿気と缶自体の呼吸に気を付ければいいことになります。
保管中の場合は、酸化劣化を促進させる要素=湿気・酸素・温度などに気を付けていれば
ほとんどの場合、数年間経っていても使用可能と言われていますが、
オイルのバージョンアップという進化がありますので、
長期保存はあまりお薦めできることとは言い難い事です。

使用中の変色
オイル中のベースオイルや添加剤が劣化すると、
どういった変色をするかと言うことは、各メーカで調べられているのですが、
それぞれの成分の酸化による変色があげられるようです。
未使用のオイルとの違いは、
「酸素下における熱による酸化反応」と考えられ、一部、成分により黒とかグレーへ変色する場合もあるようですが、
異物が混じらない状態では、ブラウン系へ変色するようです。

酸素や金属粉、あるいは水分や塩酸・希硫酸・硫酸・硝酸など、考えられる劣化促進成分をオイルに混入して
劣化度を確かめたり、油温をあげたりして、強制的に酸化劣化を促しているわけですが
その変色度がある程度オイル劣化と比例関係にあると言われています。
余程ひどい酸化でなければ、黒色化(炭化)するようなこともないのですが、いわゆる「茶色」になることで、
一般的には劣化を判断できることになります。
また、燃料の不完全燃焼は炭素が取り残されて燃えませんので、ススとなり、
オイル中に溶け込みますので、この場合は黒色系になって行きます。
実際のオイルでは
黒系色は燃焼によるススを主体とした汚れで、ブラウン系はオイルの酸化を中心とする汚れであると言えるでしょう。

透明度はかなり低くなりますので、ティッシュペーパーなどでオイルを拭きますとその汚れ具合がわかるのですが、
上記のようなラボテストでの変色は新車のエンジンで初回のオイルの変色となります。
ですから、エンジン内部が汚れた状態ですと、新油を入れたすぐ後でも汚れてしまうことがあるため、
変色での劣化の判断が難しくなります。
清浄分散性が前に使用したオイルより高性能であった場合、取り残した汚れや、
オイル交換をしても僅かに残っている廃油自体の汚れをオイルに拡散しますので、すぐ汚れてしまう事があります。
「オイルが汚れた状態=オイルの劣化」と言いがたい理由は、こういう事からも言えます。
大ざっぱに色の状態で判断しますと
ディーゼルエンジンの場合、ススは、つきものですから、ほとんどが黒系になり、
ガソリンエンジンの場合はブラウン系になることが普通といえます。
ですから、ガソリン車の場合は、オイルが黒い状態になれば、劣化の状態が今までと異なっていると言うことになりますので、
何らかの故障を推定できますが、ディーゼル車の場合は、劣化状態が色では判断しにくいと言えそうです。
 

B、変色の仕方から、異常を見つける
いつもの状態と異なるようなオイルの状態を見つけた場合、
どこかにトラブルが生じているのでは?と判断することで、症状を早期発見できることがあります。

オイルの変色の仕方でエンジンの状態を判断するのは難しいのですが
日頃から、走行距離を決めてオイル交換を行っていますと、
その差が分かりやすくなります。ですからオイル交換前後には、オイルの状態を
ある程度知っておいた方が良いように思えます。

ただし、オイルのグレードを上げた場合とか、添加剤を使用した場合は、
今まで落とせなかったエンジン内部のスラッジを落とす場合もあります。
この場合で特に、ひどく汚れ方が早くなってしまった場合は、
最初だけ、通常通りの交換時期にあわせて交換されるか、
エンジンの調子から様子を見た方が良い場合もあります。
調べるのはオイルのレベルゲージに付着したオイルの状態を見る事でいいと思います。
ただし、エンジンの冷えた状態で2−3回くらいチェックされた方が良いでしょう。
密閉性が良い場合、オイル量が適切な位置に来ていない場合もあるからです。
レベルゲージ自体は金属の場合と、樹脂製の場合がありますが、
出来ればスラッジなどをアルコールなどで拭いて綺麗にしておいた方が比較しやすくなります。
オイルが良い状態であれば、この場所はそれほど汚れが落ちないほどひどいスラッジ状態になっていませんので
金属製の場合、腐食の痕跡があったり、オイルの汚れがチェックレベルの遙か上まで来ていましたら
要注意かもしれません。
オイルが熱いときは適度の粘度に感じられたものでも、いざ冬の朝一番にその粘度を比較しますと、
相当硬い状態になっていることがわかります。
同じオイルがあれば、比較してみれば相当粘度が上がっている(硬くなっている)事がわかります。
こういった増粘傾向は、酸化劣化による事と、ススの混入によるわけです。
ベースオイルの精製度が良いほど、また、高温での酸化防止剤の性能が良いほど、
また、ススなどの分散性能を高めた清浄分散剤の性能が良いほど、
急激な増粘は起こりにくくなります。
オイルがいつもと比較して黒くなる症状から推測されるトラブル:
通常オイル汚れがブラウン系のガソリン車で、オイルが黒ずんでしまう理由は2つ考えられます。
1つはエンジンがヒート気味で油温が上昇気味にある場合、
もう一つは何らかの理由で燃料が不完全燃焼を起こし、ススが混じってしまうと言う場合です。
オイルが黒くなる理由はほぼこの理由が多く、
その原因を見つける必要があります。
まず、冷却水の状態ですが、冷却不足になっている可能性があります。
この場合はクーラントの成分も熱劣化を受けていることが多く、
クーラントの変色に現れていることでより判断が適切になると思われます。
車検毎に交換されるクーラントの、リザーブタンクを覗いて見て、あまりにも赤錆が溜まっていたり、
白い沈殿物が多いようでしたら、一度整備士にその状態を判断してもらう事も大切と思われます。
リザーブタンクからクーラントが溢れているような汚れがある場合は、
クーラントの入れすぎを除き、余り起こりませんから、
何らかの理由でエンジンがヒート気味になっている可能性があります。
よくある症例としては、ラジエターやヒーターのコアで目詰まりが起きて、冷却性能が落ちている場合が
多いようです。

で、こういう状態になってゆく原因は複合的な要素になり、
いわば、
 
 

工事中



工事中
(その2)へ
(その1)へ
元へ戻る


ホームページへ inserted by FC2 system