オイルの消泡剤

オイルに気泡が混入しますと、オイルの寿命低下や潤滑不良、作動の不具合が起こり、
摩擦増加、油温上昇などを伴い、ひいてはエンジンの故障につながります。
そのため、オイルには消泡剤として、泡立ちを押さえるため使用される添加剤が含まれています。
潤滑油に不溶で、かつ表面張力が小さく泡沫に対し拡張性のある性質が要求されますので、
シリコーン油や脂肪酸・リン酸エステルなどが使用されています。
シリコーン油は特によく使用され、1−100ppmの添加量で優れた抑泡作用をあらわし、
基油の特性を損なわないなどの点で優れているとされています。
(参照:信越化学工業のHP
 
気泡による問題点

普通、「消泡」と言いますと、オイルの表面に浮かぶ「あぶく」を消す事ですが、
泡の膜にくっつき、泡を形成する物質を泡から押しのけることにより、泡を消すことか、
あるいは、その分子間に割り込んで、分子同士が結合する力を弱めることで、
泡を作る作用を抑制するかによって泡の形成を阻害することになります。

溶媒中の泡に様々な不純物がまとわりつく現象で、不必要な成分を分離するという製品も
あったと記憶しています。泡の表面はまた違った側面もあるようです。
ただしオイル中にすでに分散している「気泡」は除去する事が出来ません。
(泡の発生を抑制することで油中の気泡を抑えることも可能なわけですが)
表面に浮かぶ泡も良くないのですが、油中気泡を調べますと、消泡剤が含まれていても、
エンジンオイルの中では9%、無段変速機の場合は最高で20%も含まれることがあります。

気泡が油中にありますと、潤滑部への給油不良による摩耗や焼き付き、
異常圧縮による油圧機器の効率低下やシリンダーの作動不良など、
また、動力損失やオイルによる冷却能力(熱伝達係数)の低下がみられます。
正確な油圧を必要とするバルブにかかる圧力が変化したりする事も起こります。

作動油としての油温上昇は、気泡のある・なしで変化することがわかっており、
気泡の存在は、機器において、油温の上昇という熱エネルギー増加を伴うので、
エネルギーを損失させていることがわかります。
オイルの内部摩擦による発熱と同様に考えていただければ、分かりやすいかも知れません。
 

気泡があることで問題となる現象は、何もブレーキなどの「ベーパロック」にとどまらず、
(ブレーキオイルに空気などの気泡があると、ブレーキを踏んでもペダルが沈むだけで
自動車が止まらない現象。エアーの混入の場合やブレーキオイルの沸騰による気泡が
原因。)キャビテーション気泡による金属摩耗もあります。
機器の潤滑を劣化させる要因となるか、エネルギー損失になるかどちらにせよ、
気泡が生じやすい自動車エンジンのオイルにとっては気泡は無いに越したことはありません。
エンジンオイルやATFの劣化状態を調べるとき、「泡立ち易さ」も一つの目安となっていいと思います。
オイルの成分分析をすると、ほとんどのオイルに「Si」ケイ素が出てきますが、
未使用のオイルである場合は、これは添加剤(消泡剤)としてのシリコーン系成分によるものと思われます。
一般的には消泡剤として直鎖系のシリコーンオイル(ポリジメチルシリコーンオイル)が使用されているからです。
使用済みのオイルの場合に「Si」がある場合は、これに加え、
砂に含まれる成分中のケイ素がエアフィルターをすり抜けて燃焼室へ入り、オイルに取り込まれたものか、
まれに冷却水がオイル中に入り出てきてしまった成分であったりします。
また、オイル添加剤として後から入た成分中に含まれていることもあります。
ケイ素は構造的に、炭素と入れ替わって炭化水素系と似たような化合物を作りますので、
直鎖型と分岐型ができ、高性能消泡剤として分岐型が今後ともオイルに広がって行くものと思われます。

直鎖型
 
分岐型

工事中



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