オイルに含まれている添加剤は、「その経済性から」非常に僅かしか入れられず、 しかも値段に左右された性能の添加剤が 添加されブレンドされています。
高価なタイプが入れられるとしても、多機能性が追求され、総額としての 添加剤代はしぼられることになります。
値段が安い場合は高価な高効率タイプの添加剤は入れられず、 また、ベースオイルとしても不純物の多い、やや品質の悪いものを使用せざるを得ません。
エンジンオイルの品質の問題点はベースオイルの質と添加剤の質によりますので、 ある程度、その価格という尺度に従って製品の優劣が決まるのも いたしかたありません。そこで、「後で入れる添加剤」として、 いわば経済性より「質」を重視した製品が販売される「隙間」が出てきます。
1.効果として
高品質(と思われる)ベースオイル+高効率添加剤
を、添加することによって、添加剤のパッケージに書いてあるような 効果が「期待」出来ます。
こういう差が出やすいのは、「低品質オイル+添加剤」で分かり易く、 「高品質オイル+添加剤」では出にくいことがすでにお判りの事とと思われます。
例えば鉱物油の例でベースオイルを比較すればになるわけですが、低温流動性がいいナフテン系は冷凍機器のオイルにはいいでしょうが、 エンジンオイルには不適当です。 反面、パラフィン系はいい品質の原油も不足しているため、「高価」となっています。
性状 ナフテン系油 パラフィン系油 粘度、SUS、100度F(cSt)、=38.9度C 100、=20.53 100、=20.53 粘度指数 15 100 流動点、度C −50 0 引火点、度C 340 390 比重、API重度 24.4 32.7 色(ASTM) 3/2 1/2 少なくとも、最低限で入れられている添加剤の量を増やすことで、 高濃度添加剤入りオイルが出来るわけですから、(デメリットは後ほど) オイルの性能向上は必然かも知れません。
これらについては、すでにお判りでしょうから、次の項目から始めたいと思います。
2.故障診断としての利用方法
添加剤の性能として、「雑音が減る」と言う効果が全般で、理由として「極圧性が上がる」「清浄分散効果が高い」 「密閉性改善(ポリマー油膜・化学反応膜・金属膜など)」があげられます。 そして、下記のような判断がしやすくなります。
ただし、効果があるかどうかは、改善できるレベルかどうかや、添加剤の性能の 差の場合もありますので、出来るだけ優秀な製品を選ぶ必要があります。
効果 使用中・使用後 よくならない場合 エンジン音が静かになる 異音が低下すればエンジン側の問題 変化がなければ他の故障(劣化・交換時期)として診断。音源が確かめやすくなるはず。 カム・タペット音が下がる 低下すればエンジン側(特にスラッジ・ワニスなど)の問題 変化がなければ摩耗が進行(または、完全に密閉)しすぎ、またはバルブシートの異常として診断、ただし、油圧式 摩擦が減る 加速など改善されればエンジン側の問題 改善がなければ点火系、燃料側の問題の場合が多い ATの場合シフト不良やフィーリングなど改善 ATF劣化判断、ラインやバルブの詰まり・潤滑改善による。 冷却系、制御系、AT機構のソフト・ハード側の診断 ミッション・デフの入り・異音改善 騒音低下、入り改善など ギアの欠け・摩耗、オイル粘度不適合、など エンスト・エンジン不調改善 コンプレッション増加する添加剤で改善 相変わらずの場合、吸気・燃料系、点火系、冷却系まれに制御系の診断 エミッション(更に白煙・黒煙も)改善 摩擦抵抗改善や圧縮改善、ピストンリングの清浄、油温低下など 吸気系、点火系、冷却系その他オイルシール部の損傷 パワステの異音改善 騒音低下、摩擦抵抗改善や圧縮改善、 バルブの詰まり・損傷。ポンプの故障、ベルト音。
様々な添加剤で改善されなくて困っていた人が、ある添加剤で簡単に直ってしまった例を 多く知ってますので・・・。
3.リスクマージンとしての利用方法
新車から使用すると、メーカーのテストした摩耗量より少なくなることが多く、 摩耗による耐久性はアップすると思われます。
つまり、エンジン自体の寿命はある程度(添加剤の種類で様々なのですが)伸ばせますので、 乗り換える時期まで、壊れにくくする事は可能と思われます。また、添加剤で「騒音が下がる」結果、異常があれば騒音の元がよく聞こえるようになり、 音質の差が分かり易くなりますので、異常の発見や、 不具合箇所などの特定がしやすく、素早い対応が可能となります。
また、エンジンが静かになれば、オーディオのボリュームを下げても綺麗に聞こえますので、 走行中の突然の異音発生も聞き取り易くなります。
(放送関係のSさんは、「オーディオを高価なものにするより静かになった方が効果的」と、 添加剤使用をしています。) 特に、よい添加剤の場合は顕著です。シビアーコンデションにもオイルの劣化が押さえられ対応できますし、 金属摩耗などの余裕が出ます。
万一のオーバーヒートに際しては、 壊れるまでの耐久時間が長くなり、ピストンの焼き付きまでの時間も伸びるはずですから、 異音や水温上昇に早く気がつけば、最悪の事態を回避できる可能性があります。ただし、
添加剤でよくなった分ハードな使用を強いれば、他の箇所に負担が掛かることは 避けられませんので要注意です。
4.自動車の稼働時間の損失を防げるか
添加剤を使用している部品に対しては壊れにくいと言う結果がデータとしてでます。 しかし、自動車全体の各パーツの耐久性を考えれば、添加剤を使用していない部品は、 変化せず、最初からの耐久性しかありませんので、効果が薄いと思われます。 (当たり前ですね)ただ、添加剤の摩擦抵抗低下などによって、 エンジンの初期始動でクランキングする時間が短縮できれば、 つまり、一発で始動できれば、 必然的に、セルモーターの使用時間やバッテリーの電気使用量が減るし、 充電のための発電の時間も短くて(少なくて)良いわけですから、 結果的に、それらの寿命は伸びると言うような感覚になります。
配達用の自動車のセルモーターは1日数十回も使用しますので、 相当早く壊れてしまいます。
パンの配達用トラックで約2年で壊れるそうです。完全燃焼に近づき、馬力やトルクが増えればアクセル開度も少なくて済み、 燃費が向上するでしょうし、
1日80回以上使用しています。80回*約350日稼働*2年=56000回使用)
これを通勤用自動車の使用回数に換算すれば
(2回−4回*260日勤務=520−1040回) 56000回/1040=約53年分の使用数になりますので、
仕方ないでしょう。 ちなみにダイナモ(オルタネータ)の方は発電時間など(簡単には走行距離)に関係し、
業務用ディーゼルのため耐久性も良くしてあり 約20万キロは持つそうです。
セルの使用時間を2/3にでも出来ればもっと使用回数が伸びることと思われます。
燃焼室でのデポジットも減り、ノッキングしにくくなり(圧縮増加でしやすくなる場合もありますが)、 油温低下は、各部によい結果も出すでしょう。
油温10度C差が出ますと、オイルの寿命を半分にします。もし、油温を下げられれば、それだけ オイルの酸化・劣化が少なくなるということになります。
調子がいい車ですと、愛着も湧くかも知れず、メンテナンスにも積極的になる動機を 生むかも知れませんので、
総合的に考えれば、不意のトラブルを避けられるといった結果を生み易く、 稼働損失が減ると考えられます。
上記の配達用車両などは、故障していなくても定期的に部品交換をします。 ものを運べないことの方が損害として大きくなるからです。
また、走行距離などで定期交換部品になっているタイミングベルトなどは 切れてしまうとエンジン(吸・排気バルブ)を壊したり、最低でもエンジンが止まりますので、 早めのメンテナンスが薦められますが、 これもオイル管理が悪いと、ベルトに負担が掛かりやすくなり、 ベルトの劣化や切れ、コマ飛びがおこりやすくなるからです。 (オイルのにじみがあり、その付着によるコマ飛びなどの場合は別) 添加剤を使用すると、カムシャフトの”まわり”が軽くなり、 スムーズに回転しますし、それによるタイミングベルトなどのストレスも軽減されますので、 同一条件なら、長持ちするだろう事が期待できます。経験的に、添加剤を使用している人の多くは、メンテナンスを「車検任せ」にしない人が、 多いようです。従って余程の(特に、事故や電気系)トラブル以外は、 不意の修理が少ないみたいです。(あらかじめ指定した日を決めて、部品交換などで入庫があります。) 定期点検はリスクマージンをとるという効果がありますが、 添加剤使用でもある程度そういった効果が認められます。
5.その他
添加剤のページへ戻る1.効果が薄い添加剤の使用
有機モリブデン配合のオイルが0w(5w)−20(30、40)あたりに多くなって 来ていますが、そこへ有機モリブデン系添加剤を入れても、性能にどれぐらい差が出るか、 首をひねります。
有機モリブデンも二硫化モリブデンも多ければいいというものではありませんし、
「有機モリブデン」と言っても「ピンからキリまで」の商品性能に「差」がありますので、 (同じグレードのオイル「SJ」でも、100%化学合成油でもピンキリがあるのと同じ) 効果的なタイプどれなのかがわかりません。 明らかに製品比較が出来る商品と言うことで、 より少量で効果的な性能を持っているのは、 現在のところ限られた銘柄の商品だけでしょう。 ですから、100%合成油、特にエステルなどと同様、どういった製品が使用されているか、 明示して欲しいものです(成分やデータ)。また、粘度を高くしてある製品は、せっかくの省エネタイプの柔らかいオイルを硬くしてしまい、 粘度抵抗によって加速性能もレスポンスも燃費も悪くしてしまうことがあります。
添加剤がドロッとしたものは、クリアランスの広いエンジンにはシリンダーの密閉性が向上するため、 効果的かも知れませんが、 日本の自動車で、余程走行距離が多いとか、古いモデルでない限りあまりお勧めできないと言えそうです。また、「オイルに入っている添加剤の量」と「添加剤に含まれる添加剤の量」が加算されると、 オイル中に溶けられなくなって沈殿してしまったり、添加剤同士の相性が悪く反応を起こしたり する事があります。
添加剤としての最良の組み合わせや配合量のバランスはどんなベースオイルを使っているかでも 変わりますので、すべての市販オイルのどれもに最適な「商品としての添加剤」ばかりとは 限らないわけです。
例えば、100%化学合成オイルなどは添加剤が溶けにくく、 そこへ鉱物油ベースの極圧剤や油性改良剤や酸化防止剤入りの 普通の添加剤を入れたとしても、効果はあまり望めません。 ひょっとすると後で入れる添加剤自体の性能が悪かったりする場合もあり得ます。
つまり、低品質の添加剤は高級なオイルには向いていないだろうと思われます。
2.リスクマージンにならない場合
添加剤なしでも、エンジンオイルが漏れていて、 タイミングベルトに付いてしまいベルトのコマ飛びや切断になることが 起こり得ます。
オイルは摩擦を減らし、ベルトを滑らすからですが、ことさら摩擦係数に優れた 添加剤を使うと、痛んでいた(伸びていたその他)タイミングベルトに付着すれば 、 よけい滑りやすくなるわけです。また、故障の原因を調べないで、具合の悪いまま添加剤で済ませようとして使用しますと、 せっかくの添加剤が無駄になってしまいます。
原因をしぼるためなら効果的ですが、バルブステムシールが痛んでいるのに、洗浄性のいい 添加剤を使えば、更にひどくなりますし、 点火系のトラブルなのに、圧縮を高くしてしまう添加剤を使えば、 更にエンジンがかかりにくくなるかもしれません。
壊れているわかっている場合などに、修理なしで添加剤に頼るのは、 無理があることがお判り戴けることでしょう。故障の原因がエンジン近くにあって、添加剤で直せるかどうか判断できない場合は いろんな症例をみてきたベテランの整備士が必要と思われます。
添加剤で直ったからと言って、音の問題や、高額な費用を必要とする 修理を原因不明のまま残しておいてもいいはずはありません。
添加剤の本来の目的は「壊さないようにすること」ですから、 機械の延命効果は期待できても、 不具合が生じた場合、やはり原因を調べて、改善(修理)する事の方が 添加剤であれこれするより安くつくことが多くあります。
(添加剤は修復剤にはならない事の方が多いと言うことです。)添加剤で性能をさらによくすることは出来ても、その添加剤が腐食性を持っていたり、 ラインを詰めてしまったり、公害性があったりでは、何のための 添加剤かわからないことも多く、 どんな製品なのか知らないままで使用すると、問題が出てくることがあります。
フロンやダイオキシンも、NOxとして出てくる排気ガスも 知らなくて「良いものだ」とされていたために、環境問題で騒がれるようになりました。
添加剤の中には、現在もエンジンにとってリスクとなる製品が数多く出回っています。本来は添加剤メーカーが公表するべきなのですが・・。
3.経済性を無視してまで必要かどうか
経済活動がすべてではありませんが、ことさらオイル交換を頻繁に行う人もいらっしゃるようで、
例えば1000kmでオイル交換などという方がおられました。
もし、この方に添加剤を勧めてやはり1000kmで交換を言われれば、まあ交換してしまうかもしれませんが
なんだか、資源の無駄使いのように思えてしまいます。(実際は5000kmになって安心しました。)オイル交換がエンジンの延命化に欠かせないことは事実としても、 添加剤を使用する訳ですから、オイルの延命化を伴わないタイプの添加剤は 本来あっても良いのか考えてしまいます。
極端に多く走行する人が、保守的効果を考えて同条件で同じ走行距離で交換することなら、ある程度 納得が出来ますが、あまりにも少ない距離で交換しなければならないオイルや、 入れても延命に貢献しにくい添加剤は不経済と思えます。現在のオイル中の添加剤も自然に酸化劣化を起こし、長期保管に耐えない場合が多く、 何とかならないかと思っています。また、オイルも添加剤も(燃料も)そこそこ「公害性」「鉱毒性」などの環境破壊を促進します。保管条件が悪いと(特に湿気・空気の出入り)1−2年で性能が劣化してしまう訳ですから、
特に安定性に欠けるオイルや添加剤の場合、在庫処分で売られているような場合、大丈夫かなと思ってしまうこともあります。
本当はメーカー側から保管使用対応期間を明示して欲しいわけですが、
(容器が完全密閉されていないタイプは特にです。)
そういった表示を見たことがありません。
添加剤を使用すると言うことでそれらを加速するような物はあまり好ましいとは言えません。
省エネ・省資源に貢献する効果があり、環境破壊を引き起こしにくい添加剤が高価であっても、 それはそれで納得できますが、それらに逆行する添加剤が安くても、本当に使用しなければならない
か、どうかは、考えてしまうところです。
技術の進歩が先にあり、それを検証するのが後になってしまい、
元に戻すために莫大な費用を掛けるといったことが、最も大きな「不経済」と思われます。
オイルや添加剤もその原因の1つになり得ますので、
本当のところを言わない添加剤を「見分けて使用する事」は本当に難しいのですが、
デメリットになりそうな添加剤は避けて通るに越したことはありません。4.自動車の目的に合わない使用
5.その他