オイルの増粘

オイルの劣化に伴う増粘を体験することは、このHPを読まれる方には、あまりないように思われますが、
ディーゼル車にとっては宿命的な現象で
特に外気温が低くなっている冬期にわかりやすい現象と言えます。
オイルの劣化参照
夏は外気温が20度C以上になっている場合があり、エンジンをかける前でも
油温が高いため、オイルの粘度が柔らかくなっています。
逆に、少し走行すればすぐ油温もあがりますので、増粘しているにもかかわらず
粘度が低下(普通の状態)しているように見えてしまうようです。
増粘しているかどうか調べるには、同じ銘柄の未使用(交換時余ったオイルでも可)のオイル缶を
自動車のトランクなどに置いておくなどして、
基準となる粘度を決める必要があります。
つまりエンジンの中に入っているオイルとほぼ同じ温度にしておけばいいわけです。
温度が低くなるほど、粘度は高くなるわけですから、感覚的な硬さで見る場合は
「冷えているほう」が好都合と言えます。
例えば一晩置いておき、翌朝、
エンジンをかけない状態で双方のオイルの粘り具合を調べるわけです。

ついでに自分でオイル交換する場合はわかりやすいでしょう。
冬は抜きにくいかも知れませんが、極力、エンジンをかけないで、冷えているときに
比較してみてください。
廃油パンに落ちて行くオイルの流れ方と新品のオイルの流れ方を比較することで、
どれだけオイルが増粘したかわかると思います。
燃料によるオイルの希釈がある場合は、粘度低下を起こしていますし、
不溶解成分が増えている場合は、増粘傾向が見られます。

大抵の場合、幾分かは廃油の方が粘り気が強いと思われます。
増粘する程度は、短期間使用の場合は、ほとんどの場合、それほどひどい状態である事は少なく、
どちらかというと、長期・高温使用の自動車に多く見られます。
 

オイルに熱がかかることによって、オイル粘度が増えるテストは
メーカーでも試験されていますが、大抵の場合は150度Cあたりで約200時間程度の時間を
かけた後の、粘度差で比較されます。
その時間を400時間程度(約2倍)にしますとなんと4倍もの粘度増加が起こることが普通にあるそうです。
(ちょうど水飴のようになっていると想像していただければいいと思えます。)
一般的な添加剤成分と比較してベースオイルの寿命は長いわけですが、
この増粘に関しては、熱に強いベースオイルを使用する方法か
オイルクーラーを付けて油温を下げるかと言う対処する方法が有効とされます。
また、同じエンジンでオイルの量を増量させますと、油温が下げられますので、劣化速度がゆっくりになり
増粘を遅くすることが出来ますし、摩擦熱を少なくするような添加剤を加えることでも
その熱劣化が押さえられます。クーラントによる冷却能力を大きくする方法も効果がありそうです。

また、ススを混入しやすいディーゼルエンジンでは、スス粒子間の凝集による増粘も加わりますので
どちらかと言えば、ディーゼル車に多い現象と言えるかも知れません。
ということはスス粒子が十分細かく、
凝集=くっつき合わないならば増粘が押さえられるということになります。
分散剤がこの阻害に効果的です。
とはいえ、小型自家用ディーゼル車で2年2万キロもオイル継ぎ足しで走った車でも、
それらしき傾向が見うけられなかったりしますし、
同様な車でも、オイル継ぎ足し無しで1年未満1万キロ程度で増粘傾向が顕著に見られたりと
結構、発生に差があります。
経験的にいいますと、CFクラスで上質なオイルを使用していれば
普通であれば1年1万キロでは滅多に起こらない現象とみています。
それでも、まれに起こるので調べて行きますと下記のように判断できました。
燃料に含まれる硫黄分の反応で硫化物質になるため、(ディーゼル車の)オイルは
ガソリン車より酸化劣化しやすく、
同時にススの混入もあるわけですから
これらの理由からもディーゼル車のオイル交換時期は
ガソリン車より早めに設定がされている場合が多いようです。
ススによる増粘はススの量に比例的に徐々に増粘するわけでなく、
ある分量以上のススが入ってしまうと、そこから急激に増粘する現象で、
一般的に3w%あたりから、変化が見られます。
3w%以上で急激に増粘するのは鉱物油ベースのオイルに多く、
使用するオイル自体の「純度」によってもこの数値は変化します。
純度が高いオイル(水素化、あるいは合成油)であれば、5w%ぐらいでも大丈夫な場合もあります。
増粘は基本的にはオイルの「耐熱性=酸化安定性」と「高温清浄性」に関係し、「熱劣化」に属するわけです。
また、ベースオイルに不純物が多く入りますと酸化安定性に欠ける傾向が出てきますので、
(スス、スラッジなども当然不純物ですし、添加剤成分の劣化物も同様に不純物扱いとなります。)
上記のようなスス混入に対しても、ベースオイルの精製度向上が不可欠になり、
高精製油の場合は増粘を+1.5〜2w%まで抑える事が出来るわけです。
もちろん合成油を使用することで同様に増粘抑制的に働きます。
エンジンの性能向上に伴い、温度環境が高温化する傾向にありますので、酸化劣化による増粘を防ぐには、
高温用酸化安定剤(フェノール系・アミン系など)の必要性が増えてきたと言われています。
増粘がこういったオイルに混じり合わないススなどで起こる現象は、例えが悪いかも知れませんが、
泥水と水道水の状態を見ればわかりやすいのではないでしょうか。
また、オイル中の揮発性分が粘度の低いものほど低い温度で蒸発して行きますし
低粘度オイルになるほど、オイル消費量が増える傾向にあるため
含まれるススの量は見掛け上 増量したという事になり、増粘が進行することになります。
同時に残されたオイル成分が粘度が高いものになると言うことも出来ます。
逆にガソリンなどの成分が入ったりしますと粘度は下がります(燃料希釈=粘度低下)。
酸化安定性のよい合成油などは、機能を選択して造っているわけですから、不純物が少ないため、
当たり前かも知れません。
このように高品質なベースオイルがロングドレーン化には適していると言われる由縁ですが、
メーカーとしてもわざわざ高価な合成油を使用してもらうためには
経済性も加味し、ロングドレーン性をうたわなければならないわけです。

なお、ディーゼル用部分合成油の一般的な寿命は酸化劣化などに対して1万kmは問題無いのですが
「ススの含有量が増える=増粘」と言う理由から、
小型車副燃焼式では大体走行距離5000kmから6000km程度の交換を
薦めるオイルメーカーが多いようです。
小型直噴式車や大型直噴式ではススの発生量が少ない理由もあり、
さらに交換距離をのばしても問題無いようです。
長距離トラックなどで、メンテナンスが行き届いている車両でテストした結果、
10万キロでもオイル性能を維持できるという合成オイルもすでに開発されています。
また、同様に添加剤などでも、カーボンの混入を押さえ、金属摩耗量、オイル自体の全酸価を
通常の耐久時間(2万キロ程度)を越えて10万キロ以上維持出来るようになってきています。
ロングドレーン化は着実に向上しつつあるようです。

一般ユーザーの場合、ディーゼル車での増粘は、「ススの発生量にかなり左右される現象」と言えそうです。
増粘傾向にある車両については、下記3点を調べて行くと良いかも知れません。
1.オイル消費量は少ない方が好ましい。(粘度・良質オイルの選択)
2.ススの除去能力によって左右される(良質オイル・オイルフィルターの選択・交換)
3.ススの発生要因を減らす。(燃料の良質度。燃焼室・インジェクターの掃除。エアフィルター点検)

で、粘度的にはやはりオイル消費と磨耗の問題から高い方が好ましいと言えます。
15w−Xのオイルでも−15度Cで始動可能ですから
コモンレール方式など油圧制御している直噴式以外でしたら、
ある程度高粘度でも構わないように思えます。

また、オイル中にある分散剤は高性能である方が良く、
高品質なベースオイルを使用した製品に越したことはありません。
けれど経済的な問題から負担がある場合は、出来る限りオイルチェックをし、
消費量を補充される事が大事と思われます。

オイルフィルターの性能は大型ディーゼルエンジンの場合は最初から濾過能力に優れている製品を
使用している場合が多いのですが、自家用小型の場合は、フィルター交換をきちんとする方法で
対応すれば良いと思います。通常はオイル交換2回毎、あるいは2万キロ毎がいいのではないでしょうか。
普通のフィルターの性能は約3ミクロンから5ミクロンぐらいの固体粒子を濾過する能力を持っています。
0.1ミクロン以下の粒子を濾過する性能を持つものもあるようで、
摩耗を考えればその方がいいのでしょうが、濾紙が目詰まりしやすいという事になります。
約1ミクロン程度の粒子を取り除く事が最適と考えられていますが、
熱劣化によるオイル自体の増粘までも解決できるわけではないと考えられています。

同様にエアクリーナーも時々点検交換されれば良いと思います。
ディーゼル車はガソリン車に比べて大気の取り込み量が多くなるわけですから、
早めの交換がお薦めできます。

使用している燃料が良質であるかどうかは、判断が難しいので、ここでは取り上げられません。
ただ、燃料の規格が現在のエンジン性能に適合しているかどうかは
議論のあるところで、徐々に規格も変えられようとする傾向にあるようです。

なお、添加剤の使用ですが、
直接オイルに入れる商品と、燃料に入れる商品に分かれます。
燃料用添加剤の場合、黒煙が少ない場合でも燃焼室内にススなどが溜まっている場合が
ありますし、そういった燃焼室の掃除とインジェクターの清浄も兼ねられる様な製品が
好ましいと思われます。
普通、インジェクタークリーナーなどを使用される場合、出来ればオイル交換に合わせて、
その前に添加した方が良いように思えます。
また、常時使用できる製品もあります。

オイルに添加するタイプの場合、
出来るだけ長期に渡って、オイル劣化を緩和し、高塩基性を保たれる製品が良く、
ススやカーボンの混入を阻止するような製品が最も適していると思われます。
スス混入による摩耗防止を考えられた製品であれば言うことはありません。

工事中



 

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