エステルの優位性

なぜ、エステルが他のオイルに比べて優秀なのか

ふつう、油膜の維持という問題に対しては、”オイル自身の粘度による”、 つまり金属にサンドイッチされたオイルの固さが一番大事にされてきました。 ところが、エンジンの高性能化に伴って、ピストンとシリンダーにも高負荷に 耐えるオイルが要求されるようになってきました。元々ジエステルやポリオール エステルなどはジェットエンジンの潤滑剤として、分子工学技術を元につくられました。 理由はエステルが金属面に吸着するという特性をもっているからで、その特性によって 低い粘度でも(省エネ)、摩擦を大幅に下げる(省資源)からなのです。
 
けれども、エステルベースのオイルには多くの場合有機モリブデン系のFM剤(摩擦調整剤)を入れたりして
製品化するケースがあります。

これは、ベースオイルのこの油性は、いわゆる「極圧剤」的な物ではありませんので
いわゆるチムケンテストなど極圧性に関してはほとんど通常のエンジンオイル並となるからで
境界潤滑域ではやはり摩耗してしまうから積極的に入れられることが多くなります。

このようにリン酸系・硫黄系(有機モリブデンは大まかにはこの系)・塩素系の極圧剤を添加することで
性能が大幅に向上しますので
スペシャルオイルとしてこういった添加剤が良く効き、相乗効果を期待できるオイルとも言えそうです。

吸着する理由

エステルには酸素(−)と水素(+)を分子として持っています。この(−)と(+) が金属の表面に電気的に吸着している状態を図で表しました。

酸素原子は”極”としての役割をしています。オイルが”酸化する”ということは酸素の存在に起因すると言うよりも それ自体が持つ水素イオンの活性現象(OとHの結合時において)によるか、 水酸基結合(CーOHの結合時における)の破壊にあります。

 炭化水素による潤滑は酸素を含んだ物質が分子結合に加えられた場合には 増強されます。


エステルの進化

ベースオイルとしてのエステルは現在、複合(コンプレックス)エステルへ 進化しています。表でオイルの比較を表しました。
熱安定性 低温流動性 耐揮発性 加水分解安定性 化学的自由度 生分解性
ミネラルオイル(鉱物油)
PAO(ポリアルファオレフィン) ●● ●●● ●●
ジエステル ●● ●●●●● ●● ●● ●●
ネオポリオール・エステル ●●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●● ●●●●
ネオポリオール・コ・エステル ●●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●● ●●●●●
コンプレックス・エステル ●●●●● ●●●● ●●●●● ●●●●● ●●●●● ●●●●●

エステルの構造

エステルはアルコールと酸が反応して出来ます。 原油からの抽出の効率が悪いため石油メーカーは積極的に販売をしません。 植物油、動物油脂から化学的に抽出されたエステル基をその他のアルキル基

と結合させてつくり出されます。
          
  
1.ジエステル 2.ネオポリオール・エステル
3.ネオポリオール・コ・エステル 4.コンプレックス・エステル
なお上記はモチュールの資料によりますが、現在いろんな分子式で表される エステルが作られています。
新しいエステルが開発されると、他の添加剤と同様にラボテストや実際にオイルに使用され走行テストされます。 同じような説明が載っているパンフレットを見ても、それがどういったタイプのエステルかわかりません。
他のエステルとの比較として、その製品の良さが説明されるだけです。
詳しい説明はそれぞれのオイルや添加剤メーカーに教えて頂くしかありませんが、 メーカーサイドでは、さらに色々なレベルで効果の高い製品が開発されているわけですから 既存のエステルと比較したデータは持っていると思われます。

モチュールの2004年4月からの新しい製品では、4輪用のみ新しいエステルが調合されている。
(2輪湿式クラッチには滑る可能性があるため、使用しないことを推奨)
資料は画像でこちらにあります。 新300V製品の写真

 なお、化学物質や薬品として扱われると思われますので、 新しいタイプのエステルが新製品として輸入されたりする場合は、それがエンジンオイルであっても 国への申請等の手続きが必要になるようです。
 


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