GRPと摩擦係数
GRPをオイルに添加すると「摩擦係数」は変わるのかについて、
間違ったイメージを持たれるのではないかと思い、その関係について
ご説明いたします。
(1)摩擦係数について
物体同士が接触している際に、片方を動かそうとすると、摩擦が発生し、その摩擦力以上の「力」を
加えませんと動かせません。
摩擦のページ
にありますように、「摩擦力」は一般に接触面圧の大きさに比例します。そして、この「力」を
「摩擦力」で割った数値を「摩擦係数」といいます。
(2)摩擦係数の意味を持つ領域
軽負荷の荷重(または圧力)の領域内の場合には、この摩擦係数は接触面の条件
(材質や表面粗度など)が同一であれば接触面積の大きさ、
荷重圧の大小などには殆ど無関係にほぼ一定です。
そこでは、摩擦の法則(クーロンの法則とも呼ばれる経験則)が適用されます。
また、それに関して次のことが言えます。
- 1.摩擦は接触面積に加えられる力に比例し、接触面積の大小には無関係である(静止摩擦および運動摩擦において)
- 2.摩擦はすべり速度の大小に無関係である(運動摩擦)
- 3.一般に同じ条件下では運動摩擦係数は静止摩擦係数より小さい。
荷重(または圧力)や速度がこの経験則(クーロンの法則)を超える範囲にある場合には
この法則からはずれ、この理論は適用できなくなります。
つまり、「摩擦係数」が潤滑状況を判断する要素となりえるのは軽負荷領域においてのみ、
であり、これを越える過負荷領域領域では「摩擦係数」は意味がなくなります。
- 1.流体潤滑の範囲=軽負荷荷重領域=オイルの膜が充分ある状態・・・摩擦係数は意味を持つ。
- 2.境界潤滑の範囲=過負荷荷重領域=オイル膜がほぼない状態・・・摩擦係数は意味を持たない。
(3)「摩擦係数」が計測できない領域
接触圧力がそれほど大きくなく、金属同士が摺動する(擦れ合う)接触面の間に
潤滑油が存在できる状態が「流体潤滑」です。
この範囲にあってはオイルに「GRP」を添加してもほとんど、潤滑状態や摩擦係数が
向上する事はありません。
オイルの油膜が主たる潤滑油になり得る範囲(領域)です。
(それでもわずかですが、効果はあることがわかってますが。)
しかし、機械を初期稼働するとき(エンジンをかけるとき)や止めるときに、接触面の「粗さ」により
軽負荷以上の荷重(または圧力)が接触面に加えられます。
この瞬時にはオイルは油膜としても接触面の間に介在する事は出来なくなります。(例:ドライスタートなども同じ)
金属同士が直接接触をし、金属の摩耗を起こし、最悪は焼き付きを起こします。
この状態を「境界潤滑状態」と言い、もはや流体潤滑状態の領域を越えています。
言い換えれば、クーロンの法則の適用されない領域であり、この状態では
「摩擦係数」は「計測も適用も出来ず全く意味を持ちません」。
GRPはこのような通常のオイルの油膜では耐えられない「境界潤滑」状態において、
超潤滑性を発揮し、維持する目的で開発された製品です。
従って、GRPは摩擦係数の表現をもって潤滑性を判断する領域を越えた「境界潤滑」において
超潤滑性能を有するものであって、「摩擦係数」などというものは何ら意味を持たないし、その
数値表現も出来ません。
(4)GRPは共晶膜同士の潤滑
GRPによって形成される強靱で超潤滑性をもった共晶膜が金属の接触面に
固着し、そこでは共晶膜同士の潤滑となります。
そのため、金属の摩擦・摩耗を極限まで減らします。また、共晶膜自体が抜群の
耐水性能・耐熱性能を持つため、金属摺動面の維持、発熱の防止、焼き付きの防止
となります。これはGRPならではの効用です。
以上が、摩擦係数を書いていない(書くことが不可能な)理由となります。
ただ、GRPを入れたエンジンがまず最初にアイドリング(軽負荷)の音質を静かにする例から、
エンジン内の潤滑は「準境界潤滑」で、「流体潤滑域」と「境界潤滑域」が入り交じった状態とみるのが正しい
状態と思われます。
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