実際の極圧性の続き

極圧剤の腐食作用

極圧剤や摩耗調整剤と言われるものは大なり小なり、金属に対して、
腐食を起こすものがあると言われています。
例えば、イオウ成分を含んでいるものや、塩素を含んでいるものは
化学反応を起こして、金属を腐食させる場合が多くあります。

もちろんきわめて腐食性が少ない成分の添加剤もあるため、
成分分析だけで、その添加剤の腐食性がどうと言うことはできません。

例えば、
有機モリブデンの様に、その腐食性は
「有機モリブデン系」と言うことで同じものと思われてしまうのですが、
腐食性が大きいものから小さいものまで、異なる場合がほとんどです。

同様に、成分に少しでもイオウや塩素が入っていると、
それらがすべて同様に腐食性があると思われるのが普通ですが、
腐食性をテストすればわかることでしょうが、
条件によっても全く異なっていると考えるのが妥当と思われます。
 

こういった添加剤の中にも、一部には、
エンジンオイルの腐食性と同様なテストをして
きわめて優秀な成績をおさめている添加剤もあります。
場合によってはオイルより腐食性が少ない場合さえあります。

オイルも腐食性テストが実施されています。
基準のグレードの認証を得るためには、
必ず腐食性のテストで合格する必要があります。
それである程度オイルのグレードに対して信頼が出来、
安心して使用できるわけです。
しかし、添加剤にはほとんど工業界用の製品を除いては
テスト結果を公表しているメーカーが無いように思われます。
(でも、データがあっても、その数値などが、どのようなものか、わかりませんよね。)
そのため、知らないで使用しているとどんどん腐食が進行していく場合があります。
元々エンジンは、金属摩耗を前提として耐久性などがテストされていますので、
少しぐらいの腐食性なら問題としない場合が多いのです。
が、例えば
ミッション車のシンクロ機構等に使用されているシンクロコーンなどにとっては
困った出来事になります。
滑ることで同期させる機構のため、
鋼などの堅い金属と、真鍮などの柔らかい金属間の滑りがクッションとなり、
ぎくしゃくしたクラッチミートにならないようにされているのですが、
真鍮側が僅かに摩耗することが避けられません。

元々そういう金属摩耗を想定して、摩耗しても大丈夫なようにシンクロコーンは
円錐系に作られているのですが、
それでも、その摩耗を促進させる成分などが多く入っていたら、
金属腐食によって、金属表面が摩耗し易くなり、ダメージは大きくなります。
最終的にはシンクロは同調できなくなってしまい、
ギアがスムーズに入らなくなります。
これは硬質固体系潤滑剤にも言えることかもしれません。

特にシフトダウンでは、回転しているギアの回転を瞬時にゆっくりとした回転にする、
いわば同期と言うブレーキをかけるわけですから、
摩擦ブレーキを利用できないくらいにコーンの摩耗が進行してしまっては困るわけです。

ついでに言いますと、
金属腐食がきわめて少ない添加剤の極圧剤はほとんど滑る原因にはなりません。
なぜなら、この部分に極圧剤が必要なぐらいの圧力がかかる場合は、
シンクロコーンの方が摩耗してしまうため、
極圧剤によって滑ると言うような効果など、ほぼ関係なくなってしまうからです。
また、真鍮のような柔らかい金属を使用しているわけですから、
それほど回転トルクが大きくないことも理由に挙げられます。
(クラッチがつながるまでの状態)
ですから、
ミッションオイルには極圧剤を入れないメーカーもあり、
さらにそういった極圧剤のないエンジンオイルが使用されている場合もあるわけです。

オイルテストでは、
極圧剤の成分に金属と化学反応がし易い成分が含まれていることが多いため、
極圧性と引き替えに金属にダメージを与える場合を想定して
その添加剤がどれくらい化学的に安定しているかを調べます。
普通は、銅板を加熱し、オイルや添加剤を付け、その色の変化で反応性を調べているようです。
銅を使用するのは、メタルベアリングが銅の合金である場合が多いからと思われます。

とりあえず、こういうことのテスト結果などは、メーカーも隠したがりますので、
一向に見えない事なのです。
都合の悪い結果になれば、公開など、まずしませんので、
本当に困ったことです。

普通エンジンオイルでテストされる項目での腐食性は
それほど高い要求はされておらず、
オイルにそういった成分が添加されていても
合格が出ます。
しかし、効果と裏腹に、金属に浸透して金属自体を侵しますので、
あまり嬉しいこととは思われません。

添加される成分には
環境問題も含めて取り組まれている問題になっている場合も多く
エンジンオイルでは
一部、触媒の鉱毒性が問題視されているリンやイオウのように添加量が規制されてますが、
将来的には、全体的にすべての問題ある成分に対して
含有量が規制されることと思われます。

極圧性以外の効果が加わると・・・

極圧性だけでは、否定的に考えて、僅かしかパワーアップが望めないことを
先のページで考えてみましたが、
後から添加剤をわざわざ入れるわけですから、その効果が体感できないと商品価値が落ちます。
そのため、別のパワーアップになる要因として、
高分子ポリマーなどを添加して、金属摩耗が増えて、コンプレッションが低下したエンジンに
気密性を向上させ、圧縮アップをねらっているものが多くあります。
膜厚自体によってそれをねらう場合もあります。

極圧性の低いポリマー系添加剤などは、
はっきりと、この気密性を重要視した添加剤であり、
クリアランスが広い場合は、こちらの方が効果的に感じられる場合もあります。
また、
この他に固体潤滑膜でスクラッチの充填効果をねらったものもあります。
どちらも完全燃焼を促し、
本来のパワーに近づけるために添加されています。

エンジンなどの内燃機関はどうしても金属の摺動部がありますので、
どんな成分が加わっても金属摩耗が避けられないことは当然ですから、
使用時間によって、あるいはシビアーな走行によって、
圧縮率が低下します。

過走行車両や旧年式のエンジンは気密性が悪くなっています。
古いタイプのエンジンで特に言われることですが、オイル管理の悪い場合は
同じ走行距離でも摩耗が進行しているため
いいオイルを使用すると、コンプレッションが抜け、
エンジンのかかりも悪くなると言われます。
オイルや添加剤の清浄作用で、スラッジやカーボンが落とされてしまい、
そこを充填するものがない結果と思われます。
反対にコンプレッションリング等の動きが回復し、
ピストンの気密性があがる場合もあります。

こういった車両には適度の粘度アップが必要な場合が多く、
ポリマー剤だけでも結構トルクアップが可能でしょう。
まさに、流体潤滑に近い状況がおき、
金属摩耗が起こりにくくなっています。

また、クラシックカーなどでは
高粘度オイルや、シングルグレードオイルが使用されますが、
これも同様なことで、クリアランスが広いためのコンプレッション抜けに対して
そこに十分な油膜があることにより、
オイルの粘度による抵抗より以上の効果が出るからと思われます。
つまり、
気密性が足りないようなクリアランスが広くなったエンジンでは
極圧性はあまり関係なくなると思われます。
それが、わずがでも膜厚が期待できないようであればいいのですが、
こういった場合は、かえって高粘度油に替えて、コンプレッションをどう補うかを
考えた方がいいかもしれません。



それで、
コンプレッション自体がエンジンのどの部分が関わってくるかを考えてみますと、
燃焼室内の混合気の状態や吸気排気の状態、プラグの点火状態も関係するのですが、
やはり中心はピストンになり、ピストンリングも考えないとなりません。
ここでも極圧性とオイルの状態、リングの摩耗、リング溝の摩耗や変形、
その他シリンダーに対する攻撃性が考えられます。
ですから、別のページにて、
ピストンリングを中心にこの問題を考えてみたいと思います。
 

ホームページへ
inserted by FC2 system