5).オイルに対しての影響

1.本当にオイルを長持ちさせるか

オイルの性能は、時代と共に進歩してきました。1つは原油から本当にオイルに必要な 成分だけを抽出出来るようになったこと・オイルに適さない成分を改良してしまう石油化学の技術 の進歩によるところが大きいですし、オイル中の各種添加剤の開発がオイルのロングライフ化に貢献しています。

しかしそれは自動車の高性能化が進んで既存のオイルでは不具合・不都合が生じた為に、
新しい高性能オイルの要求が生まれたという歴史でもあります。
ですから、オイルや添加剤は機械製品の後から開発される商品と言ってもいいでしょう。

オイルはオイルメーカーで作られ、添加剤はオイルメーカーと添加剤メーカーで開発されますが、 開発目的は機械に不具合を生じさせない事や省エネに貢献すること、オイルの交換時期を延ばすロングライフ化と環境汚染を少なく することなどとなります。
しかし、特別な理由がない限り超高級オイルが一般車の指定オイルになることはありません。
オイルコスト対機械の稼働(償却)期間という関係があるからです。安い低性能オイルを使用しても 充分償却まで対応できる場合、オイルは価格に左右されがちです。つまりそういった場合、 リッター当たり500円のオイルと2000円のオイルとでは通常500円のオイルを使用するでしょう。
(日本ではガソリンやオイル交換が非常に高くつくことは周知のことですが、原油の運搬や市場の大きさ、 税金の占める割合が影響しています。そのせいでこんなにもオイルが高いものになってます。
添加剤もそれに漏れず非常に高価な商品として扱われます。貿易商品は基本的に価格格差によって扱われますから まあ仕方ないこととします。)

添加剤が入ってオイルが1L/500円としたら、1/4リッター1000円の添加剤はオイルに比べて 8倍の価格になります。高い添加剤などでは1台分(約4リッター)に対し5000円以上するわけですから オイル代より高くなります。この場合、オイル代(2000円)+添加剤(5000円)=7000円ですから 元のオイル交換より3.5倍の値段になってしまいます。

で、説明書きよりオイルの償却期間を見てみますと、実は書いてなかったりPL法によってかなり短く 記載されていたり、場合によっては今まで通りの交換となっている場合もあります。
実のところは、添加剤を入れてオイル交換が伸ばせる距離は 経験的に1.5倍−2倍まででしょう。
一時的にそれ以上使用したとしても大丈夫と思いますが、リスクマージンを取るとその方が無難という 意味合いです。

オイルメーカーがテストした結果から言うとオイル交換の時期は
添加剤成分の劣化時期に当たるのですが、
一般的には、
10.15モードで使用した燃料に換算して
実質走行距離が70%なら(カタログデータの燃費の70%なら)
自動車メーカーの薦めるオイル交換時期の70%の距離(指定距離10000kmなら7000km)
の1/2辺り(3500km)が交換時期として選ばれているようです。
添加剤使用によって
その距離の1.5倍−2倍とすると5250km−7000kmぐらいが
安いオイルを使用しても添加剤を入れていれば大丈夫な距離と言えそうです。
もちろん添加剤の性能によってその距離が左右されることは言うまでもありません。

上記を燃料の使用量として考えるなら、「10.15」と「現実」が同じ量になったときに、
オイル交換するという見方も出来ます。
ですから、はっきり言ってオイル寿命だけを考えれば添加剤使用は経済的に「損」となります。

ですが、自動車は嗜好品に近い製品ですからそれ以外の性能を向上させる理由(あるいは 稼働条件を良くする=故障を少なくする・ランニングコストの軽減)で添加剤が使われます。
余程の理由がない限りオイルに超高級(高額)添加剤を入れる事は少ないと言えますが、 何故それでも入れる人がいるかというと、それは人それぞれの「こだわり」というしかないでしょう。

2.オイルに元から入っている成分との相性

添加剤メーカーも市販のオイルとの相性はテストしていますので、一応安心という事が言えると思います。
ただし、オイルに添加剤として売られている成分が最初から入っている場合は、少し注意が必要かも知れません。
また、オイルメーカーとしては他の添加剤使用はクレームの対象になりませんが、 はっきり「他の添加剤を使用するな」と表示していませんので、心配な人は 使用する添加剤メーカーの方に問い合わせてみるといいでしょう。

ちなみにオイル自体も長期保管していると底に沈殿物が出ます。
僅かなら問題はありません。

6).良い添加剤の条件

1.オイルに対して

オイルとの馴染みがいいこと、つまりよく攪拌されて常にオイルと混在していることが必要です。
また、オイルと相乗効果をもたらし、オイルに含まれる添加剤成分の効果まで引き出すタイプが好ましい。
出来れば、オイルの流れを悪くする固体潤滑剤を含まず、亜鉛(ジアルキルジシオ燐酸塩)などの重金属を 含まない方が好ましいと言えます。

2.エンジンに対して

すでにオイル中に含まれる、ケロシン、ナフタレン、キシレン、アセトン、イソプロパノールなどの溶剤(ソルベント)や清浄剤( デイタージェント) を異常に含んだ添加剤も(フラッシングとしては有効かも知れませんが)オイルの潤滑性能を落とし金属同士の接触を 増やすため注意が必要です。

1度限りのレースでの使用を考えた添加剤なら、エンジンにダメージがあっても良いのかも知れませんが、 日常に使用する場合、どれだけの耐久性をエンジンに与えるかの方が大切と思われます。

ですが、余程でない限り日常使用でダメージが出ることもまれですから、 どうしても効果の体感しやすい製品が選ばれてしまいます。
一つ一つどれが良いのか、試した人からの情報を元に、テストするしかないのでしょうね。
また悪い結果を事前に公表していないのが当たり前ですから、使う方も、その製品のどこが 他の製品と違うのか、宣伝の内容の信憑性を調べて見るという努力も必要と思われます。

オイル添加剤は長期使用に対してどれぐらいダメージを与えるかが分かり難いものです。
悪いと言われる固体潤滑剤でも、実際乗り換える時期が早い人(5−8万km)にとって、 その影響を感じるより、自動車自体の不具合の方が先に出たりします。
また、本当に良い添加剤を使用していても、部品の劣化や”当たり外れ”の方が性能に出る場合が 多いため、添加剤不信となる場合もありえます。

自動車のパーツは約3万点以上になるため「当たり外れ」や「製造ミス」が必ず起きています。
自動車メーカー側としては
1000台に1台程度の不具合であれば余程重要でない限り「リコール」対象にせず
クレームとして処理します。
1000台に2台の割合になってやっと本腰を上げて「対策」に当たります。
また、クレーム期間・距離を越えた場合は
不具合があっても仕方ないというレベルでの対応です。
エンジンの冷却の要となるクーラントやサーモスタット・ラジエターキャップは
外品(メーカー外パーツ)としてクレーム対象となる期間が
1年間1万キロぐらいです。
ということは、車検時交換ではクレーム対象にならないということです。

オイルの製造設計ミスははるかに低いのですが、それでも基準値以下の製品が
出来ることはあり得ます。
もちろんPL法の適応はあります。
純正以外でも純正同様の取り扱いをしている場合がほとんどです。

添加剤も大体のメーカーは保証します。
ただし、自動車のクレームほど分かり易くありませんので、まずそういった
ケースはまれといえます。

3.添加剤自身の劣化として

効果の優れた製品は、高価である事が多いため、 ランニングコストを考えた場合長く使えた方がいいに決まってます。
けれど添加剤の劣化がほとんど無い製品でも、他の要素(オイルの劣化、異物−ガソリンなど−の混入) によって交換せざるをえません。

特に高価な添加剤の場合、清浄分散効果が高いとすぐオイルを汚してしまうため、 劣化したと思われがちです。
オイルが今までより早く汚れたとしても、充分効果が出るように設計してありますので、 あまり心配は必要ないでしょう。
それよりも、本当に性能がアップしたかを見る方が肝心です。
長期耐久性をうたっている添加剤の場合はオイルの汚れた状態でも、オイル粘度があり エンジンの調子も良くなっているはずですから、次第に「オイルは汚れと関係ない」 事がわかります。

もし汚れ自体にスラッジを含むものであった場合は手触りがざらつきを感じるので 交換した方がいいでしょう。それが今までと同じ距離でしたら、その添加剤の使用は 避けた方がいいでしょうね。
結構人間の感覚は正確なんですよ。

また、非ニュートン弾性を持つポリマーなども、極圧下(境界潤滑域)では、ほとんど物理的劣化(剪断)をしてしまいますので 長期に耐久性があるかどうかは疑問です。
さらに抵抗を少なくする粘性がどれぐらい優れているかのデータをきちっとした比較として 見たいものですね。

7).トラブルの原因

1.本当に添加剤のせいなのか

すでにこの事については書いていますが、正確な表現としては「そうかも知れない」と いうあいまいな形でしか答えられません。

これは添加剤メーカー自体がその成分を公表しないので調べようがないからですし、 エンジン側のクレーム期間が短すぎるため、壊れる前に保証が切れてしまうため 余程の人でない限りその原因を追求する事が出来ないからです。

産業界では、今までの機器の保守整備として使用されますので、テスト期間も相当長く 取られ、とことん問題解決に向けて検討されますので、特殊なオイルや添加剤製品が多く、その効果も 限られた目的のためであることが多いようです。場合によっては危険な成分、環境に悪い成分を 使わなければならないことも多かったようです。
ですから、添加剤というのは製品の数が多く、いくら性能が良いといわれても自動車向きと言えないものも多く出ています。 自動車に使う場合に、そういった製品はきちんと調べてから使用された方がいいでしょう。 後であわなかったことがわかっても手遅れです。

添加剤の1つ一つは「特定の効果を出す」という目的で作られていますが、 オイル中の添加剤全体のバランスを崩すような「添加剤」を後から入れた場合や、 反応を起こすような成分が2次的に発生した場合などでも、実際の事例で(エンジンにとって 障害となる事が少なければ、)それが故障を引き起こすかどうか判りません。

添加剤よりも1000分の1の確率で、不具合になる要素を持ったパーツは、運悪く自分の自動車に使用されていた場合は、 起こりますし、メンテナンス不良によって実はユーザー側の過失的責任が大きい故障かも知れません。
複数の添加剤を使用した場合の添加剤同士の影響が作用しての故障であったり、 兆候が出ているにもかかわらずユーザーが気が付かず起こってしまったトラブルかも知れません。
故障など見てみると、それぞれの人に様々なケースがあるわけで、自動車の「調子が悪くなった」というレベルも人それぞれですから 「添加剤のせいで悪くなった」と言えるかどうかは、とても判断が難しいところなのです。

ただ、あまり評判の良くない製品や説明に納得のゆかない場合は避けた方がいいでしょうね。 避けるという方法でしか、ユーザーは選択できませんから悲しいものです。

2.添加剤が効いた人と効かない人の差ってどうして出るのか

効く効かないは、個々の自動車の症状や添加剤で改善できるレベルかによります。
また、同じ型の自動車でも「当たり外れ」で、「添加剤でやっと普通の状態を保っている」自動車の場合もあれば、 全く何もしないでも好調そのものといった「大当たり」の場合もあります。
同じ症状と思っていても修理してみると全く異なる場所のトラブルだったなんて事もありますので、 そういった個々の具体例から、「効く効かない」を考える必要があります。

また、添加剤が有効な範囲に改善項目があるかどうか?(添加剤の効き目が強いかどうかでも良い)
使用した人の期待度と添加剤の効果のマッチング度も関係してきます。
添加剤に期待する人は特に「どれぐらいの効果を期待しているのか」を 考えて、添加剤を選んだ方が良いと思われます。
ですから、そういった質問に答えられる(誇大に表現しない)メーカーや販売店の 添加剤から試してみると「裏切られません」し、「間違った使い方」をしませんので 是非お勧めいたします。

プラシーボ効果もあるわけなのですが、恋愛だって似たり寄ったりですから、 一度かかってしまうと、「さめる」まで待つしかありません。
出来れば「かかる前に」予防薬として、自分の自動車の状態をそういったものを使わないで最高にして おくことが良いでしょう。

プラグ、クーラント、サーモスタット、エアクリーナー、タイヤ、オイル・・・etc.
ちょっと新品に替えるだけでも、効果絶大なんて事もあります。
そういった変化を経験をして行くうちに、 添加剤がどの程度のものか見極めが付くかも知れません。

残念ながら、経験をしていただく事でしかお伝えできないものかも知れません。 こういった経験を「体験知」といい、本当は良い意味では大切な事柄と思えます。

3.クレーム(保証)は本当に効くのか

実は、この問題は聞いたことがほとんどありませんので、難しいのですが、
エンジンが壊れた場合のオイルに対してのクレームは1度だけ耳にしたことがあります。
メーカー指定のオイルを使用して保証期間内にエンジンが壊れた例ですが、 実は指定以外のオイルを使用していたことで却下されました。

どうしてそれがわかったかと言いますと、オイルにはそれぞれ灰分を元にしたバーコードのような 成分元素グラフが固有にあるからです。
指紋みたいなもので、指定オイルの指紋とあわなければ、他のオイルと言うことになるのです。 では、入れられていたオイルメーカーの保証はどうかと言いますと、大きなオイルメーカーであれば ほとんど保証が効きます。この場合その後どうなったかは聞いてませんのでわからず仕舞いですが、 オイルに添加剤を入れるとなると、この指紋が変わりますのでこの場合、添加剤メーカーに 保証を求めるといいでしょう。

ただし、賠償責任保険はお金を払うことで自由に掛けられますので、保険が付いていると言うことが 「保険会社も太鼓判を押している製品」であるかのように書いてあるものには不信感を 抱きます。

もちろん何度も補償金を払う製品は保険会社から解約されるでしょう。
普通は添加剤メーカーは書いてなくても自主的に保険に加入していると思われますから、 保証は一応付くと思っていいでしょう。
ただし、確実に支払われると言う意味ではありません。

ですが、余程の設計・製造ミスがない限り、自動車の方も壊れなくなっている現在、 添加剤で壊れたということを立証することはかなり難しいことも事実です。
よく「オイル交換は3000−5000kmでした方がいい」といわれる理由も、メーカーの指定する 使用期間や距離(1年以内1万−1.5万km)では、調子が悪くなりはしても、壊れるまでには至らないからなのでしょう。
まして償却期間を保証が付く距離以上乗ろうとする人にとっては、上記の言葉は「経験訓」として、語り継がれている ようですし、少ない出費で大きな出費(トラブル)を避けられるならという「保険」みたいにも受け取られています。
ただ、安い低品質オイルを頻繁に交換しても本当はいいわけはなく、やはりそれ相応の品質のいいオイルを普通に使用することの方が いいでしょう。「経験訓」は大切ですが、「天動説」のようになってしまう事にも弊害はあります。


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