テフロンはその中で、”エンジニアリングプラスチック製品”として使われていますが、
その名前は”デュポン社の商標名”で、ポリフッ化エチレン(または、ポリテトラフルオロエチレン)
が、正式な名前です。
なぜ、プラスチック製品がオイルに入れられるようになったか確かな経緯は知りませんが、
少なくとも、その摩擦係数の低さにあることは確かなようです。
プラスチック上に鋼をすべらす | プラスチック上にプラスチックをすべらす | |||
プラスチック名 | 静摩擦係数 | 動摩擦係数 | 静摩擦係数 | 動摩擦係数 |
ポリアミド(ナイロン66) | 0.37 | 0.34 | 0.42 | 0.35 |
ポリアセタール | 0.14 | 0.13 | − | − |
テフロン | 0.1 | 0.05 | 0.04 | 0.04 |
ポリエチレン低密度 | 0.27 | 0.26 | 0.33 | 0.33 |
ポリエチレン高密度 | 0.18 | 0.08〜0.12 | 0.12 | 0.11 |
ポリエチレンテレフタレート | 0.60 | 0.53 | − | − |
ポリカーボネート | 0.29 | 0.28 | 0.27 | 0.20 |
ポリ塩化ビニル | 0.45 | 0.40 | 0.50 | 0.40 |
ポリ塩化ビニリデン | 0.68 | 0.45 | 0.90 | 0.52 |
テフロン系添加剤の摩擦係数がどこの添加剤のメーカーも”0.015〜0.020”ぐらいに表されているのは
たぶん測定する対象物の面の精度によると思われます。
通常は0.04とされ、二硫化モリブデンと同摩擦係数として表記される場合が多くなってきました。
なお、人体の関節摩擦係数は、おおよそ0.005〜0.012となり、
スキーやスケートよりも小さな値となります。
また、分子間の凝集エネルギー(分子間を結合する力)もポリエチレンより小さいので表面エネルギーが
ひくく
、凝着が起こりにくく、摩擦も小さくなります。
もちろん内部の分子間でも凝集エネルギーがちいさいために、 すべりやすくなっています。
つまり、”くっつきにくい”+”すべすべ”ということです。
オイルが流動している=エンジンかけている時間と止めている時間を考えればけれども製品の説明(特に極圧性があるとの表記)と実際のデータとではかなり開きがあるようです。
固体系で比重が大きいほど、沈殿する事はご理解頂けるわけで、
常時運転しているようなタクシー、トラックではまず沈殿は起こらないでしょう。
どちらかと言いますと、
停止時間が8時間以上になりますと、オイル自体も殆どオイルパンへ下がると思われますので
ましてテフロンはフッ素樹脂をコーティングしたフライパンのように考えてしまうと
返ってはじいてしまうわけで、これは逆に早く落ちるだろうなと思いました。
金属と付着性のすぐれたエステルでも、夕方駐車して翌朝エンジンをかける頃には
殆どオイルパンへ落ちてしまっていることと思われます。
ただ、フッ素樹脂がもしゴミのように残留し、そこにあればドライ発進に貢献するはずだと思って
テストした経緯がありますが、確認できずに終わってしまいました。
(量が少なすぎるわけですね)また、摩擦係数の低さからか日本のピストン・ピストンリングメーカーが
テフロンコーティングしたピストンリングを作ったのですが、
その後、廃盤となったのか、手を引いたのか見られなくなり、その理由は
耐極圧性と耐熱性にあると考えられます。
温度の低いピストン下部(スカート)などでは、これは二硫化モリブデンコーティングなどをご存じのように
グラファイトなど固体潤滑皮膜として混合してそこに(ピストンスカート部)塗布されます。
また真偽の保証は出来ませんが
高温になると粒子サイズが 増大するためオイルフィルターを通過することが
出来ないと言うユタ大学での下記研究実験結果があります。
確かとあるメーカーから訳した文章をもらったのだが詳細はこちらのHPに記載していますので
ご参考までに。前回の訳者さんの誤字など(ウタ→ユタなど)訂正致しました。
<参考HP:QMI副社長の反論>
1.オイル圧はドロップし、フィルターの目詰まりが発生します。また、同様にNASAのルイス研究センターでのテストでも
2.金属摩耗分粉の含有量がPTFE使用によって、逆に増えている。
「テストをしたタイプのベアリングの接触面には効果が認められなかったが、つまり、一般に言われている効果よりもダメージとして見た報告の方が研究で明らかにされているのです。
完全に損傷を起こす場合が多い。オイルの中に含有されているPTFE固体粒子は
油口などに堆積する傾向にあり、オイルをブロックし潤滑を妨げ、実情は潤滑を劣化させる
ことになっている」
オイルラインを塞ぎやすく、極圧域で金属を摩耗するなどのデメリットがあるため、
デュポン社が ”テフロン”に関しては、極圧剤として使用しても責任を持てないと言って
製品供給を止めてしまった経緯があります。
ただしデュポン社はその後、訴訟によって敗訴し、オイル添加剤としてのエンジン性能向上を
認めざるを得ない結果となりましたが、いずれにせよ、極圧性能は実験結果からも殆ど無いわけです。
低負荷域の潤滑には効果があるのですが、高負荷域での効果を期待できる製品が待ち望まれます。
なお、「水性拡散レジン」を用いた製品もデメリットとしての解決の返答は定かでないようです。
ですから金属摩耗を念頭に考えているオイルメーカーとしては最初から添加している事はまずありません。
まれに極圧性が向上する製品があるようですが、それはテフロン以外の成分を含むため、
その成分の効果と考えられた方がいいでしょう。
また、液化したテフロンもあるようですが(レイン−Xでおなじみですよね)、基本的には固体の製品と同じのように
考えられればいいのではないかと思われます。
ただし、高分子材料として、いわゆる部品としてのフッ素系樹脂の利用は多くあります。
長期継続使用についての弊害性については、
いろいろ論議が多いようですが、
どの固体潤滑剤にも共通性のあるオイルとの分離による沈殿に関わる問題と、
油膜保持性に対する低減などにあるように思われます。