結合の力

分子間力は水素結合とファンデルワールス力

潤滑剤(オイル)はエンジンを摩擦から守り、摩耗しないように金属と金属の間でオイルの
フィルムを作ってますが、どうやってくっついているのでしょう。

ファンデルワールス力

物と物とがくっつくということの基本になるのは、その分子の持っている電気的な引力がまず考えられます。
電気的に中性である分子と分子の間に働く相互作用力で、分極(電子密度のかたより状態)によって
起こるものを”ファンデルワールス力”といいます。

結合の種類結合エネルギー(KJ/mol)
近距離力化学結合イオン結合
600〜1500
(表面間の距離→原子間距離)共有結合
60〜700
H−H
104.2
C−C
83.2
C=C
145.2
198.1
(表面間の距離≦トンネルの距離)静電結合−−−
(表面間の距離→原子の大きさ)金属結合
110〜350
酸−塩基結合
80〜1000
遠距離力ファンデルワールス力配向力
4〜20
(表面間の距離>原子間距離)誘起力
 <2 
分散力
0.08〜40
ZDDP
21ぐらい
水素結合O−HO
25
C−HO
8〜13
O−HN
17〜30
N−HO
8〜13
N−HN
25
N−HF
21
F−HF
30



分子間力の力をはかる

エンジンオイルも水でもそうなのですが、液体を無重力の中に置くと ボールのような丸い形になります。なぜ丸くなるかというと、その液体が 一番安定した形をとろうとするからです。つまり、液体の表面積は最小に なり、表面の自由エネルギーを最小にするために球の形をとります。 この力を普通”表面張力”として表すことが出来ます。

固体と液体のくっつく力

オイルはエンジンにくっついているのですが、その力の大きさは、 固体と液体の相互作用として液体の形で見ることが出来ます。

A.の状態は車で言うとワックスを掛けたばかりのボディに水滴が着いたり ノンワイパーのコーティングをしたりした状態に似ています。コーティング剤が 液体に作用を起こさない状態で(完全な球の状態などあり得ませんけれど・・) 液体は表面エネルギーが最小の状態を保ってます。

B.の状態は料理をした人ならわかりますね。 テフロンのフライパンに油を入れたときに似ています。焦げ付かないけれど、 油もはじかれて着かないのでわかるかと思います。普通の鉄のフライパンでは”C”の状態に なります。ワックスも痛んでくるとこんな状態に なります。固体の表面張力が少し働いて液体を広げた状態です。

C.この状態は液体の表面張力に逆らって、 固体の表面張力が液体を広げたといえます。このようになることを親和力があるとも 言いますが、それは相互作用力と言い換えることもできます。無重力状態の 水の玉に指をつけると、水は指にまとわりついてきます。コップからコップへ 水を移すときにも、ガラスの表面張力のせいで、水がこぼれ易くなります。


エンジンのシリンダーやピストンなどは金属で出来ていますが、その表面は
酸化しています。つまり酸素がくっついています。
金属に高分子接着剤がくっつくときは、この金属の酸化物の水酸基(−OH)に 酸−塩基の相互作用が働き、イオン結合力が生じると考えられてます。
オイルに結合する官能基があればいいわけです。こういった考えのもとに 合成されたオイルがエステル系ベースオイル ということが出来ます。そうでない場合でも炭化水素はHを持ってますので 金属面にはくっつきやすいといえます。

しかし一般的には、オイルの油膜は金属表面がなめらかに加工されている場合でも約7トン/cm2(場合によっては約14トン/cm2) の力がかかるとその油膜はせん断されオイルがない状態になります。オイル膜が破壊されるか、全くない状態ですから 金属同士が直に接触し、摩擦し、摩耗してゆきます。エンジンでいうとロックした状態にもなります。

オイルの膜だけで潤滑するという限界はこの辺りにあるようです。 どんなに頻繁にオイル交換しようとも、僅かな接点で起こる現象は、このような、 境界潤滑領域の現象ですから、エンジンは壊れてしまうのです。

極圧剤といわれる成分の多くは、金属の直接当たる部分でロックをさせるよりも、 結果的に金属自身を柔らかくしてしまい、金属が小さく削れた(腐食した)方がましだ、 (つまりリン、イオウ、塩素や亜鉛などの金属などで化学反応させ 化合物の膜を作ってしまう。 腐食性は避けられない) という考えであって、 積極的なオイルレス状態の時の対策を考慮に入れていません。


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