肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ2

汚れるオイルは”よく汚れを落とすオイル”なのか?

こういった質問をよくユーザーから聞くのですが、本当のところ、あまり考えてませんでした。
添加剤を使用してない頃は、高いオイルは洗浄力が高く、安いオイルは低いと勝手に決め込んでいた からです。
けれどどうしてオイルが高くなるのかを考えてゆくと、結局のところ製品のコストの 問題ということが分かってきました。

 まず、ベースにしているオイルのコスト。
これは純度の低い、いろんな不純物が取り除けていない 安物から、ベースオイルとしてそれ自体が合成されてつくられたオイル、
環境問題に対して対策され ”地球にやさしい”オイルとして生分解されるものなどいろんなものがあります。

 次に、それに入れる添加剤。これも最低5種類以上の効果の異なる成分で構成されています。
ベースオイルとの関係で様々に調合されますが、特に高価なものは有機系金属(モリブデン、チタン、合金類など)や テフロン系の減摩系潤滑剤です。
その内の酸化防止清浄分散剤系が汚れを落とす”とされています。

 しかし、汚れを落とすということはオイルの性能を落とすことではないのか?
と考えてしまうのです。
コマーシャルにある洗剤のイメージが強いのです。
実際に、オイルにじみやエンジンルームの汚れ落としに クリーナーを使っているのですが、よく落ちるものは、油もよく分解しています。

 エンジンフラッシング剤などには、必ず”エンジンをあまり回すな”という注意書きが付いています。
これには成分に有機溶剤と明記していますので???と思い 調べてみますと、
ペイント薄め液(テレピン油系)やトルエン・キシレン系シンナーと同じタイプの 働きがあるようです。

 エンジン内部の汚れはオイルや燃料の不純物とかオイルの焦げ付きとか燃料のすすとかなので 出来てますので、
なかなか洗剤などでは落ちにくく(整備をしたことのある人ならわかりますよネ) 指紋やつめにこびりつきます。
時々キャブレタークリーナーで洗うことがありますが 結構良く落ちます。
アセトンならもっと落ちるかなと思ってしまいます。
良くあるフラッシング方法として オイルに灯油を混ぜ、汚れを落とすという方法があります。

 というわけで、そんなののを入れるわけにはいかないので・・・・ つまり、やっぱりオイルにとっては”良くはない”もののようです。
(しかし、汚れを落とす事はエンジンにとっていい事になるのですが・・・)

 ユーザーの一人にLP車を使用している人がいます。以前はタクシーでした。
走行は20万キロ以上になりますが、一度交換してからもう3年以上もオイルを交換していません。
けれども、オイルはほとんど新品を交換したばかりのように、きれいなのです。
これからも廃車まで、オイルは交換しないで大丈夫みたいです。

 もちろん、添加剤は入っています。
オイルにも、添加剤にも清浄分散剤は入っているはずです。
しかし、いつまで経っても汚れてきません。
エンジンの内部をオイルキャップから 覗いてみても、少し汚れはありますが、エンジン自身は結構きれいなものです。
どこが違うのでしょう?

 一方、新車でディーゼル車を購入した人がいました。
1000キロ走ったので オイルを交換しましたが、真っ黒です。
そしてオイル交換をしてエンジンをかけ 油量を確認するためにオイルを見ますと、オイル交換したのかなというほど、
すすで汚れた状態になっています。

 ガソリン車でいつも3000キロでオイル交換していた人がいました。
それも、リッター3000円もする100%合成油を使ってました。
そのせいか、それほどオイルは汚れてなかったということです。
それでも 時々フラッシングしていたそうです。
しかし、馬力が落ちてきたようだということで添加剤を試しに入れて見たところ 1000キロも走ってないのに、もう一本買いにきました。
もったいないと説明したのですが、いわく、今までなったことがないくらいに オイルが汚れていたそうです。
その後オイルのグレードを下げ3000キロでオイル交換をし、
添加剤とオイルの相性を見るためにオイルを(4リットル売価3500円前後のもの)代えて テストモニターしてもらいましたが、
あれほどオイルにこだわっていた人が 現在安い(SJ部分合成油)オイルに添加剤を入れ、5000キロ以上走行しています。
ちなみに、オイルはそれほど汚れてないとのことです。
エンジンは調子よくターボのブースト圧も もとに戻さないと乗りにくいほどコンプレッションアップしたそうです。
(彼は長距離トラックの運転手でもあり、 メカにも強いので自分でオイル交換やメンテをしますので確かでしょう。)

 ついでに、長距離トラックで、某有名S運輸さんがテストした添加剤は(GRPですが)
エンジンオイルを50万キロ無交換オイルエレメントも交換せず、
オイルと燃えた分だけのオイル+添加剤の継ぎ足しのみで全く問題ありませんでした。
オイルエレメントだけは やむなくデータを取るため交換したようですが オイルやスラッジの目図まりも全くなかったということです。
まだテスト中とか・・・。 現在80万キロ以上になるはずなのですが、
こんな場合当然オイルは真っ黒のはずですが、エンジンの調子は 全くいいようで、一体オイルが汚れるということと、
オイル交換との関係が分からないテストです。
(しかし私はガソリン車ではこのデータを見ても2万キロ2年間以内で交換した方がいいとは思いますが・・・ 考え方が古いのかなぁ?)

 まだまだ、実例はあるのですが、オイルに入っている清浄分散剤ははたして どんなものなのでしょう?

 基本的には酸化した成分を中和させたり、オイルに取り込んで洗剤のように細かい状態にして オイルに浮かばせるものと考えればいいのです。

 中和というのは、ガソリンや軽油ではオイルの硫黄分などと反応して硫化物が出来、オイルの劣化を 早め、
金属を腐食させるので、防止させるということです。
コンプレッション抜けしたエンジンはガソリンがオイルに混ざるため、すぐオイルが黒くなります。
また、燃料が不完全燃焼したり、オイル自身も燃えたり、炭化したりします。
これらはカーボンですから 当然、真っ黒です。
そのススをオイルが取り込んで黒くなります。
カーボンだけなら固形潤滑剤にもなり それほど悪いものとは思えないのですが、
カーボン粒子が結合して大きく成長してしまうと オイルラインをふさいでしまい、
オイルで行われていた冷却作用をなくしてしまうので、 やはり、良くありません。

 LPガスがオイルを汚さないのは、LPGが炭素のススを出しにくいからです。
カセットコンロを使ってみるとやはりススは出にくいということが分かります。
多少エンジンオイルに混じってもガソリンと違って気体ですからあまり溶融しません。
それで、オイルに含まれる硫黄分とも反応せず汚れにくいわけです。
完全燃焼をしているエンジンでは実際オイルも汚れにくいし、プラグが黒くかぶり気味の エンジンではオイルも黒く汚れています。
これは石油ストーブの灯油の芯の出しすぎの時と同じで ススが多く出ているわけです。
つまり不完全な燃え方で、燃料が酸素より多い燃え方です。
    (余談ですが、このときダイアモンドの結晶も出来ている可能性があります。)

オイルの中和剤としての性能を見るのには普通、アルカリ性を見る全塩基価mgKOH/gの数値を見れば いいわけですが、
本当のことをいうと、オイルが酸性になっているから絶対劣化しているとは限りません。
合成オイルなど添加剤自身が酸性とアルカリ性の両方を同時に示すこともあるからです。
それはともかく、酸化しているから、アルカリで中和させるという考え方が、 この全塩基価の数値に示されているというわけです。

 では、このアルカリ性を示す中和剤とは、というと、実は代表的なものとしては Caカルシウム化合物があります。

 あまり知られてませんが、Caは一応金属元素でして、( 最初は知らなかったんですが111ある元素の80%は金属元素なんですね)
CaO石灰などしか馴染みがなかったのですが、よくよく考えてみれば 小学校の時、酸性の土壌に石灰をまいて、
ジャガイモか何かをつくったなあ、と記憶しています。
まあ、オイルの中でも似たような事が起きていると考えていいと思います。

 汚れを落とすのにオイルのじゃまをしないように洗浄分散剤の働きとを しているのですが、
これが結構エンジンにはためになります。

 どこかのメーカーの調査ではエンジントラブルの7割以上がオイルの汚れによるものと決めつけていました。
つまり、オイルの目詰まり、ピストンリングの膠着、オイルアジャスターの詰まりなどということです。

 実際、オイル管理を怠るとエンジンの寿命は急速に短くなります。

 エンジンは内燃機関ですので、必ず冷却装置が必要になります。
オイルも冷却装置の一部を担っています。
ところが、オイルが本来の実力を発揮できるのは80度C〜120度Cぐらいでこれより低温でも高温でも あまり良くありません。
(ベースオイルの種類でこの温度の範囲は変わります)

 特に高温側は非常に弱く、劣化が早まります。
天ぷらを揚げる時に似ていて、あまり油温を上げると揚げるものが焦げてしまいます。
(エンジンに使うので、燃えにくい鉱油のハイドロカーボン を使っているだけの話で、本当は天ぷら油でもごま油でもいいわけです。)
フライパンに油を少し入れただけの時も、焦げ付きます。

 油温が異常に上がるとオイルに入っている添加剤(天ぷらで揚げるエビと思ってください)も焦げて(炭化) しまい
添加剤自身がススやスラッジになります。
また、添加剤の量も減り、オイルの性能自身も 急速に悪化してしまいます。
もちろん、ベースオイルも蒸発したり焦げたりします。

 不完全燃焼しているとブローバイガスとして出てくる燃えてないガソリンの粒子が、異常に多くなり オイルに取り込まれます。
加えて不完全燃焼によるススも増えオイルに取り込まれます。
オイルに取り込む事が出来る不純物質(ススなど)の上限は決まってますので、
上限を越えて 取り込めなくなった不純物質はどんどん大きく成長してゆきます。
それがある程度オイルに浮いていて オイルフィルターで濾過されるのであればフィルターの交換で取り除けるのですが、
オイルの通路には細いものもあり オイルの通路の壁面で成長するとオイルの流れを悪くしてしまい、
油温上昇を早め、 冷却低下を起こし、オイルの劣化を早めます。悪循環で劣化が加速されます。
またペンタンの不溶解分などと一緒にオイルをヘドロ状にしてしまいます。
(ヘドロ状を確かめたい人はガソリンに少量の硫酸を加えてみてください。危険ですので火気に注意)
最悪の場合は、オイルが流れなくなり、焼き付きを起こします。
オイルがスムーズに流れさえすれば オイルの減摩剤が少なくとも一応、エンジンは良好(?)と思われます。

 これは、”オイルが長期に使用できる”とする添加剤の考え方です。
一応程度であれば、オイルが汚れてもそんなに気にすることはないのかもしれません。
オイルに浮かぶスラッジや カーボン粒子がヘドロ状にならず、墨汁のように滑らかな状態であれば、通路を詰めることはないからです。
ですから、エンジンの経年劣化は仕方なくても、
オイル交換を何倍も持つものにするだけの添加剤を画期的添加剤として 宣伝することもできます。

 話変わって、メーカー側は大体オイル交換(SG以上)を1年間以内かつ、ノンターボ車で15000km以内、
ターボ車で6ヶ月以内 かつ、5000km以内としています。
しかし、そういっているメーカーが最初から有機モリブデン系高級添加剤を 使用していることに対して、
なんだか、しっくりこない感がして、仕方ありません。
はっきり言って、そんな 乗り方をしていたらエンジン音が、うるさくなり、他に異常があっても早期発見出来ないのではないかと 思えます。

(注*)メーカー指定オイルを新車から1000km毎に交換していた人が、10000kmを越えたあたりから エンジン音がうるさくなってきたと相談されたことがありました。(H8年式660cc)
もちろんオイルの汚れなど全くない状態です。エンジンが経年劣化するのは仕方ないことです。
オイルは 汚れなくても減摩剤が劣化しますが、ここまでの早期交換は資源の無駄使いに当たります。
(注*)どういう経過でこれを書いていたのか定かではありません。
ただし、有機モリブデンのFM効果はラボデータからも約3000−5000kmとされています。
(添加剤メーカーにお問い合わせいただけば納得出来るかも)


つまりその後は同じ調子で走行するとFM効果で音が静かだったエンジン音がうるさくなるわけです。
ことさら添加剤で静かにしてしまうと、効果が短命な添加剤ほどリバウンドが強く感じられるようです。
FM剤としても機能していないオイルですからオイル劣化の結果として摩耗量も増えることと思われます。
で、「オイル交換の期間」について書いているような気がします。有機モリブデンが劣化したとしても
エンジンオイルとしての機能は基準値内にあるのでしょう。
ですが、3000−5000km毎の交換が有機モリブデン添加剤入りオイルには最適な交換時期と思われるわけですのに、
それを15000kmの交換時期でまたシビアーコンディションの説明も無いまま
「保証交換期間」にしている事についての「含み」も入っているようですね。

現在の有機モリブデンは高品質になっていますが、それでも上記距離の範囲内で劣化します。
資源を無駄にせず、公害も極力出さなく、かつエンジンを長持ちさせてこそ、良い添加剤といえます。
本来エンジンを長持ちさせるだけ なら、毒性排気ガスを出す有鉛ガソリンだってOKでした。
ラジカルNOも現在規制されつつあります。(NOx規制)

 話戻って、実際オイル交換をしてみると、エンジンが良い状態であれば、清浄性の弱いオイルは当然汚れにくく、
清浄性の良いオイルは最初は汚れるかもしれないけれど、エンジンをクリーンアップするほど清浄性がいいわけではないので、
それほどには汚れないみたいです。
つまり、オイルは5000kmぐらいでは真っ黒になるほど汚れないようです。
もし汚れがきついようなら エンジンの圧縮か、ガソリンが濃すぎるのかといった、
別の症状とみたほうがよさそうです。


際限なく続きそうです。次のページへ

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