肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ22

エンジンオイルの添加剤は夏に効果的なのか−その2

オイル添加剤のオーバーヒート防止効果

エンジンオイルが冷却水と同じように、エンジンの放熱に関わっていることは以前にも 書いていますが、
ここではオイルに添加剤を混ぜるとどうしてオーバーヒートの防止に 役立つかを、見てゆきたいと思います。

 オイル「添加剤」自体はオイル中に、多かれ少なかれ含まれているのですが 、
その中でも特に発熱に関することを中心にみてみます。


冷却する理由から考えてみると、金属は熱に対してある程度強いのですが、
それでも分子レベルでは 圧力がかかると「溶けてしまう」ほどの高温になっています。
これは摩擦熱によるのですが、
自動車で特に摩擦を有効に使っているところの「ブレーキ」「タイヤ」を考えれば、
容易に想像がつきます。

 高速道路を走った後のタイヤの摩擦熱や、
ブレーキをかけたときの摩擦熱の熱さは想像できると思います。

摩擦熱がどれぐらいの熱量を持っているかブレーキでみてみます。
重さ1.5トンの乗用車が60km/hで走行して、止まるため
ゆっくりブレーキを踏み、停止するまでに全摩擦熱がどれくらいかを調べてみると
大体、摩擦の熱量は下記のようになります。(すべての摩擦エネルギーを取り出せたと仮定)

力学的エネルギーは4.2ジュールが、熱の1カロリーと相当します。

自動車が減速により失うエネルギーは

   自動車の重さ=m(kg)=1500kg

   速度=v(s=秒速)=60000m/3600秒=16.66

運動エネルギーは、1/2mv2と表されますので、

   1/2*1500*(16.66)2=208166.7(ジュール)

それを、カロリーに直すと

   208166.7/4.2=49563.5(カロリー)

100cc、20度Cの水なら80度Cにするには6000カロリーですから  

49563.5/(6000)=8.26

8.26*100=826ccの水を80度Cまで上げるだけの熱量が失われていることになります。

部分的には、オイルが瞬時に蒸発するか炭素化してしまう程の高熱なんですが、
全体としてみれば、オイルの 温度は(油温)100−120度Cぐらいまでにしかなりません
(普通の運転状態でのオイルパン内の油温)。 天ぷらなどは160度C以上ありますから、比較すれば多少低めです。
(けれども燃焼室では燃焼ガスの温度は2500度C以上になってますから、シリンダーなどが よく溶け出さないでいられますね。)

 こういった熱に加えて、摩擦による熱の発生が加わります。
冬でしたら、外気温も低く、ヒーターで熱も奪われますので、冷却効果が得られるのですが、
夏は吸気する空気も熱く、エアコンによる熱も加わり、エンジン内は文字通り「火の車」状態です。
夏に信号などで止まっていた自動車を急発進させるとノッキングが起こりやすいのもそのためです。

 ですから、チョイ乗りなら問題なくても、長時間の運転はエンジン内では過酷な状態になります。
もちろんオイルにとっても高温は劣化を早めますし、良くありません。
そこで、出来るだけ冷却を考えた方法を採ることが必要になります。
オイルの粘度を上げ、油膜保持をはかることも1つの方法ですし、添加剤で摩擦熱を極力抑えるという方法も あります。

特にバイクなどでは、ヒート気味になりやすいので、事前策として、添加剤が利用されています。

 油膜に関しては”ポリマー系(金属と親和性が強いタイプも含む)””コーティング膜系”、
摩擦熱を減らすということでは”固体潤滑剤””コーティング作用を持つ添加剤”などが、
オイルラインにへばりついたスラッジなどを取り除き、流れるオイル量を増やし、
直接オイルと冷却水との熱交換(軍手をはめてたら 焼き芋だって握れるでしょう。
無ければ熱い=直接熱が伝わってくる)を良くする事も、 有効です。清浄分散効果を強く持つ添加剤がこれに当たります。

一般に、通常使用油温からオイルの温度を10度C高くすると寿命は半分になるといわれています。
オイルの寿命を本来の寿命まで保つには「熱を出さない事と熱を逃がす事」は重要なポイントと言えます。

 長時間高速運転したオイルや渋滞を頻繁にしたオイルなどはかなり劣化しています。
また、そうなることが予想される場合、オイル交換や添加剤が一番メンテナンス的に簡単です。
高級なタイプのオイルや添加剤でエンジンを守るのはさらに良いことですが、
オイル管理はくれぐれも気を配って、夏を乗り切ってください。



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