肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ32

添加剤のせいでエンジンは壊れるか

「添加剤を使用して、そのせいで、エンジンが調子悪くなる事があった。」
と言うことを聞いたことがあります。
もちろん、その後その人は「添加剤嫌い」になったということはいうまでもありません。
私も、実はそういった経験が多くあります。中古車を扱う以上、避けて通れない故障といつも 顔をつきあわせている状態で、どんなにしっかり点検整備していたとしても本当に気が休まりません。
どんな機械も寿命があるように、部品のかたまりである自動車の場合、必ず消耗品があり、耐久性の差が あります。その寿命がどういった理由で起こるかがわかれば、対応できる部品もあり、また対応できない部品も わかってきます。

メーカーはそれぞれの基準の元に、保証期間を決めて部品を製作してそれに合うテストをくり返しています。 本当に地道なテストで、頭が下がります。けれど、自動車に組み上がったとき、その部品が何らかの理由で 耐久性が下がることもあり、または設計ミス、強度の設定ミスなどが持ち上がることもあります。
もちろん使用条件の差である場合も考えられますが、自動車の場合「当たり外れ的要素」がかなり色濃く 出ると言うことは誰もが気が付いていることだと思います。

けれど、それ以外に「添加剤を使用して、そのせいで、エンジンが調子悪くなる事があった。」と言うことを聞いたとき 「なるほど」と頷ける面と「それはどうかな」と首を傾げたくなる面があることも知っておく必要があります。
本当に添加剤が調子を悪くしたかどうかはさておき、
2つの出来事が続けて現れた場合、どうしても思考パターンとしてその「原因−結果」を結びつけたくなる傾向が 人には備わっています。

極端な例でいいますと、電光掲示板の文字が動いていくタイプやネオンの点滅など。 そのものは単に光のON−OFFなのですが どうしてみても、文字が動いているように見えてしまいます。 この場合、「光の点滅」(原因)は「文字が動く」(結果)として体験しますが、事実はどうしても 「光の点滅」(原因)だけ。 また、月が人の移動と共についてくる現象も、月が動くのではなく、 そのように体験してしまう現象です。 友人には悪いのですが、UFOを見たという報告の95%は錯覚か見間違いなどで、 残りの5%は「未確認飛行物体」=UFOとは限らない確認不明と言う事だけが「事実」。 (UFOの存在を否定しているのではないことをお断りしておきます。) 新車から1年以内に添加剤を使用してその後、(添加剤を入れずとも)調子が悪くなる確率など、 新車のクレーム件数を知っている方なら、相当数あることを知っていますので、 まして、エンジンまわりに関する事だけを集めても、7000万台にも及ぶ自動車について 添加剤を入れて数日間の内に故障する「偶然の確率」は(入れなくても起こる確率と同じとしても )相当数あると思われます。 計算は専門外で出来ませんが、 それが古くなったとすれば、メーカーがクレーム期限外としていることから 判断しても、理解できると思われます。 家電製品など保証期間はたった1年です。自動車はかなり長期に保証する製品と言えます。

数多くの自然法則を発見出来たのも、こういった思考パターンが備わっていたからなのです。
法則の場合、誰が再試験しても同じ結果が出る事が明らかなのですが、 いかんせん添加剤を使用しての結果として「調子が悪くなった」事が本当に再試験できないと、その「因果律」は 証明できません。逆に実験上では、悪い結果が出るとわかっていても、その症状が実際の自動車ですぐに出てこないと 「調子は悪くない」となり、「問題の無い添加剤」となってしまいます。

こういった例は枚挙に暇無いのですが、結果がわかると納得しやすく、 職業柄、時々経験するわけです。

1.三菱の軽4輪(H5)の4WDトラックで、ある添加剤を1万キロのオイル交換と共に使用していましたが、
  10万キロ近くでタイミングベルト・ウオーターポンプ・ベルト類・オイルシールなど交換した後
  エンジンから「カンカン」と異音がでるようになりました。
  「メタル音」に近い音で、エンジンの回転数に同調して大きくなるため「エンジンの寿命かも知れない」
  とユーザーにいって、「すぐには壊れないから明日引き取りに来ます」と告げ、帰りました。
  新車から管理していた車なので、自信があり、添加剤にもオイルにも絶対の信頼を寄せていたので
  不審に思う反面、「自動車の当たり外れか!」とも考えたりしていました。
  とりあえずオイルや添加剤のせいにも出来無いのですが、一応使用方法に間違いなかったか確認のため
  問い合わせていたところ、ユーザーからTEL。
  「ベルトが切れた」と言うことで「何のベルトですか?」「エアコン!」。
  そして、状況を聞くと、
  「エアコンが効かなくなり、エンジン音も元に戻った。」
  と聞くや、原因がはっきりしました。
  そういえばエアコンには添加剤を入れなかった事を思い出しました。
  その後、中古のコンプレッサーに交換し、エンジン音も静かになり、不安は解消しました。
  加速も良くなり、元の良い状態に戻り改めて、
  オイルと添加剤の疑惑も晴れたわけです。
    もし、乗り換えしていたら永久に謎(悪くいえば添加剤のせい)です。
 
2.セレナ(H4)走行10万キロ。添加剤を使用しオイル交換も1万キロ以上で高速道路を多用。
  ある日、始動時にカム音が大きく出るため点火系の交換と合わせて整備する事になりました。
  忙しさもあってよく知った外注先の日産へ出すことになったのですが、カム音がなかなか出ないらしく、
  もう少し預からせて欲しいとのことでした。
  10日ほど預けてやっと出たということで、音から判断しますと、
  カムへの配管のオイルラインが目図まりを起こしているかも知れない
  ということでした。よくある症例らしく、その部品を交換してもらうことになりました。
  交換後部品を確認すると確かに「針の先ほどの穴」が
  スラッジで塞ぎかかっています。メーカーでは対策品を出しているらしく、穴の大きさを大きくしているそうです。
  セレナはよっぽどオイル管理をよくしないと、ここが詰まるらしいということで、オイル管理をユーザーに
  薦めるように伝えて欲しいといわれました。
  けれど、部品を見る限り、確実に何らかの拍子にスラッジが詰まるほど小さな穴なので、
  いくら管理がしっかりしていてもこれはどうかな?と思ってしまいました。
  と言うことで、オイル交換も合わせて行い、いつもの添加剤も御要望で入れることになりました。
  今度はオイルもワンランク上げ100%合成をお勧めしました。
  けれど、しばらく使用していくと前ほど大きな音は出ないらしいのですが、今度は毎日のように
  カム音が数秒出るようになったと言うことです。オイル交換してそう経っていないのでフィラーから覗いてみると
  同じようにオイルの配管が黒ずんでいました。
  この配管がカムシャフトの真上のため、熱が残りやすのかも知れません。
  
  こういったワゴン系は特にアジャスターのオイルが抜けやすくなるようで、
  始動時については
  他の車のユーザーからもこのカム音について聞いていたらしく
  (知っている人の全員がカム音が出ることを指摘していたらしい)
  ユーザーはまあ諦めているようでした。
  しかし、聞いている話では5万キロあたりで出るらしく、
  音に対して説明をさせてもらうと10万キロも出なかった事に対しては
  納得されているようでした。
  
  いくら添加剤でも、このアジャスターの隙間のオイルを抜けにくく出来ないようで
  僅かに広がることは仕方なく思えました。
  過走行車や古くなると決まって出ることがあるため、
  この音が消せないことは構造上の問題と考えています。
  けれどもしこれを「添加剤のせいです。」と
  はっきり整備士にでもいわれたら
  そう思わない人の方が少ないでしょう。  
3.あるユーザーさんに紹介されてきたマーク2(GX71)のオートマチックのシフトが
  2速までしかシフトアップしないため、オーバーホールをするか、中古のATを
  載せ替えるかで、相談に来ました。
  たまたま、解体する予定の同じ車種があったせいで、値段を話していますと、
  「たまに、3速以上に入るんだけどね」と話してくれたので、
  「ダメで元々。一度添加剤を入れましょうか」と、言う話しになりました。
  たまにでも、3速に入ると言うことは、余程のことがない限り「クラッチではない」
  と思ったからです。
  でも、走行距離を見てやっぱりダメかなと(14万キロ)も思ったのですが、
  そのままATFへ「添加剤」を150ccほど入れ、各ポジションを行ったり来たり
  チェンジして、攪拌させました。
  2−3分後、どんな症状か確かめるため、ユーザーさん同伴で出発するのですが、
  何ともなってないようですので、
  タコメーターを見てもらい「どんな風ですか?」と聞いたのですが、
  いきなり「直ってる!」と言う返事でした。
  ここ2週間ほど全く変速していなかったのがうそのように直っているらしく
  喜んで、添加剤の代金を支払い帰ってゆかれました。
  こちらとしては、まるで何のことやらで、
  これを「添加剤がなおした」とも思われず、単にバルブが詰まっていたからか
  何かなんでしょう。ひょっとしたらまたなるかも知れませんよ。
  と言うが精一杯でした。(もう2週間経ちますが「戻った」とは言ってきません)
  こういう事は添加剤を入れることで、直ってしまうこともちょくちょく経験していますが
  根本的な修理ではなく、
  バルブや摺動部に詰まっていたスラッジが取れたりして、偶然のことかも知れません。
  と言うのも、完全に1速から繋がらない場合、やっても無理ですからね。
  ひょっとして、ATのオイル交換だけでも直ってたかも知れませんしね。
  (ともかく、添加剤を知っていると整備側にとっては損かも知れない例でした。)

4.ついでに、直らなくて別の症状だったATの例。
  ミニカH2年で突然シフトダウンするそうで、添加剤で直せないかと仲のいい
  整備士に相談されたので、1本渡しました。
  ところが「全然ダメ」と言うことで、症状が出る状況を尋ねますと、
  特に高速巡航時におこるそうです。
  なーんだとばかり「サーモスタット」と答え、交換してもらうことになり
  それ以降順調のようです。
  ATは温度でもシフトダウンする事が以前あり、
  結構悩んだ事がありましたので答えたまででしたが、
  後になって、「ミニカってそんな構造だったっけ?」と
  頭をひねるのでした。 
例を出せばきりがないのですが、「添加剤の影響」でエンジンの調子が良くなった場合、 「無理に」そのエンジンの出力などをフルに出そうとすると「壊れ易くなる」可能性は 否めません。
そういう状態になる車というのは遅かれ早かれ「寿命」に近づいていた場合がほとんどと 言わざるを得ない訳ですから、 何らか「整備」をしてあげないと、耐えられないわけでして、 「延命」とは切り離す必要があります。
もし、「延命」させようとするなら、今までと同じように運転して、いたわってあげてくださいね。


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