雑誌などや、ユーザーさんから時々聞くのですが、
オイル交換に「上抜き派」と「下抜き派」があるようです。
機械さえあれば、オイルのドレーンボルトを壊すことがない上抜きが簡単でしょうが、 早くからATF交換機やブレーキオイル交換機を持っていたにも関わらず、 「オイルは下から抜くもの」と思っていました。
で、「自動車工学」99年1月号にもその特集が書いてあって読んでみて、
今後上抜きを考慮した構造になっていく傾向にあると言うことが書いてあり、
便利になってゆくと思われます。
機械がないので、下抜きなんですが、
整備をすることを主体とすれば、ついでの下回り点検が大事なため
どうしても買う理由を見つけられません。
長年やってますとドライブシャフト・ラックブーツの破れや、オイルのにじみ・漏れ、オイルパンの凹み、
など、オイル交換と関係ないところ間で見てしまう癖が付いてますので、
下抜きで問題が出ない限りそうやっていきたい訳です。
で、オイルパンのドレーンの位置なんですが、大抵はオイルパンの横から付いている場合が
多く、これではすっきり抜けきらないのが判ってまして、いつもジャッキで
車体を傾けて抜く手間が掛かります。
大体は、抜けきったところから傾けますと、200-300ccぐらいはまだ落ちてきます。
最近のオイルパンは抜きやすいようになのか、
ドレーンボルトが真下に付いている物や、
ドレーンの位置が真下に来るようにオイルパンが斜めに付いていたりするものも
あるのですが、後者にあたるカルディナなどで調べてみたら、それでも
傾けた方が更に100ccほど落ちてきました。
以前はドレーンボルトを無理矢理きつく締めすぎたためか、何度も再使用したためかでの「パッキンの割れ・ボルト山の
破損」を見つけたり、そのようなオイル漏れでの修理を時々受けることがあったのですが、
量販店やスタンドが上抜きをしだしたせいかどうかは判りませんが、
そういった修理がめっきり減りました。
作業ミスをなくすためにも、良いことかもしれませんが、
これは自動車のメンテナンスがあまりいらなくなった事も原因でしょうね。
それほど下回りを点検する必要が少なくなったせいかもしれません。
(数年前の)正月2日に高速道路の駐車場に呼ばれて雪の中タップを切ったりして作業したことがけれど、オイルパンがへこんでいるのに気が付かず、上抜きで作業をしたため、
懐かしく思えます。(ほとんどのドレーンボルト+パッキンがストックされてましたので、
役だったのですが、理由はボルトの山が破損して、ボルトが飛んでありませんでした。)
もちろん正月料金を頂いたのですが、その後すぐ風邪をひき、さんざんでした。
整備した修理工場もさんざん小言を言われたでしょうね。
自動車によっては上抜きでは抜けないタイプや抜けても途中までしかオイルが抜けないタイプの
自動車もあるようですし、作業が丁寧でないとオイルを残したまま新油を入れられるかもしれませんので
ご注意を。
ユーザーの目の前で作業をして、オイル交換をしましたら、いつもより0.5リッター多いと 言われまして、ゲージも確認しましたが、ちょうど規定量だったので首を傾げていた方も おられました。底スリからボルトを保護するためにも、ドレーンの位置はやや高めの構造ですし、タペットカバーを開けてみても、 オイルが溜まっている構造ですから、オイル交換で完全にオイルを抜ききることは出来ないと思われます。
規定量は3.4リッター+エレメント分なので3.8リッター近く入ったのですが、 いつも3リッター(+エレメント分)しか交換していなかったようです。
これは作業の仕方によるものか、チェンジャーの構造なのか、自動車の構造から来るかは、 機械がないため判りませんが、確かに車体を傾けたら、300cc以上はまだ抜けたように思えますので 下抜きでも同じ結果なのかもしれません。
でも、オイルの性能を気にするなら、考えてしまうことでもあります。
「オイル自体が汚れること」と「オイルの性能劣化」とがどうも混同されているように思え、
時々気になるのです。
「良いオイル」はたぶんに清浄分散性能がいい場合が多く、エンジンがスラッジで汚れている場合には、
かなり早くオイル自体も汚れてしまうことが経験上確かめられます。
この汚れとは「比例せず」オイルの潤滑性能は高い状態にあるのですが、
きれい好きな人はオイルの汚れが嫌に違いありません。
これは洗濯で強力な洗剤を使えば、洗濯水が汚れやすい事と同様に考えられ、
繊維に付いた汚れが原因なのであって、洗濯水自体がそのためにもうそれ以上汚れを
落とす能力がないかどうかとは別の事になります。
また、そういった汚れに積極的に反応したりするわけですから、エンジン内で発生するスラッジなども
取り込みやすいわけです。
反対に清浄分散性が非常に弱いものなら、汚れに対して反応しにくいわけですから、
オイルが汚れにくくなるということが言えそうです。
ただし、エンジン内では同じように汚れる原因が作られていくわけですから、
オイルが汚れないと言うことはエンジン内部のどこかに汚れが付着することになります。
エンジンを主体に考えれば、オイルは汚れても仕方のないことで、オイルが汚れることで、
エンジンの機能が十分発揮されるわけですから、汚れとは関係ないオイルテストがされています。
パネルコーキングテストとホットチューブテストなどですが、これらはスラッジやワニスなどが試験片に
どれだけ付着するかどうかのテストであって、オイルそのものの「汚れ」が、特に問題とされるテスト
ではありません。
と言うわけで、オイルにはいくつもの役割がありますので添加剤自体もいくつも入れられる羽目になってしまったのです。
それぞれのバランスがオイルの使用目的で変わることも無理からぬ事です。
オイルの汚れに関して、それはオイル交換の目安になるかもしれませんが、
性能劣化の目安とはならないかもしれないのです。
で、汚れたオイルを綺麗にすることでリサイクルを考えたら、省資源に貢献する
と思われるのですが
実際は再利用は10%以下。それも濾過や減圧蒸留や遠心分離などでは品質が落ち、
オイルとしてではなく「燃料」として使用される事が多くなってしまいます。
最新の方法でオイルの不純物を分離しようとしても相当コスト高になってしまうため、 なかなか「再生紙」のように定着しません。
使用された廃油には
引火点が低下し、動粘度が不安定で(酸化劣化・スス混入=粘度増加、燃料・ポリマー剪断=粘度低下)
中和価は全酸価増加・全塩基価減少、窒素分も不溶解分も増加します。
金属分析ではオイルの添加剤成分のCa・Zn・Pや摩耗した金属のAl・Fe・Cu・Sn・Pbなどが
多く含まれています。
出来上がった再生油(超臨界抽出)は、ほぼ外見からは新油と見分けが付きません。
主立った金属成分やススやオイル中の添加剤成分(高分子ポリマーを含む)なども取り除かれ、
方法によっては、燃料成分も分離できる可能性も見えてきました。
ただし、粘度は柔らかくなり、触媒被毒に関心が寄せられているPやオイルに溶解してしまったCuが残され、
劣化成分のジチオリン酸亜鉛の分解物や、カルボニル化合物やニトロ化合物を減らすことが
難しそうです。
こういった抽出装置の改良に加え、添加剤添加後の性能テストがなされて、今後は、 「再生オイル」が市民権を得て市場に出回る日もそう遠くないように思われます。
オイルに限らず、汚染する事が簡単で、それを元に戻すことがかなり難しいと言うことは、 今後とも話題になってゆくことでしょう。
そう考えてゆくと、そう簡単にオイル交換をしてしまうといったことにも、 抵抗を感じてしまうこの頃です。
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