段々と寒くなってきました。冬になると特に感じるのが、ATFの暖まりにくさです。
いつも(春−夏−秋)なら、シフトアップ後のオーバードライブへ入るまでの時間が5分前後なのに、
最近は
もっと掛かってしまいます。これからもっと寒くなりますと、10分ぐらいはダメでしょうね。
エンジンも多少重く、アクセルも僅かに踏み込まなければスムーズに走ってくれません。
そして、調子よくなったと思ったら家に着いてしまいます。
エアコンも窓の曇りを消すために入れるようになり、なおさらです。
とはいうものの、毎年のことですし、オイルは5W−50ですから、ことさら
交換の必要もないのですが、やはり冬は冬専用に柔らか目に交換していた頃の方が、
納得いく選択だったかどうか考えてしまいます。
通勤だけなら多分交換していたかもしれませんが、時々高速使用や遠出をしますので、
1年を考えてこのオイルに落ち着いているわけです。
ガソリンなら夏用・冬用で違いがあるのですが、オイルは短期間で交換する事もないため、
どうしても夏を中心に考えてしまうわけですから、
比較する事が間違いかもしれません。
最近の傾向は省燃費がもてはやされ、新車のオイルが5w−20、30ぐらいの柔らかさになっています。
つい最近までの冬用のオイルです。
最初指定オイル粘度だけを見て、夏にこれで良いのかと考えてしまったことがあります。
メーカーでは問題ないという事なのですが、
まあ、今までのオイルより性能も向上し、摩耗もしにくくなっているので、と言いながら、
こちらのユーザーさんには下が5wでも必ず上が40のオイルを入れています。夏が問題だからです。
メーカー側としてもオイルの温度が150度cの高温・高剪断(HTHS)の規格があるため、
高粘度指数オイルを使用せざるを得ず、ベースオイル(基油)に粘度指数が高いものを使用するとか、
粘度指数向上剤にポリマーを使用しているわけですが、物理的剪断は避けられず低粘度に劣化してしまうため、
油膜では無理なところを見越して、高温側は、FM剤に有機モリブデンなどを使用して摩耗を避けるように
している訳なのです。
「剪断安定性が今までのものより2倍も良くなった。」という、
オイルのレベルアップの報告があって、感じたことは
「では一体今までのオイルの剪断安定性どれほど低かったのか」と、
逆に疑問に感じられました。
裏を返せば、ポリマー自体の進化はあるでしょうが、ポリマーは必要最小限で済ませ、
最終的にはベースオイルの方に力点が入れられるように
なっていくのではないかと思われます。
環境汚染問題や省資源問題に伴い、オイルのロングライフ化は、
ただいま過渡期と言えるのかもしれません。
ただし、普通、冬から春の間だけでしたら30でも20でも問題ないし、高粘度で「重い」と言うより、
省燃費にも良いわけですから
本当はそう言った選択が必要なのかもしれません。
通常で、頻度の高い走行での油温は、2000回転前後での「中低油温」が中心です。
このときのエンジンで摩擦によってロスとなるトルクは、大体は粘度と相関関係があるため、
燃費向上に最もコストが掛からず効果的なのはオイルの「低粘度化」です。
それで、添加剤を使った例で、粘度が高いものが耐久性がよいかどうか、
あるメーカーからテストした結果をお聞きしたところ、一般で良いと評価されるものであっても、
レースやジムカーナなどではすぐオイルが
剪断されてしまって、だめになるそうで、「剪断安定性」と言うものが
いかに大切かを強調されてました。
いわゆるポリマーの類で、考えてみればポリマーというものは同じ構造の分子配列がたくさんつながって
出来ているわけですから、その分子の並んでいる長さが多ければ多いほど切れやすくなります。
ある限界を超えると極端に剪断されてしまいますので、なおさら悪いわけです。
高粘度のポリマー系オイル添加剤については随分試してきましたが、
思ったほどの効果が期待しにくいと言った感想を持っています。
これはエンジンの気密性が余程悪くなってない場合には、かえってオイルの抵抗の方が目立つようになるからですし、
始動時はオイルだけでなく各部も正常なコンディションになっていないし、
オイルだけのせいにするには酷なことかもしれませんが、
2000ccクラスなら120km/hで走行してもエンジン性能の半分さえ出していないわけですから、仕事柄、いろんな状態のエンジンをさわってきたわけですが、軽自動車に15wは入れません。
粘度による抵抗の方が、僅かなコンプレッション増加に比べて抵抗になるのもやむをえません。以前は日本では始動から停止までの時間が短いため、オイルが十分暖まらない内に起こる 「低温スラッジ」が問題にされていまして、トラブルの原因にあげられたわけですが、 随分改良され、スラッジ化に対処するエンジン設計も現れてきています。
加えて最近は省燃費性が強調されて、オイルの低粘度化にもなってきているわけです。
けれどこういう傾向にも関わらず、排気量神話、高級車志向はなくならないのが不思議ですが。
普通に使用している自動車の場合(最近は少なくなってきましたが)ほとんどステムシールからの
オイル下がりで(ターボ車はターボのオイルシールも多いですが)、そこが原因で直ってしまうことの方が多いです。
部品精度を向上させ、摩耗を減らし、気密性(クリアランス)も良くなっていますので、
柔らかい高品質オイルでも剪断安定性が優れた添加剤を使用して耐久性を持たせるよう研究が進んでいるので、
最新型エンジンでの低粘度オイルの使用によるトラブルはあまり聞きません。
だからといって、旧型エンジンで最新粘度が使用できると言うことにならないのですが、
もし使用するなら、冬の間だけ試してみても良いかもしれません。
昔はシングルオイルで季節によって、使用方法によって交換したわけですから、
半年でオイル交換される方には薦められる方法かもしれません。
コンプレッションが問題となれば仕方ないですが、大抵それほど問題にならず、始動時の快適さの方が
目に付くと言った効果が出るやもしれません。
(ちなみに、一般競技用車両は夏が15w−50あたりを使用していましても、冬は0(5)w−30(40)の粘度に
しています。)
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