肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ39

慣らし運転が必要かどうかについて
慣らし運転が必要かどうか、考え方によって様々な意見が聞かれます。
基本的に、短期間・短距離で乗り換えてしまう場合、
経費的に削減をしようと思えば「必要がない」と言った考え方もできますし、
「何が何でも1000kmあるいは1ヶ月点検時には交換するものだ」と言う考え方にも
理解できますし、
「今まで慣らしなどしたことがないが別に不具合は出たことがない」と言う実際例を出されれば、
まあ慣らしなどしなくても、すぐに壊れてしまうわけでもないし、
それも正論と言わざるを得ず、
まあ、慣らしが無くて壊れるようではね・・・と思ってしまうのも事実です。
この「慣らし」(運転)と言った事は、例えばラボテストや論文などで
試験油の比較などを扱う場合に
行われている場合が多く見受けられます。
これは測定するモデルのばらつきが多すぎると比較資料としては正確さに欠き
少しでも誤差をなくした方が良いわけですから、行うわけです。
低負荷で所定時間「なじませ」てから、本題の実験に移るわけです。
その際低負荷時の資料の「ばらつき」自体も比較できるわけですから
測定で必ず付きまとう製品の「ばらつき」も、どのくらいあるのか
わかるわけですし、あまりにも誤差がある場合は「はねて」別の資料を
選択することも出来るわけです。

内容的には資料の表面にある凸部の標準偏差を塑性変形させ減らすことなど、
金属表面の粗さを一定値に下げることが目的のようです。
(トライボミューティションtribomutasionによる別の説があります。
この場合はある程度初期段階で高荷重を掛け、金属の表面を出来るだけ薄膜厚で改質してしまった方が、
長期的に摩耗量が少ないという現象です。)

ただ、オイルメーカーからの資料ではエンジンオイルに各種の金属をあらかじめ必要以上に入れ、
それがスラッジなどの原因になるかをテストしているわけですが、
ほぼオイルの劣化に影響していないと言うことで、
(金属表面についてはどうか知りません。摩耗に関するテストではないそうなので・・・)
「オイル自体」は慣らしの金属粉まみれの状態でも、別段気にしなくても
良いということを聞いております。
「摩耗に関してはオイルメーカーの責任でない」と言うことと、
摩耗粉によるアブレシブ摩耗を考えれば、
良いと言うことは言えそうにもありません。

ギアオイルの極圧性能を見るテストなどで、耐スコーリング性能(ギアの傷を調べるテスト)に
一気に荷重をかける方法(Shock Load法)と、
段々と荷重をかけて行く方法(Step UpLoad法) 
がありますが、
最大極圧(=チムケンOK荷重)が高いPb−S系ギア油が耐スコーリング性能が悪く、反対に
チムケンOK荷重が低いZn系ギア油の方が耐スコーリング性能が良いという場合の評価に
「なじみ」の問題があげられています。

Pb−S系はなじみ効果が少ないために、傷が付きやすく
Zn系は高いため、傷が付きにくいというものです。
ちなみにギアオイルでは粘度が高くなるほど、耐スコーリング性能が向上し、
閃光温度
(凸部同士が当たる時、瞬間的に高温になるその温度上昇。この場合約200−800度c。
各種オイルの差や歯車の回転数、荷重によって変化する。)が、
スコーリングに密接に関係している事がわかっております。
また閃光温度によって金属の組成も変わってくると考えられます。

「なじみ効果」は慣らし運転に関係があるとも言えそうで、
「マイルド」な摩耗か「シビア」な摩耗かと言う、摩耗のさせ方一つでも、
その後の摩擦表面の状態を変えてしまうことがわかっております。

それで、例えばクランク軸受けのメタルベアリングなどでは、
あらかじめ摩擦する表面にオイルが付きやすいように加工が施されていて
圧力がかかると、なじむような設計になっています。

ただ難しいのは、初期における摩擦表面の状態をどうするかと言うことです。
いきなり高負荷を掛けても普通の走行であれば
償却年数を短く取っている人にとって、問題が起きることなどまずありません。
あったとしても保証期間内の出来事であれば、
対応が簡単ですし、そもそもリスクマージンとして耐久性能テストがなされているわけですから
起こりうる理由としては設計ミスか精度のばらつきによるものかぐらいと言えそうです。

怖いのはその耐久性能です。
オイルメーカーが責任がないにもかかわらず、オイル交換をオイルの耐久性能と
別に考えているのが不思議なのです。
つまり、まだまだ長期使用するユーザーにとっては潤滑油でメンテナンスを考える理由があるわけといえます。
ここに、慣らし運転の必要性が生じてくるわけで、新車からオイルを選ぶ理由、添加剤を考える
理由があるわけです。
(「まじめにエンジン設計をすれば、軽自動車でも40万キロぐらい
壊れるはずがないのですが・・・」と誰かがぼやいていました)

何時までも新車の状態を保ちたいという事はコストのかかることです。
初期状態を良くしても、後が続かなくてはやはり耐久性が保てません。
新車から確実に各部の摩耗は始まっていますが、
過剰な整備は必要なく、要所要所をきちんとしていれば結構末永く車とも
付き合いが出来るものです。
 

慣らし運転をしないといけないかどうかについては、結局、そのユーザーの考え方次第のことであって、
別にどうこうと言った問題が起きていないのが実状です。
しかし、20万キロぐらいを走行する予定であれば、それなりにしておいた方が無難と言えます。
金属摩耗はどちらかと言えば初期に多く出るのが普通で、
最初が肝心なのは言うまでもありませんが、
だからと言って本当に個々の自動車で耐久性が伸びるかどうかは
意外と別物のように感じられてなりません。
少なくとも、たとえエンジンの別の意味での「あたり」が悪かったとしても、
それなりの対応をしていれば、結構長く付き合えるものですが・・・。
いつも身近に正しい判断をしてくれる整備士さんなどを味方に付ければ万全です。
技術者はちょっと堅物のように思われがちですが、話しをしてみれば、ユーザーにとっては
親身になってくれるはずです。(最近そう言った人も少なくなりましたが・・・)

それで実際にはどうするかと言いますと、
まず初期なじみを作るためには中負荷(3000rpmあたりまで)で、約1時間−2時間も走行すれば
良いことになってしまうのですが、それでも金属粉はその後も相当量出ます。
別のテストでは4000rpmで行っている例もあります。
軽負荷でののろのろとした低回転数で運転することは、かえって「慣らし運転」とならないようですね。
(テストデータはクロムコーテイングのピストンリングとシリンダートップリング反転部位の摩耗量比較)
シビア摩耗が起こる回転速度かそうでないかを判断するのは難しいのですが、
そもそもシビア摩耗が絶対的にいけないと言えるわけではないという説もあるわけでして、
このあたり判断に迷ってしまうわけです。
2つの摺動部の材質などをはじめ、さまざまな摩擦形態や
その組み合わせを持ったエンジン摺動部では、全てに良い「慣らし運転」などあり得ないと思えてしまうほどです。
少なくとも「オイルの品質」はかなり初期の慣らしには影響があるらしい事が指摘されています。

金属粉は大体2−3回のオイル交換ぐらいまで出るというのが現場での状況です。
ですから、デフやギアーオイルなども最初は早めに交換しておいた方がいいでしょう。
少しの金属粉でも気になる場合は、エレメントはオイル交換の都度、行っておいた方が
「精神衛生上」良いかも知れません。
普通、Zn系の添加剤は十分エンジンオイルに入っていますので、これで表面を整えるわけです。
0wや5wなどの場合、大体の場合、有機モリブデンが加わります。
(API、SM規格になってからは有機モリブデン配合オイルも減っているようです)

オイルの選択:

慣らしに使用するオイルを選ぶ場合の目安は下記を調べます。

○オイルの基油分類(鉱物油、、部分合成油、PAO合成油、エステルなどに分かれる)
○オイルの規格(API/SMとかACEA/A3など)
○オイルのグレード(SAE/0w-30、10w-50など)

新車に使用されるオイルからオイルを選ぶわけですが、使用が推奨されるオイルの大まかな基準は
整備手帳(サービスマニュアル)などに記載されています。
例えば省燃費設計のエンジンで
0w-20と5w-20、0w-30、5w-30が使用出来、
規格はAPI/SH、SJ、SL、SMが使えるとします。

この場合の基油分類は多分すべてありますので予算で選べば良いでしょう。
どのような基準でオイルを選ぶかは
もちろん慣らし方の方法で随分変わってきますが
エンジンを掛けてから止めるまでの慣らし中の走行距離と時間で決まります。

30分以内なら基油はやわらめで良いので0w-20か5w-20で良いでしょう。
この場合、基油は鉱物油でも何でも構いませんが出来れば規格はSJ以上をお勧めします。
1時間以上ならオイル皮膜が温度で薄くなりますので5wー30と基準内の硬めのオイルを使用し
基油も上質な部分合成油以上のタイプを選択されると良いと思えます。
もちろん規格はSL、SMにされた方が良いでしょう。


ただ、添加剤を考えられている方にとってはまた別の方法があります。
この場合、(多分)すでにメーカーから出庫する際に結構金属粉が出るような運転をされてますので、
すぐオイル交換+エレメント交換はした方がいいでしょう。
そして信頼できる添加剤を入れ、後は普通走行してください。
優秀な添加剤であればあるほど慣らし運転を別に気に掛けることはなく、また、
それぐらい出来ないような添加剤でしたらあまり意味がないわけです。
もったいないと思われる方は、1000kmあるいは1ヶ月点検時にされたらいいでしょう。
ただし、それでも上記と同じようにエレメントは2−3回ぐらいオイル交換と一緒の方が
良いでしょうね。やっぱり金属粉は出ます。

そんなに気にならない方は最初から高負荷運転だけは避けて、普通にオイル交換されたらいいでしょう。
ただし、5000kmか6ヶ月点検時ぐらいまでにはオイル交換+エレメント交換をお薦めします。
初期摩耗で綺麗に不要な部分を研磨することは、気密性(圧縮圧の確保)にとって重要と思えるからで、
その後のエンジンの調子も最初の研磨によってある程度方向付けられるからと思えるからです。
新車時に各種材料のコーティングをされているエンジンもありますが、
それも、そういった考えからきていると思われます。
ですから、新車時の添加剤投与も予算が許せばした方が良いと言うことになります。
(ちょっと過剰メンテかもしれませんが)

以上がこちらでの対応ですが、
何を隠そう私は添加剤無しの普通走行以上という方法でした。
ただし3000kmで交換しましたが、すごい金属粉でした。
当時はいずれ乗り換えるのが早いと思っていましたので、ちょっとルーズに構えていたので、
最初から6000回転などで加速したり、フルブレーキテストをやったりで、
今こうやってHPを書いているなど信じられないくらいです。
その後「改心もせず」、この自動車で様々な添加剤やオイルの過酷なテストをくり返すわけで、
本当にかわいそうな自動車だと思います。ただしテスト時はほとんど2−3000kmでオイル交換でした。
けれどこれからは大切にしていこうと思ってます。

で、燃料の添加剤のテストが一番こたえました。
様々な添加剤を溶剤で薄めた物ですから、オイルに入って行き、相当スラッジがひどかったのと、
その間、2年間の期間はオイル交換なしで、
こういうテストでの走らせ方ですから、20万キロまで乗るのに心配になってきた理由があります。
ただし、性能面では今のところほとんど劣化らしき物が感じられないのも不思議なものですね。
あたりが良かったのかも・・・。


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