肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ59


オイル粘度をどうやって選ぶか?・・その2

粘度を考えた場合に、よくお聞きする事例は、下記の2点が多いようです。
1.ある程度走行距離が伸びた方が、フィーリングが良く感じる。
2.最初が一番調子が良く、ある程度走行距離をのばすと、オイルの劣化を感じる。

1.は最初がエンジンの特性から言って、やや硬めと言えそうですし、粘度が剪断や燃料その他によって粘性を
下げた結果と言えそうです。オイル自体は酸化などによって粘度が高くなるのですが(その結果がスラッジ、ワニス化)
粘度指数向上剤などはポリマーですから、剪断によってその効果を高温時に保てなくなり、高温時に特に粘度低下を
起こすことになります。(もちろんガソリンなどのオイル希釈も関係します)
高温時と言うよりも普通使用する温度領域でエンジンの特性とうまくマッチすれば、
必然的に良好なフィーリングが得られます。
ですから、相当高い粘度のオイルを使用していても、始動時の重たさなど意に介さず、
登坂路や高速道路などでの長時間走行で、最高にフィーリングが良くなる事を体験した人は、
決まって、高粘度側を選ぶ傾向が多いみたいです。
この場合は、油膜の気密性と関係があるように思われます。
また、始動時の粘性抵抗がオイルの温度上昇に伴って減少するために、比較が判りやすく、エンジンの
フィーリングが向上したように感じられるのです。
けれど最近のエンジンの傾向は、クリアランスを狭く取っていますので、
それほど高粘度を使用しなくなってきたことも事実です。
が、走行距離をのばす、あるいはオイルの高温域を重視される傾向の方にとっては、
頻繁なオイル交換よりコスト的にも好都合かもしれません。

特に高粘度オイルや広い範囲をカバーできるマルチタイプを使用している場合がこの場合、顕著に感じるようです。
 

2.はオイルに含まれる他の添加剤などの性能が劣化して行くことや、
合わせて燃料によるオイル希釈や1.と同様に剪断から粘度低下が起こり、気密性が不足気味になる事が
原因なのかもしれません。
特に最初から、違和感があるような硬さや柔らかさを除けば、
低粘度オイルは始動性、ポンピング抵抗などに低減効果があるため、余程クリアランス不足でなければ、
最初からエンジンの特性を最大限出せるようになりますので、後は「劣化」して行くだけになります。
オイル交換されて、エンジン音が静かになるなどの効果は、オイルの劣化を顕著に感じることでしょう。
また、始動時は良くても、長時間走行すると、エンジンが元気なく感じてくることがあります。
俗に言われる「オイルの熱ダレ」の症状ですが、低粘度オイルでは出やすいことがあります。
油温が下がると、元のように元気になる場合も多いのですが、
元に戻らず、「オイル交換」になってしまう事もあるようです。
オイルメーカーも10w−40と5w−40を比較した場合、10wの方が持ちがいいとしているようです。

オイル粘度をどう選ぶかは、上記の事柄をふまえて、
使用する期間・外気温の状態・走行パターンによって様々に変わるわけですが、
エンジンの特性や冷却能力の状態によって変わることは言うまでもありません。
けれど、普通は、新車からあるパーツの特性の変更をされることはまず、される方も少ないでしょうから、
(例えば、ロムチューン・ウオーターポンプのプーリー径の変更・オイルクーラーの能力向上・クーラント特性変更・サーモスタットや
水温センサー作動温度変更などなど)

1.オイルの耐久性を中心に考える
2.摺動摩耗(自動車の耐久性)を中心に考える
3.始動時のフィーリングを中心に考える
4.始動時以降の使用フィーリングを中心に考える
5.それ以外を優先する
などで、新車の指定粘度を無視して選ぶことが可能になり、使用目的で快適に感じるオイル粘度を探す事が出来ます。
一般的には、
1.オイルの耐久性を中心に考えると
オイルの耐久性はベースオイルやポリマーや油温との関係が深く、「何が何でも高粘度の方が持ちが良い」
とはかぎらないわけですが、普通の走行では低粘度オイルよりは高粘度オイルの方が長く使用できると思われます。
オイルの蒸発する温度も粘度が高い方が、すこし高い温度まで蒸発しにくいですし、
やや硬めのオイルの方が高温域での油膜保持にも効果があるため、
オイルの使用期間としては低粘度の物より長く使用できそうです。

ポリマーが剪断されても、ベースオイルの粘度は随分持ちますし、
クリアランスの広いタイプでは、気密性・オイル消費が粘度と深い関係になりますので、
(オイルが減って来ますと「継ぎ足し」をされる方は圧倒的に少なく思われ、いっそのことと、
「オイル交換」される方が増えていますので)
当然、「動粘度、100度Cでのオイル膜保持性が良い方」を選ぶことになります。

ただし、あまりにも基油に硬い物を選んだり、ポリマーなどを入れて粘度を上げ、高温域での粘度が低下しにくくなりますと、
耐久性は良くなる方向になりますが、油温が低温の場合のポンピングロス、始動性などにも影響が出ますし、
特定の中高温域でだけの好フィーリングを指向する狭い守備範囲のオイルと言えますし、
一般向きとは言い難くなります。
出力全体において粘性抵抗や摩擦抵抗がどれぐらいの割合になるかも大切な要素です。
つまり、オイルが硬いと言うことはオイルの内部摩擦抵抗と言うことであり、
硬いオイルの方が一般的にその内部摩擦抵抗が大きいと言うことで、運動する物体に対して、特にその運動が
高速になればなるほど大きな抵抗となるわけです。
それと関連して、ピストンリング等の追従性にも必ずしも最適とは思えません。

最も頻繁に使用する温度帯を中心に考えるが良いのですが、始動性・スラッジ・デポジットの発生や省燃費も合わせて考え、
油膜の薄くなりがちな高温域をカバーできる製品を選ぶことになります。
必然的にと言うか、粘度−温度変化の少ない(粘度指数の高い)合成系オイル(低温で柔らかく・高温での油膜保持が出来やすい)を
ベースとしたオイルになり、専断されにくいポリマーを使用した、エンジンの出力にあった粘性抵抗を持つタイプが選ばれることになりますが、
このあたりは添加剤の性能とも深く関わりますので、
一筋縄とならないことになってきます。

ただ、マルチグレードオイルにせよシングルグレードオイルにせよ、オイルが何を持って劣化したかを判断することは、
一般ユーザーには難しいことです。
定期的に使用中オイルを分析し、含まれる金属成分その他によって、機器にどれぐらい損傷が発生しているかを
随時観察する事によって確実性を高めていくわけですが、
その本質は機械(エンジン)の償却期間との関連で考えて行かなくてはならず、
こういったことも、合わせて考えて行きますと、
自動車においては、ユーザー自身のオイルに対するリスクマージンの取り方になってしまうのかもしてません。

感覚的に言えば、「エンジンのコンデションが良好と感じている間」は、オイルがそれほど劣化していないと判断できますが
不具合が発生してからでは遅すぎますので、
一般論になってしまいますが、鉱物油ではメーカー指定粘度をカバーするグレードオイルで3000−5000km程度。
部分合成油ではその1.2−1.5倍の5000−7500km程度
(指定油はほとんど部分合成油になってますので、こちらで5000km程度と考えた方がいいでしょう)。
そして100%合成油では約2倍(部分合成油を基準にして1.5倍程度)の10000km程度までがオイルの耐久性と言えます。
使用期間の限度としては、走行距離がそこまで走っていなくても、添加剤成分が劣化してしまうため(ベースオイル自体はまだ使用可)
約12ヶ月までとした方が良さそうです。
あるメーカーさんは「一般ユーザーさんには合成油でも5000kmまでと言うように。」として、
メーカーサイドのリスクマージンを取っているようですが、
使用状況が様々に異なる為、当然と言えば当然の言明と言えます。

固体潤滑剤や有機モリブデン自体は大体3000km−5000kmでその成分の効果が薄れてきますので、比較的に感覚的に
分かりやすいかも知れません。

耐久性を考えたオイル選びとしては、
a.短期間過走行タイプ
b.長期間小走行タイプ
c.高温域多用タイプ
d.低温域多用タイプ
の4つの形に分類できると思われますが、実際の使用状態はその複合タイプであるため、
一番エンジンにダメージを与える使用状況に焦点を合わせて耐久性を考慮するようにしていることでしょう。
ただ、高級オイルになるほど耐久性は良くなっていると思われますので、
同じ使用期間・走行距離で償却を考えられているなら、
W(ウインター)側を下げてみるのもフィーリングが変わりいい感じを出せるかも知れません。

また、大体において、後から入れる添加剤は「高温域」を対象としていることが多いため、
そういった商品を加えられてみるのも良いと思います。
油温が高温域で10度上昇すると、オイルの耐久性は半分になると言われていますので、
特にオイルの延命効果を謳っている商品は、
オイルの冷却性能・摩擦熱緩和性能をその「摩擦係数減少」「極圧性向上」「清浄分散性向上」「全塩基価向上」
などで、補っていると思われます。
酸化劣化は添加剤成分が劣化してしまいますと加速度的に進行して行きますので、
オイルがある程度劣化してしまった状態で「補充的に」途中添加するよりも、
少しでも初期の状態から添加する方が効果的と思われます。
特に「清浄分散性向上」は洗濯と同じように、洗濯石けんが多く入っていれば良く落ちるという物でもありませんし、
あまりオイル中に割合が多いと、その添加剤自体の劣化や金属腐食と言う影響が出ますので、
添加量は「ほどほど」と言うことが大切になります。
また、PAOなどのベースオイルには添加剤成分が溶融しにくいと言う特徴を持ちますので、
後入れ添加剤が鉱物油・合成油などオイルと良くなじむか(鉱物油用添加剤と合成油用添加剤とは
異なることが多いため)
、添加量が溶融する規定量を越えないかどうか(も大切になります。

また、日本は多湿な環境と言うこともあり、使用される前のオイルの水分含有量が使用中オイルに影響を与えることが、
考えられます。
在庫で眠っていたオイルの缶は空気中の酸素と水分によって少しづつ劣化・あるいは
添加剤成分の沈殿(大体は白っぽい沈殿成分)がおこっています。
特に、空気に触れやすい開封後は湿気などの影響も受けやすい為、見た目以上に耐久性は無くなっていくと思われますので、
購入の際、特に古い製品でないかどうか、保管がきちんとされていたか(これらは判断しにくいのですが)よく気を付けて買い、
余ったオイルの保存方法には出来るだけ湿気の少ない、温度の変化の少ない冷暗所に保存された方がいいでしょう。
オイルにとってビンテージ物は「稀少」かもしれませんが、決して性能維持された物とは思えません(笑)。

オイルをドラム缶で購入している整備工場の話なのですが、最初に使用したオイルの性能と、最後あたりで使用するオイルの
性能が若干違うように感じるという話をお聞きしたことがあります。(=部分合成油で約6ヶ月以内に全量使い切るようです。)
この場合は、ポンプでのくみ出しですから、常時空気にも触れ、空気と混じる傾向も多くなります。
また、開封後、約2年程度使われなかった余ったオイルを目で比較したのですが、
明らかにオイルに曇りがあって、わずかですから捨ててしまった記憶もあります。
缶詰タイプの缶(1リッターor0.5リッター)であれば使う量だけ開封しますのでそれほど気を使う必要もないのですが、
業務用としては割高になりますのであまり使用できません。(余ったオイルもユーザー請求になり、ユーザーさんへの負担額も増えますし)
で、どうしてもペール缶(20L)での仕様になり、これなら定番オイルで4種類=4缶ありますが、
開封後長くても2ヶ月以内(普通は1ヶ月以内)で空きますので、品質管理が楽になります。
(ただし、別にあるミッションオイル・デフオイルは約6ヶ月ほどかかることがあります。けれどミッションケース内では長期間=長ければ
5万キロ/5年間以上、に渡って使用されていますので特別問題はないでしょう。)
一般のユーザーさんが使用する場合、合成油の場合でも1年以内で使い切るサイズが適当と思われます。

また、低・中速回転(1000rpm〜2000rpm)での劣化と高速回転(3000rpm以上)での劣化を比較しますと、
シリンダー部では両者とも高負荷状態で油温上昇・酸素濃度と未燃焼ガスなどの炭化水素濃度が上がって行くわけです。
異なるのは、NOx濃度で、空燃比の関係から中速回転域で多く、オイルのシリンダー部での入れ替わりも少ないため、
オイルパンでの使用油の劣化状況と比較すると高濃度(=劣化速度が速い)になっており、劣化を促進します。
これにアイドルアップなどの要素が加わると、シリンダー内部はさらに過酷な状況下にあると言えます。
オイルがピストン部あたりで最も劣化しやすい状況で、低・中回転ではオイル循環がスムーズでないため、
普段は低・中速走行を行い、たまに高速高負荷走行をする状況にある車両にとって、
オイル管理は特に大切な事柄と言えそうです(=早目の交換が望まれます)。

つまり、普段、通勤20分前後で、会社が終わるまでの間に6時間以上のエンジンを止めて、またエンジンをかけるような
繰り返しの使用状況の方が多いわけですが、
こういった長期間短距離走行のため、オイル交換までの走行距離も伸びていないため、
そのままのオイルで、高速走行を長時間するという走行パターンがどうも一番良くないみたいですね。
またこういうパターンを繰り返される場合は、出来れば合成油の方が安心と言えるでしょう。

それで、粘度をどういった具合に取るかは、
どちらかと言いますと「経験知」的な事柄になるのですが、
新油を入れたときの状態で言えば、若干「重く感じる」程度を選ばれた方が、具合がいいようです。

また、その重く感じる程度は、クリアランスの巾や外気温、ベースオイルの種類(合成・部分合成・鉱物)によっても
変わってきますので、
標準オイルが鉱物油で10w−30であれば、合成油ですと10w−40が同じ雰囲気になることが多いようです。
10w−40の部分合成油を使用されている方が、超精製油のような鉱物油で10w−40を使用されますと、
雰囲気としては合成油(部分合成油)の15w−50を使用されたように感じることも多くあります。
比較として油温が上がる前の状態で5w−50の合成油を使用しますと、5Wの柔らかさよりも50の方の重さを感じることがあり、
特に小排気量のエンジンで粘性抵抗は顕著な差を感じるのではないでしょうか。
けれども、逆に合成油5w−50を合成油0w−40に代えますと連続走行するような高温域で「熱だれ」のように感じることもあります。

オイルの耐久性は油温が上昇してポリマーがせん断されてきますとわかりやすいですし、
粘度指数向上剤を多く使用しないでも、粘度指数が高いオイルは安定した性能が発揮されますので、
どうしても合成油の方に歩がありそうです。
もちろん合成油にしても粘度と耐久性の関係はありますし、合成油として多くの製品がありますので、
どれが良いかは選ぶのに本当に困ってしまうわけです。

けれど、マルチグレードオイルではメーカーによって温度による粘度が、同じ「10w−40」と言う規格の一つを取ってみても、
不思議なぐらい体感度が異なりますので、
それぞれの油温での特性を体感し、自分のエンジンにあったオイル選びの楽しみを見つけると共に、
コストとオイルの耐久性(交換時期を決めるポイントが遅く出来ると言うことかな?)を考えて、
いろんなオイルを使ってみてはどうでしょうか。それほど高価なオイルでなくてもマッチングした時は嬉しくなりますよ。
こういった「密かな楽しみ」はあっていいと思うのですが・・・。
ちなみに私の場合は2000kmぐらい迄は僅かにある始動時の重さを我慢して、5w−50で5000kmからを楽しんでいます。
(同じ合成油系でも5w−40、10w−40の方が始動性がいいのですが、一度夏が入りますし、その中を
ひたすら高速道路で400km*2回を走り続けるわけで、トータル10000km以上走行するにはちょっと・・・)

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