肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ63

添加剤の効果とプラシーボについて−その3

音質の変化や音量の変化は、「違うという事だけ」で言えば、結構プラシーボとならずに、
比較出来やすいのに対して、
どういう訳か、燃費向上という点では、多くの要素が絡み合ってしまうせいか、
あまり歯切れの良い結果が出しにくいと言うことがわかってきました。

具体的には、燃料の成分が季節によって、また、ガソリンメーカーによっても異なる事をはじめとして、
タイヤ一つで燃費が変わるという事、各パーツの劣化に影響されること、
最も少ない燃料で走行する距離を伸ばせる回転域・ギア比があるからであり、
個人個人で走行パターンが異なっていると言うことがあり、
走らせる環境でも左右されることがあるからです。

こういう厳密な数量に関わる「燃費」でさえ、特定のテストコースによるテストドライバーの出した
数値の平均を元にしていますし(コースが測定機器によるものでも厳密には同じ)、
理論値と実験値の違いが元々あるわけですから、
オイル添加剤としての燃費向上効果は、実際数値に出た改善率が万人に、同じようには当てはまらないことに
なってしまいます。

添加剤を加えることで、
新品のエンジン単体で同じ粘度の同じオイルを使用して、約1%の省燃費性能を出すのに苦労しているわけですから、
余程の添加剤でないと、数%も改善しにくい事がラボデータ(ベンチテスト)からわかっています。
けれど反対に、走らせ方一つで、10−50%も燃費が変わるわけですから、その差は歴然としており、
この点から考えますと、「プラシーボ」と言われても仕方のないことのように思われます。

前のページでの、どうして添加剤の効能に10−30%の燃費改善と書きながらエンジン単体でのラボデータがないか
と言う内容の答えは、「新品のエンジンでは差が出にくいから」と言うことです。
さらに、多くの箇所にフリクションがかかる自動車全体では、エンジン以外のパーツによって、
その燃費改善率が更に低くなってしまうわけです。

けれども現実には、変わらないと言う報告が多いにもかかわらず、実際に良くなった例も多く報告されています。
こういった場合に、プラシーボは例外として、「どうしてか」を考えざるを得ません。
それにはどうしても計器での測定値が必要になってしまいます。

2つのベンチテストデータ。(商品名は記載せず)
実験データを公式にこのページに載せたいのですが、許可など降りるはずはありませんので、
内容をかいつまみまして記述します。

磁石を使用した燃費改善装置の場合。
農業用ディーゼルエンジン(定格出力3.5ps/2000rpm)を使用して装着前後での燃料使用量を測定。
ゼロ負荷から全負荷まで5段階平均:
最低成績:無処理=最高値279.4g最低値273.2g(誤差6.2g=2.2%)
     →処理後=最高値277.6g最低値267.7g(誤差9.9g=3.5%)
改善率:無処理平均−処理平均/処理平均*100=4.0g=1.47%
     無処理最低値−処理最高値/処理最高値*100=−4.4g=−1.59%(=悪くなった)
最高成績:無処理=最高値345.4g最低値340.3g(誤差5.1g=0.15%)
     →処理後=最高値280.5g最低値264.7g(誤差15.8g=5.63%)
改善率:無処理平均−処理平均/処理平均*100=64.8g=23.5%
     無処理最低値−処理最高値/処理最高値*100=59.8g=21.3%

と言うことになり、このエンジンで、うまくいけばエンジン単体で最高23%程度燃費改善はあり、悪ければ、
1.5%燃費が悪くなってしまう。
なお、正味熱効率を計算しますと無処理時の熱効率は29%程度(普通は35−40%)で、
このエンジンは元々燃費が悪いディーゼルエンジンと言えます。
処理後の最高値で4−5%の改善率になります。
ただし、自動車ではないため参考値としか言えません。
こういった装置のデータが熱効率の悪いエンジンでテストされていることに何故か疑問を感じております。
けれど、元々熱効率の悪いエンジンに使用された場合は、
改善率は上がると思われます。

オイル添加剤での燃費。
自動車用2400ccディーゼルエンジン(最大出力48.6ps/2300rpm)を使用して添加前後での燃料使用量を測定。
低負荷(5kg・m)から高負荷(14kg・m)まで3段階:
最低成績(14kg・m負荷2200rpm):未使用=9010cc→添加後=8910cc
改善率:未使用−添加後/添加後*100=1.1%
最高成績(5kg・m負荷):未使用=1900cc(1000rpm)→添加後=1790cc(rpm)
改善率:未使用−添加後/添加後*100=6.1%

こちらは自動車用で、長時間にわたるテストの平均値です。
各回転数・負荷での平均の改善率は4.89%になり、定地走行データから見ても正確と言えそうです。

こういうような試料を読んでいますと、ベンチテストのデーターがそのまま走行に現れるかどうかは、
メーカーの燃費データと実際の燃費との差と同じように考えてもいいのではないかと思われるのですが、
さほど性能劣化していない新しい自動車で、どれぐらい燃費改善の効果がどれぐらいあるかを、
厳密に調べてみて欲しいと思われる方が多いのではないでしょうか?

数字で書かれたデータは人を納得させやすいのですが、
逆にその数字の根拠が現実とかけ離れたものである場合、
かけ離れていればいるほど、自分の車では再現されないと言う現象が起こってきます。
時々問題となっている「データ改ざん」と言うこともありますので、
消費者自身がだまされないように、気を付ける必要があるというのは、何とも情けないことです。

燃費についてはいろいろなHPにも言及されてますので、様々な方面から考える必要があります。
一概にプラシーボと決めつけがたいのですが、
僅かな効果をどう取るかと言う問題になってしまいそうです。
プラシーボかどうか見分けが付けにくい事柄ですが、
熱効率から考える限り、エンジンを改良するとか、ROMを変更して燃料の供給量を変えない限り、
燃費改善は5%あたりを限度と思われた方がいいでしょう。
それ以上のことは出来ないのではないか、と思われます。
(もちろん、燃費が基準値より落ち込んでいた場合は、その分取り戻せることも可能ですので
10%−30%も燃費が向上することが起こりうると言うことはありえます。)

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出力の向上・レスポンスの向上については、「61」その他にも書いてますが、
オイルの性能向上(油性・極圧性・耐久性など)について、ラボデータではほとんど
「有意」な差を出すことが出来なくても、
「フィーリング」と言う面から、「良くなった」ということが起こるようです。
また、新車の慣らし運転が修了した後のコンプレッションが良好な場合よりも、
ある程度走行距離をのばして、
少しばかり、コンプレッションが低下した場合の方がレスポンスが良く感じられることもあるようです。
ただし、シャシダイナモなどで測定しますと、
人の感覚とは裏腹に、性能劣化が現れていることがあり、
意外と感覚があてにならないと言うことも起こり得ます。

例えば、ドアを開閉する場合などよくありますように、
新車時よりも1−2年経った場合の方が「軽い」と言うことなどがあります。
摺動面にかかる圧力はドアの重量で決まりますから同じかも知れませんが、
摺動の繰り返しによって、摺動面が削られ、あらかじめ、かけられている圧力が減ることで
その分だけ摩擦力が減りますので軽くなると思われます。
新品の「はさみ」より、使いこなした「はさみ」の方が軽やかに動くことを考えれば
理解しやすいかも知れません。

そのため、新品のエンジンのコンプレッションをあまり下げることなく、
僅かに摺動部を削ってしまい、そこにかかる圧力を下げてしまうことで、
レスポンスをよくすることも考えられますが、
その後どうなるかはご理解いただけるのではないでしょうか。

また、添加剤成分が金属の溝などに埋まり、
摺動面の精度(粗度=滑らかさ)を僅かにでも上げられることが出来れば、
油膜は厚くなくてもいいことになりますし、
それが摩擦係数の低い成分であれば、フリクションを減らすことが出来ますので、
効果は生まれると思われます。
ただし、弊害の出ないような成分が必要と思われます。

で、
本当に出力が上がったかどうかは、わかりにくいものでして、
よく言われるように、「摩擦係数」を下げるだけでは、エンジンの性能が格段によくなった現在では、
余りパワーが上がったようには感じられない場合が多く出てきます。
加えて、ピストンリングの挙動から起こるコンプレッションロスも回復させないと、
本来そのエンジンが持っている潜在的性能を発揮できないのかも知れません。
と言うことで、そうすると添加剤で両方合わせて、
どれくらいパワーアップが出来るのだろうか?と言う疑問が出てきます。

大まかに考えられるのは、
燃料の化学反応(酸化)は熱勘定(総発熱量=燃焼温度−外気温度)で表され、
パワーとして取り出せるのは
正味仕事に変換されるエネルギー=総発熱量−(冷却損失+排気損失+ポンプ損失+摩擦損失+その他)
となります。
一方、添加剤の効果としては
摩擦損失低減+油温上昇低減+その他が考えられる事になります。

総発熱量を100%としてガソリン車で25〜30%、ディーゼル車で30〜40%が出力となるわけですから、
(摩擦損失=5〜7%として)1%〜3%ぐらい添加剤で向上すると考えます。
すると、30%とした出力をどれくらい引き上げるかと言いますと、3%すべて低減されたとして、
30%で最高出力100馬力を出すエンジンの場合
30/100:30/(100−3)=100(馬力):X(馬力)となり
X=約103.1馬力となります(算出方法は厳密には正確ではありません)。

ただし、出力に伴う新たな損失が各部に出ると考えられ、
もう少し馬力は減るかもしれません。
また、最高馬力を出すときにそのエンジンでの「最高回転数」も増える場合があります。
シャシダイナモなどではもう少しいい結果が出るようですが、
(測定器の誤差もありますし)
大体こんな数値と考えていいのではないでしょうか。
出力と回転数が比例する訳ではないと思われますが、大ざっぱに考えて
出力に1%〜3%の余裕が出ることになります。

この「僅かな余裕」を体感しやすいエンジン出力帯があるわけです。
例えば、
登坂時に、スピードが出ており、4速ギアを使用できているとします。
けれど、前の自動車が減速し、自分の自動車も減速しなければならなくなったとき、
または、自然にエンジンの回転数が下がってきた場合などは、
3速あるいは2速にシフトダウンしなければ、加速してくれない場合があります。

今までそのようだったのに、添加剤を使用して、シフトダウンしなくても加速する場合は、
明白に違いがわかるわけです。

こういうことは、本当のことを言いますと、添加剤でなく、エンジンその他のパーツ改良や、
出力の出し方(燃料の出し方、ギア比、ATの機構・その他)で調整した方が効果があるのですが、
それらは残念ながら普通は触れないかたの方が多いわけでして、
安直な意味合いで「添加剤」を使用する事でも、僅かな「差」が出ることが認められています。
どうして差が出るのかと言いますと、オイルに最初から添加されている添加剤成分が、
添加剤メーカーが開発した高性能な添加剤よりクオリティとして劣っているからに他なりません。
(値段も相当違いますし、まあ当たり前かも)
つまり、ここで差を体感できるとすれば、
本当は「オイルに含まれる添加剤の成分によって、僅かに出力の差が出る」と言うことであり、
ピンからキリまである(コスト的に安価な「必要十分条件のベースオイルと添加剤」から
競技用に使用するような条件に合わせた「高性能ベースオイルと高性能添加剤」の組み合わせまである)
オイルの種類によっても同じように「僅かな差」が体感できる事が起こりうると言うことです。
ただし、同じエンジン回転数(=スピード)の状態を再現させるのは難しいかもしれませんが、
経験的に、この違いはわかりやすいでしょう。
登坂路に入った時のスピードに気を付ければ、かなりの割合で同じ様な条件を作り出せると思います。

または平地でのいわゆる「低速いびり」と言われるテストでも同じように、比較できます。
この場合、トップでどれくらい速度を落として走行可能かという事ですから、
出力が僅かに上がって入れば、確実に低いスピードで走れるはずです。
(AT車の場合でも、変速の仕方を気にしていれば判ります。)

こういうテストで変化が顕著に現れた場合、確実に通常使用する場合でも加速性は良くなっているはずと思われます。
(ただし、これによって燃費が良くなるかどうかは判りません。
ギアを落とし、加速を付けてからシフトアップした方が燃費にはいいかも。)

その他、環境問題に絡んでの「排気ガスのクリーン化」「廃油の環境への影響」という項目も
出てきますが、
それらは本当は「触媒のない」エンジンで測定すべきで、
無負荷から全負荷状態で、アイドリング時の測定値から最高回転数での測定値まで
きちんと調べたデータなどは残念ながら載っていません。
また、成分の環境への影響などについての詳細なデータもほとんど記載されていないのが普通です。
これらのデータは、「体感」項目ではなく、
良きに付け悪しきに付け、きちんと出てしまうため、
添加剤の効果と「プラシーボ」とはあまり関係ない項目になってしまうからでしょう。
ただし、オイルの長期耐久性や低公害性については、各オイルメーカーの研究課題となっています。
今までより高いオイルや添加剤を販売しようとする場合、こういった項目も大きなウエイトを占めるようになってきています。
そのために規制され、使用できなくなった添加剤もありますし、
エンジン開発においても、同様です。

−−−−−−−−−
で、添加剤メーカーの開発目的の最も重要な項目である
「エンジンの性能劣化の予防効果」 と言うことには余り触れられていない事が気にかかります。
これも、データとしての比較項目になってしまうからでしょう。
今まで書いてきた項目は添加剤の開発目的ではなく、エンジン(機械)の稼働率向上を考えていったら、
そのような効果が出てしまった、と言った類の事なのです。
オイルや添加剤の開発において、
音量低減は摩擦に関わって起こりますし、
摩擦低減は機械の寿命=摩耗に関わるからであり、
出力向上はエンジンでの気密性と摩擦・摩耗に関わって来ますし、
いつかは性能が落ちて、極端には使用に耐えられなくなる・壊れてしまうから、
コスト的に割が合うなら出来るだけ長持ちするような「商品」として
ベースオイルを含めての添加剤が出てきたのです。

つまり、「劣化→故障」と言うことですから、
この事だけを考えたなら、故障するまでの距離を走行しない自動車にとって
エンジンオイルなど、添加剤を含めて考えても、
そのエンジンに必要最小限の性能のオイルがあればいいことになりますし、
修理を考えれば、またそれはそれで済むことなのかもしれません。
ただ、どうしても「環境問題」を考えますと、排ガスなどに影響が出ますので、
性能劣化の坂道への勾配は出来る限り、緩やかにあって欲しいものです。

オイルに求められる性能は摺動部の摩耗量を減らすことが大切な事柄となりますが、
エンジンの寿命が20万kmや30万kmぐらい持つ事は当たり前となってしまいましたので、
メーカーの推奨するオイルを、「メーカーの推奨する距離や交換期間の半分ぐらいのペース」で使用していれば、
まずは、エンジンが壊れてオーバーホールと言うことになることは滅多にありませんので、
性能劣化をエンジンについて気にしなければ、ことさら高価な「添加剤」など不要かもしれません。

添加剤を使用することで、エンジンの耐久性が1.5倍良くなるとして使用し続けても
多分、その距離まで乗らないのが普通でしょう。
ある添加剤はピストンリングの摩耗を、従来のオイルと比較して1/7から1/8ほどにするという
データを導き出しておりますが、
まさか自家用車で100万kmも乗る人などいませんでしょうし、
そういった意味では、過酷な走行をする人や、競技に使用する以外は不要なのかもしれません。
(当たり外れの差によるエンジンの寿命には影響があるかも・・・笑)
より高性能な添加剤は特殊な状況に使用されて、初めて「効果的」と考えられ、
条件が過酷になるエンジンの高性能化に伴って、進歩してきたと言う流れがわかりますが、
(現在、市民権を得てオイルに入れられている添加剤は、昔は特殊な「高級添加剤」だったのですから)
これは、昔、テレビが性能が悪くても高価な物であったり、パソコンなども同様の道を歩んできたのと同じ事なのかもしれません。
それほど特別に「プラシーボ」云々と言うことでもないようにも思われます。
本当に少しの改良が出来ると言うことはそれなりに意味があることと思われますし、
それに価値を見いだすかどうかは、企業においては経済的なメリットとして、
個人においては、満足度+αの問題のようにも思えるからです。

問題は「宣伝」の方にあるように思えます。
必要だから商品化された本当に「良質」な添加剤はありますが、
環境に悪い成分を含んだ添加剤や、効果が低いにも関わらず誇大広告的に表現し、
高い値段で販売されている添加剤があれば、あまりいい事とは思われません。
『問題は「宣伝」の方にあるように思えます。』というのは、
使用してみた効果=主観は、それは体感したものだから「個人的な事実」なのですが、
それが必ずしも「客観的事実」にはならない場合があると言うことなのです。
また、そのような効果の価値観を誰もが持っているとは限らないと言うことを
知っている必要があると言うことです。

「プラシーボ」が心理療法的に正しく使用される例では、その当事者にとっていいことなのかもしれませんが、
心理的な事柄でない技術的測定値が「プラシーボ」と扱われることは逆にあまり感心出来ないことです。
宣伝しなければならない理由はよくわかるのですが、
特に修復剤として売られ、ほとんど「宣伝文句通り」の改善の無かった添加剤と言う物が
どれほどあったかを考えれば、私も「添加剤嫌い」になります。
(懲りずにやってますが・・・笑)

使用環境やその自動車のエンジンの状態などでそういった効果が変わると言うことはわかりますが、
どうも、まだまだ添加剤という物に「プラシーボ」なる心理的要素がつきまとうのは
仕方のないことかもしれません。
ま、大目に見て「10・15モード」と「実生活での走行」の燃費の差があるように、
笑い飛ばすような気持ちでなければ、つきあってられないかも・・・です。

ということで
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