肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ64

添加剤の修復効果

どうもオイル添加剤を使用する理由に「修復効果」を求められる方が多いわけですが、
本来は「直らない」と考える事を基準にして話を進めたいと思います。
どうしてかと言いますと、「場合によっては」と言う不確実な割合で、「直ることと同様な結果」
が出る事があるからです。
使用に十分耐えられる結果が出ることがありますので、
この場合は「直った」と同じと考えていいのでしょうが、
「本来の修復かどうか」と言う疑問があるからです。

例えば、キャブレターのフロート部にガソリンの劣化物が詰まったり、錆が進行して、
動きが鈍くなった場合など、一般的にはガソリンの調整が出来なくなり、
ガソリンが流れすぎると言う(オーバーフロー)現象が発生します。
この結果、エンジンがアイドリング時にリッチな燃料のため止まってしまったり、
振動が出たりします。
大抵はフロート部を開けて、ゴミを除いたり、錆を取ったりしてやると、
調子よくなるのですが、
それを、OHしないで、エンジンコンディショナー、やキャブレタークリーナーなどで掃除することで
取り除くことが出来た場合、
これは本来の機器は異常なく、原因がゴミと言うことなのですが、
「直った」と言うことになりますので、
「修復した」と言えます。
再発したとしても、症状が軽減されていくようであれば、
この方法で継続していくことでいい場合が往々にして起こります。

けれど、フロートに亀裂が入り、ガソリンに浮かぶ浮力が小さくなってしまった場合、
中の空気の替わりにガソリンが入るわけですから、
これはどんなに掃除したとしても「直らない」でしょう。
この場合は応急的に、フロートの中のガソリンを抜き、耐油性に優れた接着剤などで密閉して元に戻してやるか、
新品の部品に交換してやればいいことになりますので、
最終的には「修理・交換」になります。
一時的に「修復」する事だけで良ければ、
耐油性接着剤だけでもしばらくは走行可能になるでしょう。

もちろんオーバーフロー現象自体、上記原因だけとも限らず、
原因が特定出来なくては「修復」したかどうかがわからず、
その後「再発」するかどうかもわからないわけです。
ですから、整備工場では、
信用に関わりますので「どこに原因があるか」を調べて行くわけですし、
再発防止を考えて、悪いと思われる箇所を交換するようになります。
(さしずめキャブレターが原因と判断されれば、キャブレターをリンク品か新品に交換)

原因がいくつか考えられる場合もありますので、調べて行きますと
「軽整備」と思われたのに、「重整備」になってしまうことも起こり得ます。
じっくり時間がかけられないせいもあったり、「思い込み」その他の理由から、
「誤診」と言うことも起こるわけですが、
これは困ったことに「医療」にも同じ事が言えます。

ガソリンが劣化しやすいと言うことを知っていれば、またそういった成分を使用することで、
機器にどういう影響が出るかを知っていれば(EGRの影響なども含めて)、良いわけなのですが、
キャブレターと言う機器全体の耐久性やパーツの精度・組立精度などにもよりますので、
本当の原因は複雑になるようです。
ただ、現在はインジェクターで余り摩耗しないと思われる部品ですし、
キャブレターの場合はスラッジ等の除去などをし、調整し直せば直ることも多いので、
余程のひどい環境に置かれなければそうそう交換と言うこともないでしょう。

で、この場合「キャブレタークリーナー」や「エンジンコンディショナー」などは、
「添加剤」とみなしていいと思われます。
と言うことは、
直る場合と直らない場合が起こるわけで、原因が違う事から来ています。

次に音に関する事ですが、油圧アジャスター付きエンジンで例えばタペット音がひどくなった場合、
クリアランス調整が本来不要ですから、調整が出来なくなった事に原因があるのですが、
時々、添加剤を使用して、気にならないぐらいに静かになることが起こります。
大体において、この場合は、オイル循環するラインの目図まりが原因であったり、
油圧を保持するための部分がうまく作動していなかったりしていたのが、
添加剤で動くようになったと言うことが考えられ、
「まだクリアランスが調整出来なくなるほど摩耗が進行していなかった場合」に考えられます。

また、OHして、アジャスターなどを交換しても、始動直後の数秒間だけどうしても音がする事もありますが、
油圧がうまく働かないのか、それとも元々音が出るのはその部品の構造からなのか、
悩むことがあります。もちろんエンジンをかけオイルをきちんと循環させた上でのことです。
ただし、それで壊れそうな音がするような大きい音でもありませんし、
新車時から出ている場合もありますので、原因が他なのかを確かめる必要はあるのですが、
これはメーカーに任せるべき事とも思われます。
この場合は添加剤で直るかどうかわかりませんが、
多分、無理かと思います。(事例が少なくてわからない)

パワステポンプなどのベーンが擦れるときの音が新車から15000kmくらいしてから発生した例では、
添加剤で完璧に消えました。
これは、エンジン始動時のステアリング操作時にかならず発生した音で、
始動後しばらくすると消えてしまうため、「クレーム外と処理」されたのですが、
たいていの場合は添加剤でよく消える場合が多いようです。
パワステオイルだけの交換でも直る場合もありますので、
摺動摩擦に原因がある症状と考えられます。
ベーン板はスプリングで押されていますので、その動きが悪くなったためか、
オイルの劣化に関係する事柄と思われます。
エンジンオイル交換でエンジン音が静かになる現象と同様とみなせば分かりやすいかも知れません。
ただし、オイルだけの交換でパワステの動きが軽くなったと感じる事はあまりなく、
異音発生の少なくなる割合は添加剤使用に於いて顕著です。
軽くなったという回答は添加剤使用された方に多いようですから、
摩擦の軽減や密閉性向上が起こっていると考えて良いわけです。
しかし、
これは「修復」と言えるかどうかが疑問です。

パワステの作動に引っかかりのある自動車で添加剤を使用しましたが、
(長期に渡る使用は出来ませんで結果は不明なのですが)少なくとも
しばらくの使用では変化無し。
原因がポンプの油圧系統にあったのか、ラック&ピニオン部にあったのかもわかりませんが、
危ないので、即交換。
また、左右で重さが異なる現象が多く見られる特定車種に於いて、ラックブーツ内へのグリースアップと
パワステオイルへの添加をしましたが、僅かに軽くなったように感じましたが、
左右の重さの違いは是正できずでした。
ま、ディーラーメカさんからは「通常古くなるとそうなります」と言われ、
変に納得してしまったのですが・・・笑。

更に、インチアップをしすぎているせいか、据え切り時、ステアリングが重たくて仕方ないと言う方にも
試してみましたが、これはポンプの状態がどうもおかしいと言うことで
「新品と交換してくれ」と言う依頼がありましたので、
やむを得ず交換しましたが、結果は、ある程度「まし」になったぐらい。
(アイドルアップはしていましたので)僅かにアイドリングを上げた方が効果的でした。
作動油の圧力を規定値以上に「大幅に」アップする事は
添加剤では不可能で、
作動のスムーズさとか、軽さを期待してなら添加するのも良いのではないでしょうか。

こういった意味では、固着したような固いプラグを外すときは、それでも本当に添加剤入りの潤滑剤は役に立ちます。
プラグを無理矢理回せば、ほとんど「ねじ」がおかしくなってしまうような時には、
プラグホールへ吹き付け、動く範囲でゆるめたり締めたりして行きますと、
潤滑して行くようになり、最悪の状況にはならないことが何度かあり、
本当に助かっています。
新品のプラグはいとも簡単に入って行くことから、
ねじ山にはダメージなしと言うこともわかります。
ホイールのボルト脱着でも同様です。
これは普通「CRC」」などでも、経験あることかもしれませんが
普通、頭が10ミリぐらいのボルトでは、さび付いていたりしますとCRCぐらいでは切れてしまう事が良くあるのですが、
切らずにはずせると言うことになりますと、本当に重宝です。
再利用することもないのでしょうが、そのねじを使用することもほとんどの場合可能でした。

こういった例は限りなく続くのですが、
添加剤というのはどちらかと言いますと「予防」と言うことに重点が置かれます。
壊れないようにすることが添加剤などの目的ですから、
壊れてしまった場合は、修復はほぼ無理と考えることにしています。
壊れる少し手前でしたら、壊れるまでの延命になることがありますので、
本当に優れた添加剤でその可能性を試すことができます。
けれど、その後の使用期間を考えてコストなどを計算しないと、
結局高い経費を払うはめにもなりかねません。

車のパーツと言うものは、改良の積み重ねで耐久性が増してきました。
そういった箇所では「機構」・「耐久性」が十分検討されています。
もちろん「潤滑」の問題点が同時に考えられて性能アップしたのです。
添加剤を含めての潤滑剤は修復剤のように働く事もあるのですが、
それは従来の潤滑剤と非常に差がある場合だけに可能で、
ほとんど従来品並の性能しか持たない商品ではいくらそのメーカーが宣伝しようとも、
満足出来る効果は難しいと言えます。

修復できる可能性を求めて、という意味では、
その差を比較したり、修復の可能性を見つけるのに添加剤などを使用することに興味があるのはあるのですが、
考えられる原因の種類と、その添加剤の特性がうまく一致していませんと
修復に近い効果は「期待薄」でしょう。
異音を消したい場合などに、例えばゴムベルト部に摩擦係数の少ないテフロンやシリコ−ンを塗って、
音を消すことは昔からよく行われていますが、
これが金属同士の極圧がかかる場所ではほとんど効果はありません。
ドライブシャフトなどの異音は金属摺動面の粗面の粗さが影響しておりますので、
まず、そちらを先に修復してしまう方が効果がありますし、
音の問題では金属表面処理や共振などについての研究がなされてきましたが、
修復効果に関しては、金属表面の状態を摩耗を伴っても構わないから、変えてやるという添加剤の方が、
極圧に対して摩耗を減少させ、保護するといったものより効果的となるようです。

ということから、
もし、添加剤を使用して良くなったとしても、ほとんど根本的な修復はほとんど不可能ですから、
「添加剤=修復」とは考えず済ませています。
ただ、どうしても「いつまでも気持ちよく乗っていたい」という理由から、
メンテナンスの意味を兼ねて添加剤という製品を使い続けていますし、
お薦めしたりもするわけです。
本当に必要なメンテナンスとしての部品交換や修理をせずに済ますのは
少し添加剤にかわいそうな気がします。

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