肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ70

啓蒙効果なのか宣伝効果なのか

最近はどこでもATF交換を勧めているそうで、ベストなのは2万キロ程度走行毎で、
ベターなのは5万キロ走行後毎、などと随分むかしに言われていた事を思い出します。
当時はATFのラインのホースを外し、冷えた重い新油を送る事で、熱くなった軽い古いオイルを押し出す、
循環式方法しかありませんでした。
装置をもっていない場合は、エンジンオイルと同じ様にして抜きます。
ですから、ATFドレーンが付いている自動車の場合は交換も出来ました。
ATF全量8Lとして、(当時のATFは普通、全量で7−9Lほど入ってました。)
ATFタンクからは約2Lぐらいしか抜けませんので(残りはトルクコンバーター内部やライン内)、
余程早い時期に交換をしませんと、
オイルはなかなか綺麗にならず、新油と比較すると結構汚れが目立つ事もありました。
一旦2Lほど抜いてから、ドレーンボルトを締め、抜いた分量の新しいATFをレベルゲージなどから入れ、
エンジンをかけて、オイルを循環させると言う方法で、
繰り返しこの作業をしますとある程度抜け替わることになります。
これは、
ATFの交換をしても、最初は古いオイル(8L−2L)+新油2Lとなり25%交換、
次は7/16%=43.75%交換と言う具合になり、さらに2L交換すると37/64%=57.81%
8Lの新油を使っても175/256=68.36%しか交換出来ないことになるからです。
まるで古い洗濯機の「すすぎモード」のように、時間をかけて、水を出しっぱなしですすぐようなものでした。

現在の「上抜きタイプ」も同じ方法をとっています。

昔ながらの循環式タイプの場合、ATFの油温を高くする必要がありますし、
ATFホースをはずさねばなりません。
そのため、
この場合はほとんど綺麗に抜き替えられますが、ATFの交換量も全量抜き換えですから多く、
(新旧のオイル境界面で混ざってしまうため、余分に0.5L〜1.0Lほど交換します。)
そういった装置もまだまだ高く、支払いの代金も高くなりますし、
作業も整備士にまかせませんと、作業ミスやトラブルの原因ともなったりするわけで、
現実にはなかなか広まりませんでした。
その全量抜き換えの循環式ATFチェンジャーを購入したとしても、量販店などでは手間や作業ミス発生が
ネックとなりますので、初めて交換する誰でもが「簡単・安全」とはならなかったのです。
ユーザーのニーズもなかったせいか、「ATFは交換しなくても良い」ような風潮もありましたので
どういうわけかわかりませんが、
当時はディーラーでさえ、本社ぐらいにあるだけで、各営業所には置いていない事も普通でした。
現在のような、上抜きタイプのチェンジャーが開発されて、
企業として商売の対象となったわけです。もちろん宣伝効果もあったでしょう。
「ATFは交換するもの」となってきたわけです。
ATが壊れる・壊れないは様々な要因があり、ことさらATFのせいにはできませんが、
ATF交換しなくとも10万キロ程度ならまず大丈夫と言う
メンテナンス基準が当時は設定されていました。実際にそれくらいで壊れるということはあまり無かったように
思えます。現在のATでは「ほとんど」お目にかかれません。
ただ、以前と変わったのは交換する時期が距離を短くしている車種も増えてきている事です。
オイル量が少なければ、オイルの負担も増えますし、早めの交換になるでしょう。

エンジンオイル交換にしても「上抜き」交換機が開発されて、その是非はともかくとして、作業性が向上し
や作業ミスが減りました。
特に、用品店には便利な機械となったわけです。
ラジエタークーラントチェンジャーも、店にあれば、クーラント交換を勧めるお店が増える事でしょう。
劣化したLLC・オイルなどを交換する事はATにもエンジンにも水回りにも良いことですから
勧める事に異論は全くありません。

そういえば、いつ頃から言われ出したかわかりませんが、
オイルエレメント交換もオイル交換2回に対して1回は交換した方がいいと啓蒙されて、現在は一般的です。
オイル交換なども3000km〜5000kmが一般的となりました。
ところが、環境問題・資源問題が言われてきますと、
今度はロングドレーン油(長く持つオイル)の要請になってきましたので、
長期耐久性・環境安全性も大事なファクターになってきました。
自動車自体もリサイクル化されて行くパーツが増えています。
オイルは添加剤と共にますます高級化し、高くなって行く傾向にあるのかも知れません。

そうなりますと、その次は、(必要性の優先順位は考えない事にして)
オイルフラッシングやインジェクタークリーニングなどが啓蒙され?て行くことになってきました。
経済活動はどこまでも消費活動と結びついて行きますから・・・。

基本的には消耗部品・定期交換部品は、早めに交換した方がいいでしょう。
長寿命化もしていますので、それほど昔のような異常な故障も少なくなってきておりますが、
今まで通りの耐久性しかないようなパーツもありますし、
どうも過渡的な状況にあるのか、パーツの寿命にはアンバランスさが多く感じられ、
機能面も質的な面が要求されている側面もあり、
長く乗るにはそういった点検交換が重要になってきています。

ファンベルト、ディスクパッドなどを含めた特定部品や自動車各部品は、かえって使用可能な期間が
増えて行く傾向にあります。耐久性が飛躍的に向上した部品も数多くあります。
現に、昔なら部品交換しなくては車検に通りにくかったので、ユーザー車検なども難しかったのでしょうが、
現在では新しい自動車なら通って当然の状況になってきているわけです。
まあ、それでもいつかは整備が必要になってきます。
質を重要視されるユーザー方と経済性を重要視される方の整備上の格差が広がってきていることは
オイル一つ取ってもよくわかります。

自動車が新しくなってきますと、新しい規格のオイルでエンジンはテストされます。
ベースオイルが鉱物本来のものからではなく、手を加えられた低粘度合成油になれば、
それにあった添加剤が必要になりますし、
ベースオイルの質・性能+添加剤の性能・相乗効果などの差が、
同じグレードのオイルの中で現れることになります。

グレードは最低線の基準を指定された時間内にクリアーしていれば良いのですから
ぎりぎりでクリアーするオイルから、余裕しゃくしゃくで合格してしまうオイルまでピンキリが現れやすくなります。
次のグレードが現れる間際が一番差が出るのではないかと思われます。
具体的には、現在の最高グレードオイルはSJですが、SJの基準しか通過出来ないオイルと
次のSI規格をクリアーし、その次の規格が現れてもなおクリアーできる性能を持つオイルとが
現在の所一つのグレードにあることになるわけです。
この差はメーカーとしても困りますので基準値以下のオイルでラボテストしたり、
大丈夫な線を決めてオイル交換時のグレード・粘度指定をすることになります。
こういった質の差の問題は、日常使用されるどの製品にもありますので、ことさら言うこともないのでしょうが、
製品の質の向上にユーザーの選択が深く関わっている事は周知の事ですから
良い製品が手軽な価格で買えるようになったら良いなと思う次第です。

 
本来なら、メンテナンスフリー化がオイルにもあって良いのですが、
今のところガソリンや軽油を燃料としている内燃機関という事で無理のようです。
一旦、「オイル交換は早めに」と、啓蒙されてしまいますと、
「資源は大切に」と言う正反対の言葉の理由が浸透しにくくなってしまいますので、
現在のオイル交換の時期を修正するのは難しく、
過去にオイルによるトラブルを経験した人なら、相当抵抗があることはやむを得ません。
けれどいつかは、耐久性が遙かに向上し、そうなって行く方向性はもっています。
オイルも添加剤もパーツとしての性能・耐久性は進化しているわけですから
エンジン、その他の耐久性と同様に浸透して行くでしょう。
が、経済活動ですから、お店ではそうなることが困ることになるのかも知れません。
なかなかそういった宣伝はありませんものね。
そのうち、エンジン自体も耐久性が遙かに向上してしまい、余程の距離を乗りませんと
「オイル交換なんて・・・」と言う事になってしまうかも知れません。
まあ、その前に動力が変わってしまうかも・・・笑。
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