肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ81

添加剤の何が「効く」と言われるのか。−その2−
 

オイルや添加剤の役割は、どういった解説を読みましても、書かれているとおりの内容になります。
1.潤滑、減摩作用
2.密封作用
3.冷却作用
4.清浄分散作用
5.防錆、防食作用
他に消泡作用とかもありますが、この中で中心となるのは
エンジンが動いていてくれないと機能をはたせませんので、1.の潤滑、減摩作用=焼き付き防止(摩擦摩耗の低減)
となり、次は2の密閉作用か3の冷却作用かになります。
清浄分散とか防食防錆とか消泡などは後から機能として加わったものです。

ですが、もうひとつの判断、ロングドレイン=長寿命化を考えるメーカーにとっては
金属磨耗する度合いを、エンジンオイル(特にベースオイルは元々ないので)には求めておらず、
オイルの劣化を判断する基準を、オイルが酸化して不溶分(=いわゆるスラッジなど)となることがすべてとしてみなし、
それがなければ(不溶分を分離できると言うことも同様と考えており)
交換しなくてもエンジンは問題なく動くと判断しています。
磨耗低減はあくまでも添加剤や金属の表面処理の役目であって、オイルのロングドレインの表示とは
また別の事柄と考えているのではないかと思われます。
そのため、「30000km交換不要」とか添加剤の中には「100000km使用可能」となってしまうわけです。
ATFなども、ラボテストデータでは「15万キロまでスラッジなどによる支障がない」と判断されているため
「無交換」と言う表示になっていたのだと思われます。

本当にそうなのかどうかは、実は故障してみなければわからないわけで、
また、使用するエンジンやATなどの状態が「模範的な製品」かは、ユーザーにとっても判断できないわけです。
それでも、大体は保障期間内において故障しないで、乗り換えられるわけですから、
あながち上記のようなオイルに対する考え方は認めなければならず、
(特にATFなど昔は無交換だったのでわかるのですが、保証距離にきわどい距離での故障もあったように思えます。)
故障すれば機械を作るメーカーに責任があることになりますので、
グレードの低いオイルで耐久テストをするとか、無潤滑あるいは起こりうる荷重以上の負荷で磨耗テストをするとか
苦労されてきた経緯が理解されます。
以前「設計が悪いから壊れるのであって、オイルの責任ではない」というような内容の言葉を
某オイルメーカーの技術者から聞くことがあり、納得して良いのやら悪いのやら・・・。

リード楽器を吹かれる方はご承知のように、10枚、20枚のリードの中から、たった1枚の自分に会うリードを
作るため苦労し、見つけても、それさえも短命に終わってしまう経験をお持ちであると思えますが、
そういったようには考えられていないわけでして、違う世界を見るような感覚に陥りました。
ただし、そう考える事は常日頃から、自分も他の事柄に関してしているわけですから、
偏見にも似たものであると十分承知はしています。
とりあえず、ユーザーとしては最低条件として壊れてほしくないわけですから、質の問題はともかく、
ディーラーさんや整備工場の方のいいなりで、オイル交換、定期部品交換させられていたというのが実態です。
納得のいく交換も多くありますが、整備する側としても、任せられた整備ですから、
故障したとなりますと叱責(場合によっては保証問題)が付きまとうわけですし、
過剰整備ともなる可能性をどこへも転嫁できず、通り一辺倒の定期部品交換をしてしまうことになります。
オイルの状態もおおよそであれば判断することは出来ますが、現在使用中のオイルの劣化度や
あとどれくらい使用できるかなどといったことは、分析でもしない限りできないわけです。
それで、「最近替えたばかりなのに、車検でオイルを勝手に交換されてしまった。」という話もよく耳にする話と
なってしまうわけですね。
また、整備経験から、その自動車のオイル交換をどれくらいの距離・期間で行った方が不具合が発生しないか
わかっていますと、それに合わせて交換を勧めることになりますから、
トラブルを未然になくすことも可能かと思われます。
ただし、ある車種で通常走行でも3000km毎(スラッジなどによる問題点があるため)の交換を
推奨されていまして少々驚いたことがあります。

現場とオイルメーカーの意見がこうも違いますと、本当にびっくりしてしまいますし、
輪をかけて、「これこれの添加剤使用をお勧めします」などと言われて、閉口した事も覚えています。
(確かに私はオイルに関して素人なので仕方ないんでしょうね。笑。)

オイルが一番長寿命化できる温度(油温)は大体80度あたりであるとされています。
この温度帯で長距離を走行しても劣化は緩やかですが、
それ以上の温度になっても、それ以下になっても劣化が早くなります。
油温が低い場合は、燃焼によって生成した水分の混入(添加剤に悪影響が大きい)が主な原因で、
油温が高い場合は、化学反応の進行が活発化する事による熱劣化による促進が原因となります。
ですが、通常の使用では、(まさかオイル劣化を考えての走行など本末転倒ですから、)
乗りたいように使うのが当たり前ですので、
劣化のしやすさという度合いによって交換するのが本来のことであっても、ほとんど表示されていず、
各々の責任で適当に交換されていることになります。
データ上、15分以内の短距離通勤などは、上記80度で走行する場合のオイル寿命
(メーカー推奨鉱物油系で15000kmとする)と比較すれば
多分ひどければ、約1/5ぐらいの寿命(約3000km)となってしまうわけです。
現場の感覚がそれほどひどくおかしな判断でないことにも逆に頷けてしまいます。
それは実際の不具合を見ているからですし、
使用状況で、「本当にこんなに差が出るのか」と思うほど差が出るからにほかなりません。
現場判断は「責任ある整備をしようとする誠意」とお考えいただき、異なる走行と判断される方は、
「必要ありません」と最初から断ればいいことになります。(普通は出来ないのですよね、これが・・・笑。)
ただ、現場ではそれでも5000kmぐらいと言うかもしれませんね・・・。
理由は走行距離に従って不磨耗なども含め具合発生が起こりやすくなるからでしょう。

一方、オイルの劣化判断は、金属磨耗度によっても決められているようですが、
こちらから判断するとなりますと、オイル分析が必要になってきます。
また、どういう原因でもって磨耗が進行しやすいかと言う比較データなどもなければなりません。
「おおよそ・・・」といった原因がわかってはいても、
実車となりますと、条件が異なりますし、様々な原因が重なり合ったりしますので、
傾向としてあいまいな事柄ともなります。

既に磨耗が進行してしまいクリアランスが広がったエンジンでは、
よほどオイルが腐食性を持ちませんと、金属紛はそれ以上多くならないように思えますし、
それと新車などのように、慣らしによる金属磨耗をある程度想定してある場合などと比較すれば、
後者の方が磨耗量が多いのはあたりまえですし、比較としては間違いとなります。
比較すると言う時点で、いかに基準点が大事であるかがわかりますし、
科学的かどうかというのは、比較する基準があることだと思われます。

中学や高校で比較実験する時、標準的な何も条件を加えていない基準を置いた経験を覚えておられると
思われますが、効果とか改善ということでもこういった基準が必ず必要となります。
誰も「金持ちだと言われなければその事がわからない」と言った心理学での言葉を覚えておりますが、
それは思考形態が比較によって言い表されなければ判断できないと言うことによるからだと思われます。
基準を元にした区別なしでは誰も判断は出来ません。言葉が通じると言うのはそういうものだと考えています。
(ですが、その基準を誰もが共通理念としてすべてに適応できるかどうかは分らないのですが・・・)
で、話は戻って、磨耗度に戻りますが、
30000km交換不要と言う事柄と3000kmで交換という基準がわかってきます。
全く違うことを話しているということです。
一方はオイルそのものの劣化を基準とし、
もう一方はエンジンの調子と言うことで話されていることに気が付きます。
私が基準としている事柄は、「いつまでも大切に」ですから、
当然、機器の劣化を未然に防ぐと言う観点になるわけで、
調子が悪いままにして走らせるという事自体が困った事と思えるわけです。
オイルに関しても30000km走れる代わりに、エンジンの性能劣化が2倍も3倍も進行するようでは嫌なのです。
エンジンなどでは磨耗を減らす方向へ技術的に向かっていますが、同時に軽量化・省燃費化も進行しているため
どうも期間限定的な質の向上になってしまったのではないかとさえ思えるのです。
ある方は毎日距離を走るのでオイル交換を3000km毎に必ずされていましたが、
自動車のあたりが悪かったのか、80000km/3年間走行するまでにバルブステムシールが痛み、
オイル食いがひどいまま走行していましたので、修理するさいは、エンジンの中はひどい状態になっていました。
ステムシールが悪くなったのに気が付いたのは6000kmほど前と言うことですから
それほどひどくなっていないと思っていたのです。
ですが、他の整備もあわせてして直ってもあまり良い状態とは思えませんでした。
経費が高くつくため、オイルはいつも一番安いものを自分で交換していたということです。
長時間過走行という過酷な運転状況から言って、もう少し良質のオイルであれば
修理がもっと先になったかどうかわかりませんが、こういったケースはしばしば見ています。
過酷な走行ではない場合でも、やはりおきています。
磨耗度を比較するとわかるのですが、やはりあくまでも低質なオイルはいくら交換期間を短くしても
良質なオイルと比較すれば磨耗度が初期段階から多くなります。
それにはベースオイルの質もさることながら、中に入っている添加剤の質の差とも思えるわけでして
せっかく色々な公のグレード基準試験があるのだから(そしてそのオイルの試験結果もあるのですから)、
公開してしまえばいいとまで思ってしまいます。
前のページに書いたようにSJ合格、ACEA−A3合格と言うように「パスした」ことしか、表示されてません。
同じ車種で5000kmを走行するのに1年かかる方は、5000km毎のオイル交換ですが
10年たってもステムシールが悪くもならず、エンジンの状態もいいと思える自動車もあります。
そういった自動車は消耗部品とか周辺の交換しかしていませんが、エンジン内部もきれいに保たれていました。
オイルは普通より多少上質なものを使用していたのですが、
オイルの差という事だけで判断できませんが、
(一般的にオイルが良いと、シール磨耗や漏れは少ない傾向がありますので)
少なくとも、こういった傾向を強く感じざるをえない例がいくつもあります。
もちろん、いくら良いオイルを使用していても、劣化は避けられませんが、
走行距離が多くなるにつれて、オイルの性能差でエンジンなどの状態が
大きく変わってくる傾向はあります。
オイルの性能以外にもエンジンと合った適正な粘度やその使用状況などを考えるのは当然ですが、
オイル以外の不具合箇所の影響、その他、機械ですから当たり外れや設計上の問題点など
様々な側面を加味しませんと「いつまでも大切に」乗れないのが普通です。
で、オイル=パーツで、やはりメンテナンスの1つとしてオイルの選択が重要になってくるように思えるのです。
パーツとしてのオイル=オイル+添加剤なのですが、
エンジンを守る重要な機能はほとんど添加剤の方にあると言って良いと思えるのですが、
まだ添加剤はオイルの脇役にしか認識されていないのが実情です。
で、添加剤の何がよければ「いつまでも大切に」出来るかになるのですが、
はじめに書いている通り、磨耗が進行しなければ出来るわけです。
もし磨耗が進行しないのであれば、エンジンはほぼ永久的に壊れることがないとも思えるのですが、
残念ながら、それは不可能です。
原子自体でさえ崩壊してゆくのですから、単に金属結合で形作られている金属レベルでは
電子的な結合状態ははるかに短命と言えるので、
常に化学的な反応にさらされ、外的な圧力とそれに対する応力を常に伴うエンジンでは
あくまでも、手を尽くして磨耗進行を遅くする事が出来るだけに過ぎません。
保証期間内で保証距離以内に乗りかえされる方にとっては、
自動車を道具とみなせばそれまでのことかもしれませんが、
それでもどういうわけでしょうね、いつまでもベストコンディションであってほしい気持ちの方が強く
出てしまうわけです。
ほとんどの人は既製品としての自動車に乗ることしか出来ませんので、
ユーザーの一人として出来るひとつの事柄がオイルや添加剤に現われただけでしょう。
ただ、潤滑油の性能差で自動車のフィーリングやその性能劣化が変わる事がなければ、
書く必要もなくなるのでしょうが・・・。
あらら、また独り言になってきた。省。
ということで
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