肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ82

添加剤の何が「効く」と言われるのか。−その3−

普通のオイルの入っている添加剤と市販の添加剤として売られている商品のどこが違うかと考えますと、
1、摩擦・磨耗をさらに少なくする
2、清浄分散性がさらによい、(あるいはその耐久性が良い、又は必然的に分量が多くなる)
3、酸化安定性がさらによくなる、(同上)
4、密閉性を向上させる
などが挙げられます。

ピストンやピストンリングの材質、あるいは表面処理技術の進歩によって、
摩擦・摩耗は極端に少なくなり、密閉性も保持されるようになってきましたが、
潤滑剤としてオイルが使用される限り、
清浄分散性とか酸化安定性などと言った箇所では、やはりオイルが改良されることでしか
対処できないことのように思われます。
酸化安定性や清浄分散性が何故必要かと言えば、熱やブローバイガスによってオイルが劣化し、
金属の腐食・摩耗を促進させるからですが、
つまり、それらは裏で摩耗をさせないために働いている機能と言うことです。
ですから、通常の市販添加剤はこの成分がかなり多く含まれているわけです。
オイルで密閉性を保つと言うことも磨耗の原因となる吹き抜けガスの混入を避けるためとか
オイルの汚濁、オイル消費低減につながるわけで、こじつければ、磨耗低減の役割を
担うわけです。

一方、ピストン・リング・メタルの表面処理の方は、摺動面で摩耗を防ぐように考えられていますので、
処理膜の厚みがどれくらいあれば、剥離せずゆっくり摩耗して行くか、
摩耗しにくい形状はどういう形になるか、
あるいは削れた処理膜粉がアブレシブ摩耗を起こさないかを調べ、処理を施していることになります。
ですが軽量化・低コスト化もありますので、現在ある最高の技術を使用して作ることは出来ません。
その為、摩耗を抑える添加剤をオイルの方に加える必要があります。
一部をオイルによる磨耗低減で任せてしまう方が安上がりになるわけです。

オイルメーカーとしてもコストとの戦いがあるわけで、
いかに安く効果のある添加剤を作るかを考えているわけですが
ほとんどの添加剤はベースになるオイルそのものよりも先に(ベースオイルの劣化を防ぐ身代わりになって)
劣化して機能を果たせなくなる運命と知っていますし、実際その寿命は結構短い事になります。
(早い物では数時間、普通6ヶ月とか1年)
当然添加剤の寿命がきますと、ベースオイルの劣化速度は加速度を増して行くわけです。

ですから、消費された添加剤を途中に補うことでオイル交換時期は延ばせると報告されています。
しかし、最初からある数値以上添加剤をオイルに加えても、それ以上効果が伸ばせないと言うことも
わかっていますし、入れすぎますと逆効果の場合もあります。
ベースオイルと添加剤の配分が大切と思われます。
添加剤の寿命を長くするには、
増量するか、更にコスト高となる別の高性能添加剤を入れる必要が起こり、
エンジンオイルとして高価な値段を付けざるを得ず、メーカーとしては程々の製品しか作ることを考えていません。
オイル交換してしまえば済んでしまうと言う事もあるからです。
摩耗率は添加剤を含めたオイルの質で決まってしまうのですが、
(アルキル鎖長の炭素数Cが8〜10を越えると境界潤滑性が良くなるとか、官能基の構造を変えることで
油性剤の吸着性や反応性が制御される。例えば酸化鉄に対する吸着熱が大きい化合物ほど耐摩耗性が優れるなど)
自動車ではエンジン各部の摩耗レベルがそこそこ保たれるオイルで構いませんので
現在ある最高の技術を使用してオイルを作らなくてはならない理由は少ないわけです。
(ですからオイルも添加剤も上には上があるという事です)
で、製品にはばらつきがかならず発生しますので、耐久性のリスクマージンをとって、
現在の自動車が作られています。
初期慣らしの必要性はこちらにも既に書いていますが、
必要に応じた対応を取ることで、ある程度耐久性を補正する(?)事が可能になるように思えます。
初期摩耗の仕方が、その後のエンジン性能を決めると言う考えも違うと言えませんが
ばらつきがあってもある程度は初期摩耗のさせ方によってうまくゆく場合が多いかも知れません。
(金属面へ自己修復機能を持った添加剤が開発されれば言うことはありませんがそれに近い製品はあるように思われます。)
関心のない方にとっては、どうでもよいことかも知れませんが、
関心があり、後から添加剤を使用しない方にとっては、この事は結構重要な事と思われます。
で、全然関係ない話ですが、スタッドレスタイヤの季節で、
ホイールと一緒に置いておられる場合が多いので、取り付けるときどちら向きか調べる事があります。
方向性が決まっているタイヤですと矢印が付いているので右タイヤか左タイヤか判るのですが、
方向性がないタイヤの場合、どちらに付けて良いか悩むことがあります。
普通、タイヤ接地面を軍手か何かをはめて、手のひらで滑らすように軽くこすりますと、
進行方向へ回す場合は滑らかで、反対の場合は多少引っかかりが出ます(夏用でも可)。
これは、先に接地するタイヤブロックの部分には荷重がかかりにくく、中央部でよりも、もっと後方で
最大になるためと思われます。
右前タイヤを例としますと、タイヤ上部では自動車の後方へ滑らしますとブロックの前方が摩耗しにくいわけ
ですからゴムが減ってなく、後方で減るので、引っかかりが出来るわけです。
今のタイヤの性能から逆に組むの事をメーカーとして推奨しているのですが、
(クロスローテーション)
普通は右・左とも前後のローテーションが行われているようです。
段差がひどくなりますと、逆方向に付けますとタイヤノイズが出やすくなる理由からかも知れません。
ホイールの裏に右用、左用と書けば良いのですが、これでもある程度は判断できます。
(逆回転での剥離問題とか、前後入れ替えでの横Gでの挙動変化とかはありますが、
あくまで一般使用の範囲ではどちらでも問題はないと思われます。)
全く関係ない話でした。忙しくて更新できないのですいません。
摩擦−摩耗の関係がここにもあらわれています。
もう一つエンジンを劣化させている原因として、燃料(ガソリン・軽油・重油)の質の低下があげられるのかも知れません。

ISO(国際標準化機構)、CIMAC(国際燃焼機関会議)などの学会においても、燃料規格の見直しが必要とされ、
順次変更されようとしております。
現在の燃料規格は実際の各シリンダーでの燃焼状況にばらつきを起こす燃料製法が用いられているようになっているそうで、
その事によるオイル劣化も見逃せない結果を招くことがあるようです。
随分少ない含有量とは言え、硫黄成分も含まれていますし、
直流分留によるものと違い、分解法、特にFCCと呼ばれる接触分解法が実際の燃焼に問題があるものと
見られているようで、エンジンなどが新しく改良されている以上、燃料の方もそれにあった規格が必要なのではないかと思えます。

こういった経緯から、実際に整備に携わる方からも「添加剤」という形で、
メンテナンス商品として登場してきた理由も判るわけです。最近特にディーラー店頭にまで置かれているのを
よく目にします。
エンジンの高性能化・精密機械化と引き替えに、質を重視しますとメンテナンス面での負担が増えてくるわけですね。
ですから、トラブルが起こらなければオイルだけでも良いですし、
トラブル防止のために添加剤を使用することも良いことになります。
積極的にフィーリング向上を考えての製品も多々ありますが、
また、性能劣化を最小限にするために使用するという考えも当然出てきます。
これらは、オーナーさんの自動車に対する考え方次第となってきてしまいます。
ですが、情報源がまだまだインプレ的ですし、
データと言っても重箱の隅を「重箱大」に拡大するような誇張的なものや、
統計的に妥当性の根拠が薄い例証を出してきているなど、嫌気がさすような内容が多いのも事実です。
オイルメーカーさんの広告内容に惑わされることなく、
添加剤メーカーの不安を駆り立てる記事に翻弄されないことがますます大切となってきます。
製品は厳しいテストに基づいて規格されていますが、
「規格とは何か」が判ってきますと、それが発展途上の最低ラインと言うこともわかってくるでしょう。
オイル無交換で動くという機械は、機械の寿命とオイルの寿命が同じになるように設計されているわけで、
特殊な内燃機関には確かにあります。
ただ、高々3L〜6L程度の自家用車ではそれと同じ性能のオイルを使用しても、高性能フィルター機構を利用し
オイルから固体劣化成分を取り除いても、無交換では現在の所、無理です。
(ただし、かなりオイル消費があり、オイル補給=添加剤も補給しなければいけない場合は可能。
常に添加剤を含めたオイルが補充されるわけですから、これを無交換と言って良いかはちょっと疑問ですが)
消費が経済を動かしているのは事実ですが、
経済を動かす為に消費させるようではどうなのでしょうか?
おっとまた脱線。
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で、「効く」というのは、不具合・故障発生率を下げるオイル・添加剤のデータを元にして言い表されるのですが、
ほとんどが、大なり小なりそういった効果はあるはずです。

過走行でピストンとライナー間のクリアランスが広くなっている場合は、
低粘度オイルよりも高粘度オイルの方がフィールが良く感じられる場合があります。
高粘度になればオイルをかき分ける抵抗が増えますが、油温が上がった場合には油膜が薄くなりますので、
金属同士の接触を出来る限り少なくする事と、広くなった隙間に油膜による気密性向上によって
(その結果に燃焼がうまく行われる事になれば、更にパワーは出てくるはずで、)起こると言えそうです。
それを添加剤の成分で行うことも可能なわけで、
低温時にも粘性抵抗を低く押さえられればもっと良い事になります。
普通はポリマー系添加剤を入れることでされていますが、
積極的に金属面に被膜を形成させることで同様の効果を出す場合もあります。
問題となるのはそれらの成分の劣化の早さにかかっている事なのかもしれません。
ポリマーはベースオイルより劣化が早いため、これがオイルを黒く汚す劣化成分になりやすいからです。

清浄分散性を良くすることでは、いわばフラッシングによる効果に似ているのかもしれません。
オイルの流れを妨げているスラッジ等を取り除くことで、オイル循環が正常になりますと、
オイルポンプの抵抗が軽減され、油温が保たれ、燃焼温度が安定し、
オイルの役割である冷却効果によって油膜の保全が保たれますので上記同様、摩擦抵抗を下げる方向に
なります。
オイルリングやコンプレッションリングは劣化物が堆積しますと気密性を悪くします。
リングは複雑な挙動をしますが、滑らかに摺動することで気密性を保持する役割を持っていますので
この箇所の潤滑・清浄は重要になります。

ベースオイルの善し悪しは熱による酸化劣化が起こりにくいことで判断される傾向が強いわけですが、
添加剤ではあまりこのベースオイルを良くする事は出来ません。
添加剤に使われているオイルは鉱物油であったり合成油であったりするわけですが、
現在入っているオイルとの相性とも気にかけた方が良いように思えます。
ベースオイルが鉱物油か合成油かによって、使用される添加剤が異なるわけですから
合成油を使用しているエンジンに、鉱物油系に入れる添加剤を入れるのはちょっとどうかとも思えます。
また、化学物質ですから相性が良くない場合もありますので
出来る限り商品説明に明記があるなど確認が出来る物がいいと思えます。
酸化安定性は入っている添加剤の質にもよってきますが、
添加剤を入れて今までより早く劣化する傾向があるようならメーカーに問い合わせてみるといいと思えます。

摩擦・摩耗などを減らす添加剤では、油温が下がる傾向が見受けられます。
場合によっては、アイドルアップの延長やヒーターの効きが遅くなる事を感じられるかも知れませんが、
(今までより大きく粘度を下げたオイルを併用した場合にも起こりうる症状ですが)
その分、燃費に貢献される事になれば仕方ないのかも知れません。

摩擦・摩耗を少なくする事は、オイルと添加剤両方から研究されてきています。
オイル側は何と言っても熱による酸化安定性を保つ事が重要になり、
劣化成分になりにくい構造が求められます。
添加剤側は
特に自動車用「添加剤」は
比較する基準のオイルの質を少し良くしただけで(つまり鉱物油を合成油にするとかで)入れる必要のない添加剤から、
どんなに優秀なオイルでさえもそれを入れると効果があらわれる添加剤までピンキリです。
ですが、普通は添加剤のパッケージに書いてある効能書きを見てしか判断できませんので、
値段で判断してしまう事も多いのですが、それで効果が保証されるわけでなく、そうではない事も多くあります。
(色々と試された方にお尋ねになれば判ることと思われます。)
また、環境問題など社会的な要請から新しく生まれる添加剤もあれば、
使用され、効果が認められ、量産され価格も下がって広まって行く添加剤もあり(特にこの場合は、「オイルとして」最初から
ブレンドされてしまう傾向があります)、
どこまでが「オイル」として扱われ、どこまでが「添加剤」の効果なのか段々と判りにくくなってきていますが
実際に試してみて判断するしかないのが現状です。

しかし、残念なことに一部の誇大広告にあるような有害な宣伝によって、
潤滑に対する考え方がゆがめられているのも残念な事柄です。
自分の判断力を養うことがいかに難しいかは、様々な心理学の応用から分かってきていますが
そういう状況に自分を置かない事も大切です。

どうも中途半端になってしまいますが、機能的な性格を持った商品だけに、それぞれがうまく利用され、開発されて
程々に、進歩していくのが技術ですから、

添加剤もその一つとして「冷静に判断」していただく必要がありそうですね。
中途半端は仕方のない世界なのかもしれません。
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