b.オイルコントロール機能
ピストンのリングの中で、最も張力の高いのは「オイルコントロールリング=オイルリング」になります。
幅が厚く、面圧を高くしてあります。
リングの外に向かう力はエンジンオイルの油膜を管理するわけですから、
理想的な流体潤滑をある程度犠牲にして
(ですから、実際の潤滑モードとしては、潤滑油が十分に供給されていない=オイルリングでは0.3から1ミクロン程度)
リング側に表面処理を行い、「耐摩耗性」「耐焼き付き性」の改善を図っています。
オイル量が多ければ、燃焼室へオイルが混入し、不完全燃焼を起こしたり、カーボンスラッジによる
リングのスティックの原因になります。
ですから、その事を考えて上で、オイル消費を減らすように作られています。
3本のリングを使用している場合、オイルコントロールに関係するのはトップのコンプレッションリングと
このオイルリングが中心になり、中間のリングはあまり機能していないとも言われます。
オイルコントロールの目的は
と言うことになります。
その中で3.がここでの事柄になりますが、それは、
1.シリンダーのトップランド(トップリングの溝より上のシリンダー部とライナーとの隙間)が狭い。
2.リング溝の側面の隙間が狭い。
3.オイルかきの機能が十分に働いている。(リング構造やピストンクリアランス等、様々な側面があります)
オイル消費は様々な要因が考えられますが下図にその構図を引用しました。
リング全般に関して | ・シリンダー壁面の荒さ(凸凹)は約2μm(ミクロン)あたりが一番オイル消費が少なく
それよ平坦でも、荒くても(こちらの方が増加が急激だが)オイル消費は増える。 |
・低蒸発性油は、シリンダー壁面温度が160度C以上で顕著なオイル消費低減に
貢献する。 |
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・トップランドとシリンダーの隙間は出来るだけ狭い方がオイル消費が少ない。 | |
・同ストロークのエンジンではエンジン回転数が高くなるほど消費が増える
(回転数の2乗に比例)。 |
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・リングのポンピング作用によりオイルが持ち上げられるので、側面すきまは出来るだけ
少なくし、リング溝の下側面荒さや溝の摩耗はオイル消費を増やす。 |
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・トップリングの持ち上がりは、トップランドとセカンドランドの圧力の差で起こり、その際
オイルは燃焼室へ飛散し、オイル消費を増やす。 |
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オイルリングに関て | ・シリンダー変形は、締め付けや、熱などがかかるためある程度避けられないが、
その変形に対して、追従性の良いリングがオイル消費低減に貢献する。 「3ピース組み合わせスチール製リング」「コイルエキスパンダー付きリング」等。 |
・ピストンの首振りがオイル消費に影響するため「組み合わせリング」では
レール間距離が短い方が消費が少ない。(h1=4mm:2.8mm) |
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コンプレッションリングに関して | ・バレルフェイス量を最適化する事でオイル消費が押さえられる。
セカンドリングではストレートフェイスよりテーパーフェイスの方が消費は少ない。 (角度が大きすぎると逆に増え、またアンダーカットを施したタイプの方がオイル消費は 少ない反面、アンダーカットするとブローバイ量は増える。) |
・トップリングの持ち上がり対策として、セカンドリングの合い口を広く採る方法と、エッジ部
をカットしたインターナルベベルによりシール性を向上する方法がある。 前者はブローバイが増加し、 後者はねじれ角が大きくなると(30度あたりから)増加傾向になる。 |
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その他 | ・アクセルON−OFFで吸気管内圧が低い状態では、オイルが燃焼室に吸い上げられるため
オイルの消費が増える。(−600mmHg以下で急増) ただし、エンジンブレーキをかける頻度の方が消費への影響は大きい。 |
・初期なじみがついていないエンジンはオイル消費が多い。なじみ期間は約15−20時間
というデータもある。 |
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・一般にオイル消費はリング、シリンダーまたはリング溝の摩耗によるクリアランスの増加
張力減退が考えられる。 また、シリンダー壁や、シリンダー−ピストン間のオイル量により変化し、オイルパンのオイル レベルにも関係が深い。 |