スパークした火花が燃焼ガスの核(火炎核)となり、火炎伝播に成長するのは が、一定の値にある必要があります。

ミスファイヤ(失火)は火花が飛ばないときだけでなく、火花が飛んでいても
空燃比や火花の強さによっても起こるわけです。

 ということで、高性能プラグであるNGKの”イリジウムプラグ”について お聞きした事をまとめてみました。 


かつての点火プラグは、プラグの「熱価」に敏感で、プラグの冷却性が高くて プラグの温度が低いと、カーボンが付着してミスファイアや絶縁性の劣化がおこりました。
反対に、プラグの温度が高過ぎると、加熱しすぎて過早着火の原因になりました。

 そこで、絶縁体の長さによって、冷却性を変え、エンジンに合う熱価のプラグを 取り付けることが必要でした。 しかし、点火方式も変わり、電子制御化され、最適な点火時期を選んでくれていますし、 点火プラグ自体の性能も大幅に進歩しましたので、それほど神経質にならなくても 良くなりました。
ただ、火花間隙の大きさ(ギャップ)は普通0.8mm前後になっていますが、これは、 空燃比や放電電圧と密接な関係にあるからです。最近は1.1mmも増えてきました。 (2.0mmぐらいまであります。)

 この辺りの話しやプラグの各名称や全形はNGKのHPにありますので、そちらを参照してください。
また、デンソーのHPにも詳しく載っています。
なおイリジウムプラグはこちらのページ(イリシリーズ)かイリジウムパワーにあります。

 より良いパワーを得るためには、火花が安定して飛ぶことと、確実に火種が成長することが必要になります。

1)火花が飛ぶためには

電圧をかけてプラグに火花を飛ばせるには、
 
 

(1)電圧の高さが高いほど良く

(2)電界強度(密度)を上げる

ということが、必要になります。

 (1)これは、シリンダー内の混合気の層を突き破って火花が飛ぶわけですから、 (絶縁破壊という雷などの落雷と同じような事を 起こしているわけですから) 普通の電圧では無理な話です。プラグの外側電極と中心電極のギャップ(隙間)は 狭いほど、飛びやすくなりますが、0.6mmのギャップでも15000ボルト、 1.1mmですと20000ボルトほどの電圧がかかります。
この電圧は、自動車によって決まってますので、コイルを取り替えるというかたちで上げることは出来ます。 しかし上げすぎると、同時に電極の金属も疲労させ、プラグの耐久性も低下させてしまいます。
最近の自動車では30000ボルト程度は出るそうですが、
どうしたら、低い電圧で放電出来るかというと、以外と簡単で、次にある電界強度を上げてやればいいと言うことになります。

 (2)電界強度を上げるには、プラグの外側電極と中心電極のどちらか、 または両方を小さくしてやれば出来ます。 一般の中心電極は直径2.3mmですが、イリジウムプラグなど高性能プラグは 直径0.7−0.4mmあたりになってます。外側電極もテーパーカットして細くなっています。 こういったことは避雷針のようなもので火花を飛び出しやすくするには、 電極のプラスとマイナスの間を縮め、 先端を鋭くしてやればいいということなのです。溝を切ったかたちにしているものや、 V形に削ったもの、または Yのように外側の方を変形したものも、基本的には同じで、 角を多くして火花を飛びやすくしていると言うことです。 電界強度とは火花の密度ということで、密度が高いほど良いわけです。 ですが火花は、そういったプラグの形状に 関係なく、1つだけしか出ず、ほぼ同じ”太さ”しか出ていません。また、火花が飛ぶ位置も 図のように中央ばかりではなく、様々に飛んでいます。 私もここら辺は、勘違いしておりました。
なお、中心電極0.7mmのイリジウムプラグでは白金プラグの2倍の寿命を持ち、0.4mmでも
白金プラグと同等の耐久性を持つ製品が開発されています。
直噴用のイリジウムプラグはサイド電極を持ち、3方向に接地電極がある構造をしていますが、
絶縁体部にカーボンがあると、絶縁性が低下するため、サイド側へ火花が飛び、カーボン汚損対策となっています。

 ショップでデモンストレーション用に、普通のプラグと高性能プラグorプラグコードとの 比較では、明らかに高性能側が「火花が太い」ように見えたのは、多分私だけではないと思います。 ここのところは多分「プラズマ」に関する領域なので、調べておきます。 単に、電界強度が高いため高温になり”明るくなるだけ”なのかもしれません。

 ところが、調べてゆくうちに、あの明るさの原因が分かってきました。
ちょっとこの場では長くなりますので火花がより明るい理由 で、説明いたします。(工事中)

 火花が少々太くても、馬力が上がるのではありません。完全燃焼による、本来のパワー回復はあります。



イリジウムプラグでは、電界強度が飛躍的に改善されます。
そのため、低い電圧でより強力な発火を保てますので、
今までとはひと味違うレスポンスやパワー特性の改善がみられます。
上記の色による強度区別は「電界強度」であって、火花の広がりや、火花自体の温度を表すものではありません。
通常のニッケルプラグの直径2.5mmの中心電極のプラグと比較しますと
急加速時の高過給圧下、希釈燃料下での要求電圧が火花ギャップ0.9mmとして26−27KV必要な場合でも、
20KVと、約7KVも低くなり、安定した火花の放電が確保されます。

2)火種を成長させるには

(1)火花が確実に飛ぶ

(2)火花で出来た火種をシリンダー内に広げる

ということになります。
 
 

(1)火花が確実に飛ぶということとは

上記のグラフからもわかる通り、同じ電圧・同じ混合気の圧縮(*注1)ならば、火花が飛ぶためには、 ものほど、良く飛ぶことがわかります。{”デポジット(*注3)が少ない”はグラフにありませんが・・・}
しかし、電極のギャップが狭くなると、火種が成長しにくくなりますし、燃料が濃い自動車は燃費が悪いですし、 などなど、やはり自動車メーカーでテストされた「標準プラグ」を基準にした方が良い事になります。

 問題は、「どんな条件でも確実に火花を飛ばせる」ということと、その後出来た「火種を確実にシリンダー内へ伝播させる」 ということになります。

 電極のギャップを狭くしないで、火花を飛ばすためには、電極自体を小さくしてやると言う方法がとられています。 これは、避雷針をみれば分かるように、火花という放電現象が電子の「なだれ現象」で、尖っているほうが、局部電界が 高くなる、つまり放電しやすくなるということがわかってます。(*注2)

 電極を小さくすると、火花の電界密度が高くなることが知られています。注2の図からも線の幅が狭くなっていることがわかりますが それが、この事です。すると、火花のもつエネルギーがその部分に多く集まるという事になります。例えば、砂場で砂の山を作ったとして みると、電界密度が高いと言うことはより細くて堅い棒を突き刺すことと考えれば分かり易いかも知れません。 普通のプラグが太めの角材だとしたら、高性能の細い電極プラグは細い鉄パイプと見なしてください。
どちらが簡単に砂山を貫通出来るかと言えば、もちろん鉄パイプの方です。 ”砂山の砂は絶縁体の混合気のたとえ”ですから、鉄パイプの方がより確実に火花を飛ばすことが出来ます。 そして、火花のまわりに、「良い状態の」混合気があれば、「火種」が出来ることになります。

(2)火種をシリンダー内に広げる

火種はそのあとシリンダー内の混合気に燃え広がります。
この速度は1秒間に20−30mも進む早さで、広がる 現象を「火炎伝播」といい、その速さを「燃焼速度」といいます。
インレットマニホールドの負圧が大きく混合気の充填効率が悪いと、圧縮圧力が上がりにくく、回転数も低いので
燃焼速度は遅く、逆に充填効率が高いと回転も速くなり燃焼速度も速くなります。
ただし、ノッキングは異常な燃焼の仕方で燃焼速度は極端に早くなりますが、有効な動力とはなりませんので
この場合、速度が速いことが良いことにはなりません。

 火種が立ち消えしないで、確実に火炎伝播するには

総合的効果として、今までのプラグより、エンジンのかかりが良くなり、 アクセルON時の応答も良くなり、 加速がスムーズになり、パワーを回復した感じが強くなり、おまけに燃費も上がるということになります。 
*注1:実は、電圧と気圧と電極間隔の間には最も理想的に飛びやすい”点”がありまして、
その点より圧力が低くても要求電圧は上がります。例えばブラウン管などはこの
「真空度が高いと絶縁性(=火花の飛びにくさ)が高くなる」
ことを、利用してます。
*注2: 

*注3:プラグに着くデポジットは以下の通り。 *注4 電極に使われる金属の融点
 
 
融点(度C) 比重
Ir・イリジウム 約2450 約22.4
Pt・プラチナ 約1770 約21.4
Ni・ニッケル 約1450 約8.9

スパッタリング
摩耗しやすさは、金属の重さにも影響を受ける。

参考文献:「謎だらけ・雷の科学」早水敏幸著・ブルーバックス
参考文献:「スパークプラグ<技術編>」日本特殊陶業編

NGK参考資料電気的な性能と点火電源の種類と特性
お薦め文献:「スパークプラグ」西尾兼光著・山海堂(自動車工学シリーズ)
元のページへ
ホームページへ inserted by FC2 system