肩の凝らない、しかし、嘘かもしれないページ61

添加剤の効果とプラシーボについて

オイルやオイル添加剤の効果は、それほど劇的な変化が現れることは少なく、
効く・効かないが、とかく話題になります。
劇的と言う場合、修復剤として使用して、不具合が出ているから直れば(あるいは症状が緩和されれば)
はっきりと効果がわかるわけですが、
全く異常のない車にとっては、比較の差がでにくく、差が出てもレベルが低いため、変化がわかりにくいと言うことから
「プラシーボ=暗示効果」として扱われることが良くあります。

エンジン出力改善として添加剤を使用される場合は、出力を決定している基本式を知っている事が重要です。
内燃機関の容積型と呼ばれる分類にガソリンエンジン・ディーゼルエンジン・ロータリーエンジンはなりますので、
(ガスタービン・ジェットエンジンロケットエンジンなどは速度型内燃機関になりますが)
作動流体の容積変化を利用する構造から考えてみる必要があります。
最初は石炭ガスを使用したガスエンジンで無圧縮・2サイクルから始まったと書かれていますが
当時の燃効率4%から比較すれば30%ほども利用できる現在のエンジンは改良に改良を重ねた結果であり、
そう簡単にこれ以上の消費燃料対出力割合での熱効率を上げることが難しくなっています。
ちなみに、ガソリンは石油精製品として厄介者扱いされていたそうなのですが、
ダイムラーがエンジンに使用し・・・と歴史は続くわけです。

ここで熱効率は燃料消費率に直接関係することで、熱効率が高いエンジンは燃費がよいエンジンと言うことで
出力が大きいと言うことにはなりません。
ですから、熱効率が悪くても出力=馬力は出せることになります。
(サーキットで出力が大きなエンジンは相当燃費が悪いわけですが、別の基準で、良いエンジンがあることになります。)

軸出力=軸回転速度(1分間の回転数)×軸トルク(回転する力の大きさ)で表され、
1馬力(PS)=回転速度×トルク/716・2と言う関係になります。

ですから、この式から出力を向上させるには、トルクか回転数を上げればいいことになります。
このために取られる手段としては

と言うことが効果的とされ、
オイルと添加剤は容積以外の項目で出力向上に役立つわけです。
気密性に対する充填剤としても働くわけですが、最大の効果は「出力損失を下げる」目的になります。
つまり、本来の設計から理論的に導き出された出力に近づける事が期待される効果となります。
(バランサー調整などはまた別の改善方法ですが)
このため、一般的に添加剤は、元々あった出力より、いろんな原因で落ちてきた自動車での出力を、元に
戻してやるために使用されることが多く(本来そのエンジンが持つポテンシャルを有効に引き出す)
、技術の進歩に伴うエンジンの高品質・高耐久性もあって、現在では、それほどエンジンが出力損失によって
出力低下がなくなりましたので、
特殊な添加剤以外は原因を改善する効果が薄くなってきています。

それはエンジン自体やベースオイルやオイルに含まれる添加剤の進歩とも共通する事なのですが、
様々な改良によって、改善できる率が下がってきていることにもよりますし、
添加剤の効果というものが特殊な状況でしか表れにくいこともあり、
そのため、一般的な安価な添加剤では「わからない」と言うレベルになってしまう事になります。
特に損失軽減による出力向上などではテスターによる変化でしか効果がわかりにくく、
そういう目的で使用される事は、いい状態のエンジンでは少なくなってきており、
もっぱら「添加剤=壊さない」と言う図式が定着しつつあります。

効いたという人の中でも様々な評価が現れますし、効かないと言う人もいますが、
それらは改善された項目によっての体感度が全く異なると言うことで、
数値的に体感度を評価することは難しく、曖昧な表現でしか言い表せません。
確かに「効いている」という事は自分の車では体感できるのに、
それを「効かない」と言う人が出てくるのも、実は当たり前のことで、
こういった現象はどうしてもその自動車の劣化度(あるいは出力損失度)にポイントがあり、
新車をいきなり「数%」も摩擦損失の軽減や気密性向上などの結果で出力向上するとは思われず、
(昔々の自動車でしたら起こるかもしれませんが)
ほんのごく限られた状況で起こる事柄と思われるわけです。

まさかサーキットを走行するわけでもありませんので、普通はアクセルを底まで踏んで走る状況には
滅多なりません。そういう競技走行用に一般の自動車は作られていないと言うのも事実ですし、
「普通パワーが出たと」言うインプレで表現されるのは、低中速でのレスポンスの良さであったり、
アクセル開度の微妙な差として体感されるもので、
乗車人数が一人増えただけでも、重たく感じるような体感領域での事柄なのです。

パワーが必要な場合は、排気量を増やすか、燃料を多く消費させると言うことの方が、圧倒的に
体感は出来ます。内燃機関は熱を仕事量に変える装置ですので、
熱量を多く出す方が圧倒的に簡単に出力を取り出せます。
(なお、圧縮圧力を上げる事は燃料のアンチノック性にも関わり、限度があります。
ノッキングは、出力損失・エンジン破損につながる現象ですので熱効率向上と出力改善のバランスが
難しいセッティングと言えます。)

普通こういったパワーアップは上記項目の「シリンダー容積を増やす。」「吸入効率を上げる。=排気効率を上げる」
「圧縮圧力を上げる」という事から様々に検討され、
自動車メーカーも新しいエンジン開発の課題となっているわけですです。
メーカーでは保証問題もありますので、エンジンの耐久性にリスクマージンが十分取られている事と、
価格の問題がいつも横たわっており、
本当はまだまだ出力アップが出来る状態ですので、
ですからユーザーサイドではそれを、同じ自動車で行う事(いわゆるチューン)でも可能ですし、
添加剤などを使用してそれを行うことも可能なわけです。

出力向上に限って考えれば、
効果としては前者のチューンの方が差が大きく出るわけですし、
オイルや添加剤は基本的には「保護目的」になるような効果を考えてやる方が良いことになります。

オイルや潤滑の最大の目的はここにあると言って良いでしょう。
ですが、エンジンの特性に合ったオイルに出会ったとき、「これは今までのオイルと違う」と言うことが
わかるように、オイルや添加剤は質的な向上を感じることがあります。
最初から入れられているオイルなどは必要条件を満たしていれば良いわけですので、
こういったことも起こり得ます。
潤滑の事をを考えていないエンジンはありませんし、燃費のことを無視したエンジンもありませんし、
本来、同時進行する領域の事柄であり、それぞれ分けて考えることは出来ない事柄なのです。

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摩擦を調べてますと、ある摩擦係数をそれぞれの固体は持つことがわかりますが、
取り巻く環境(雰囲気)によって、数値が異なることがわかります。
止まっているぎりぎりの限界の重さ=出力・馬力がある事は容易に理解でき、
例えば500gのおもりでは止まっているが、501gになりますと動き出すという物体があるとしますと、(静摩擦)
動き出した後は、少しの力でもそのまま動き続ける(動摩擦)ようになりますし、
この「動く」と言う意味では、出力のわずかな差が絶対的な現象の違いになって表れる事で観察されることになります。

もしこの差がよりよいオイルや添加剤使用で現れた場合、つまり摩擦係数の小ささで、おもりを軽く出来た場合は、
その変化は目視できます。
この「動く」と「動かない」では、全く違うことは理解しやすいのですが、
普通はエンジンの基本的な出力の方がはるかに大きいため、
目立った変化が体感しにくいのです。

最高出力が100馬力のエンジンを使用する場合、
それがオイルや添加剤を使用することで105馬力になったとしても、
図1のような出力の出方であれば、(まあ、こんなグラフになる事もないでしょうが)

通常の運転ではほとんど体感できませんし、最高出力を出したときだけの違いとして
評価されます。
それよりもこちらの低回転側へ最高馬力を持っていった方が、
体感的には「違う」と感じると思われます。
一番良いグラフとしては図3になるのですが、
ほんの一部の添加剤でしかこういったグラフが現れません。

とりあえず、多くの摩擦係数低減効果のある添加剤などが登場しまして、
古いタイプのオイルグレードの時代には効果があったのですが、
段々オイル・エンジンの性能が向上しますと、
その摩擦低減による出力向上のグラフとしては新車ではさほど変化せず、
もっぱら出力が低下したエンジンでは効果が現れ、
一般的な使用状況では「わからない」という判断をせざるをえなくなってきてしまいました。
摩擦低減だけではどうもそれほど効果がわからないと言うことでしょうか。
エンジン摺動部で摩擦低減率が5%改善されても、
他の摺動部が改善されなくては、その全体的な摩擦による出力損失の割合で考えると
高々0.04%(参照)という僅かな数値になってしまいますので、

熱効率の30%の内の7%の内の5%=0.105% 
そのうちエンジンでの割合を40%(=ピストン、リング、クランク軸、動弁系、オイルポンプなど)

     と見積もっても全体からの改善率は0.042%
これだけでは「プラシーボ」と言われても仕方のない事と思われます。

が、しかしエンジンの出力向上は何も摩擦を減らすことだけでないことがわかっています。
それは、端的に言いますと、ピストンリングの気密性に関わることと、
内燃機関の温度に関する燃料充填率or酸素供給率にあたります。

燃焼室内で混合気が燃焼する際に、燃料が全くすべて完全に燃えているわけではないことは
排気ガス成分をを測定すれば一目瞭然にわかります。
それは無理矢理、混合気を濃くした状態ではなくて、アイドリング状態でも起こっていることは
車検の際計測されている「排ガス濃度」にも現れていることです。
EGR装置・3元触媒を装着して、ある程度未燃ガス・有毒ガスを燃焼・還元させても
それでもまだ出てくるわけですから、
シリンダー内では完全燃焼にはほど遠い燃焼が起こっているということが言えます。

プラグによる混合気はいつも100%燃えるのではなく、
何%か燃えずに、かといって失火してしまいエンストする状態にもならない程度に
そういった複雑な燃え広がり方を毎回しながら
燃焼しているというのが普通の内燃機関の状態です。
ピストンリングからの未燃ガス等ブローバイガスの吹き抜けはもとより、
燃え残りのカーボンも生成していることは、
プラグを見ればすぐわかります。(熱でまた燃えてしまうことも同時にありますが・・・)

熱効率から計算すれば、燃料すべてを燃焼させれば、どれだけの運動エネルギーに
換算できるかが理論的にわかっているのですが、
完全燃焼させてほぼ満足のゆく数値にしようとしますと、
恐ろしく高価な、それでいていつまでたっても目的地へ到達できないような自動車に
なってしまい、実用的ではありません。
約20%燃費アップさせたと言われるGDIとかG4が「馬力がない」と言われるのにも
こういった熱効率と出力の関係があるからでして、
それでもそういった効率のいい回転数は一部の範囲に限られしまい、
フルスロットルしようものなら、普通のエンジンとさほど変わらなくなってしまうのではないかと思います。
理論値と現実の機械とはまだ相当かけ離れていることは仕方のないことです。
で、まだまだ技術革新があるのでしょうね。

本題の「プラシーボかどうかどうやって判るのか」が問題ですよね。
とりあえず前置きが長くなりすぎましたので
次のページへ引っ越ししまして、
続きを書きます。
(と言って一休み、笑。)

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