気密性をあげるオイルの役割

エンジンにオイルを入れる理由の最も大きな役割は”オイルの潤滑膜を利用して 摩擦と摩耗を少なくする”ということです。

それと同時にオイルの潤滑膜はコンプレッションにもかかわっています。

ピストンとピストンリング

エンジンの中ではガソリンを燃やしています。元々ガソリンは液体ですから
燃焼によってもとの液体より大きくなろうとします。その気体の膨張圧力を利用して、
エンジンを動かす、つまり動力に変換するには、密閉された”へや”が必要になります。

たき火は暖かいけど、そのままでは動力にならないということです。
つまり、やかんのふたを持ち上げるには、膨張圧力に負けない密閉された空間が
必要で、膨張する燃焼ガスを有効に”仕事”に換えているのが、ピストンとシリンダー
の部分になります。

 そのまま燃やしたのでは大きな力にならないので、混合気をわざわざ圧縮し、
爆発させています。

 その爆発力は、ピストン1cm2あたり約30−50kgですが、ピストン1個の
面積に直すと、半径(2000ccクラス=4.25cmとする)の2乗に”パイ”(3.14)をかけて
1700〜2800kgにもなります。これはピストン1個でその車を1台らくらく
持ち上げられるほどの力を瞬間的に受けていることになります。

たとえば水1ccを1度C上げるのに必要なエネルギーは1カロリーということは 普通知られてますが、
1カロリーというのはどのぐらいの力かということは、 あまり知られてません。

(a)kgの物を(b)メートル持ちあげるのに必要なエネルギーは
(a)kg(m)×引力に対抗する為の力(b)(g)×(c)メートル(h)と表せます。
 (a)(m)×          (b)(g)×    (c)(h)ジュール=mghジュール
仮に水を1cc(1グラム)持ち上げようとすると1カロリーでは
どのくらい持ち上がるかというと                                                                                               
1カロリーは4.2ジュールなので、
4.2ジュール=4.2mgh=4.2×0.001×9.8×(c)(h)
4.2=mgh
両辺をmgで割ると
4.2÷mg=h
h=4.2÷0.001×9.8=420
となります。
1カロリーで1ccの水が420m持ち上げられることになります。

(1)吸入行程:ピストンが下がり混合気を吸い込みます。
  ピストンの溝の上側にコンプレッションリングの上面が接触して
  溝にある少量のオイルが燃焼室側に入り込むのを防いでいます。
  同時にシリンダー壁に付いている余分なオイルを落とします。
  上部に付くのはこの行程だけです。

 (2)圧縮行程:ピストンが上がり吸い込んだ混合気を圧縮します。
  ピストンが上がるのでリングは溝の下側の面で圧縮する混合気の圧力を
  受けます。それで混合気を下に逃がしません。

(3)爆発・膨張行程:ガソリンと空気が混ざった圧縮ガスをプラグの火花で爆発させます。
  ピストンリングにガスが強く叩きつけるように当たるので
  リング下の面からのガス逃げをも防止します。
  ピストンの動きに左右されない状態はこの行程だけです。

 (4)排気行程:(2)と同じ動きをします。燃焼したガスは排気バルブから
  最終的にマフラーへ行き排出されます。

オイルはどうなっているのか

コンプレッションリングはピストンリングの3本のものは上部2本
2本のものは1本で、ピストンの溝に はめ込まれていますが、混合気の燃焼によって
ピストン、ピストンリング、ピストンライナー(筒)の熱膨張を受けますので
わずかな隙間をつくってます。

また、ピストンリングは、リング状の一部が離れた輪ですから(極端に書けば”C”と言う形です)
その、隙間から、燃焼してない、または燃焼したガソリンが、ごくわずかですが漏れてゆきます。
その、未燃焼ガソリンをもう一度戻して、燃焼させると、排気ガスにも燃費にもいい結果が出ます。
(EGR+ブローバイガスの還元)
ブローバイガスは、オイルを痛めますので、
それらから出来る窒素・硫黄酸化物なども オイルの清浄分散剤で中和したりしています。 
熱膨張してもピストンとシリンダーのすきまは50〜120ミクロン(0.05〜0.12mm)あり、
そのすきまをオイルが密封しているわけですが、
上記のようにリングは複雑微妙に動きますので、
エンジンの状態はオイルの状態によってもかなり影響を受けるわけです。



また、燃焼ガスによって、オイルは燃えたり、劣化のため潤滑不足になったりし
ひどい場合はリングをの動きがスラッジなどのため阻害されたり、リングを固着させたりし、
コンプッレッション不足、オイル上がりを起こしたりもします。
パネルコーキングテストやホットチューブテストが300度C前後で
テストされているのはこの辺りをにらんでいるからです。

 このような環境で隅々まで素早く行き渡るようにするためには、

・粘度が低く、しかも油膜切れが少なく

・高温に強く、燃えにくく

かつ

・ピストンの運動に抵抗にならない

と言う、かなり条件の厳しい、いいオイルが要求されるゆえんです。 ところで、爆発行程で、
高圧高温ガスにさらされたシリンダーの壁のオイルは
大丈夫なのでしょうか?
答えは、ほぼアウト。トップリングのあたりは次の排気行程では、
オイルがほぼ無い状態と考えられます。
ピストンが燃焼室辺りでクリアランスが無くなってゆくこともうなずけます。
そのための潤滑添加剤もあるのですが、基本的には燃えてしまうようです。
ただ、ガソリンと混ぜることによって
いつも潤滑効果のあるようにする事は可能です。
 
 

 放熱量とはエンジンの冷却のために逃げている熱を指します。
燃焼ガスは最高で約2500度Cになりますが、 シリンダーのヘッド部では
約300度Cに冷やされてます。
つまり、冷却されてラジエターから外へ逃がしている=捨てている、仕事量なのです。
高温のまま直接捨てている排気ガスと合わせると60%以上 も無駄な消費をしているわけです。


次のページオイルの密閉性と粘度による抵抗

 元へ戻る


ホームページへ inserted by FC2 system