燃費−2−

(1)空燃比−完全に燃料を燃やす

読んで字のごとく”気”と”料”の”率”のこと (混合比、A/F=エーバイエフ)です。
ガソリンを完全に燃やす時はガソリン1に対して 14.7前後の空気が必要になります。
この数値は理論的に出された数で理論空燃比( 一般に「ストイキ」−Stoichiometry−)と呼び、 実際はもっと濃い12.5−13対1ぐらいが出力の最高値で熱効率は理論空燃比より少し薄いところで最高値を出します。

アクセルのオン−オフ、ブレーキ、シフトチェンジ、スピードなどによって、 この空燃比の値は絶えず変化しています。

そこでその時の空燃比を理論空燃比で割った値を考え、空気過剰率とします。

空気過剰率が1より大きくなれば燃料は少ない=希薄(リーン)
空気過剰率が1より小さくなれば燃料は多いので=過濃(リッチ)となります。

リッチの時はエンジンの出力は大きくなりますが、熱効率は悪くなり排気ガスも
有害物質が多く出ます(坂道でアクセルを踏むという状況です)。
出力を上昇させる場合に特に顕著な例ですが、燃料の気化の状態・運動するピストンなど加速や摺動部の摩擦などなど
様々な要素が関係するためと思われます。
燃料のリッチ状態はそれらに関連し、レスポンスに重要な因子となっています。

*熱効率・・・簡単にいうと”燃費”ということです。シリンダーで最高温度になった
       ガスの状態が排気ガスとして出されたときは仕事をしたので温度が
       下がっています。その熱量の”差”が大きいほど熱効率がいいということです。
       例えば2000度C−600度C=1400度・・・これが仕事量となります。
       ただ、仕事量にならない損失がかなり出ます。
       ガソリン車では30%程度しか仕事量に変換できません。 

*空燃比・・・ガソリン1gに対して上記説明のように12−15gの空気が燃焼するわけですが、
       体積の比で見ると約8000倍もの空気を使用しています。

(2)圧縮するのはなぜか

燃焼する前に混合気を圧縮すると、熱効率は上がります。理由は という理由です。

ですから圧縮比が高いほど、熱効率も高くなるのですが、ある限度を超えると
ノッキングという異常な燃焼の仕方になります。

ノッキングを避けるために点火時期などを変えると今度は熱効率が下がります。
また圧縮比が上がるため、冷却損失は増えますが、これもある限界点から仕事の増加
を損失の方が上回るため、熱効率は低下し始めます。

 圧縮比の上限はエンジンによって異なりますが、一般的には、ピストンが
一番上に来たときの燃焼室の容積(V)とその時の壁の面積(S)の関係で表されます。

それを”S/V比”といい、燃焼室の表面積(S)がその容積(V)より大きいエンジンほど
冷却損失が多いので(冷えやすいので)圧縮比の上限は低く(熱効率が悪いため)なります。

(3)燃焼させる方法

エンジンでの燃焼は2つの形態があります。 燃焼のさせ方も2つあります。
強制着火と自己着火です。
 

予混合燃焼

 スパークした火花が燃焼ガスの核となり、火炎伝播に成長するのは

が、一定の値にある必要があります。
あらかじめ燃焼するための気体(炭化水素)が酸素(大気)と混じり合っていますので
上記2点が揃っていれば、燃焼がスムーズに行われることになります。
逆を言えば、燃焼がスムーズに行われるように、どのようにしたらいいかをお膳立てをしているわけです。

(1)空燃比の範囲
燃焼させ方 濃い限界 薄い限界
キャブレター・インジェクター 8対1 17対1
リンバーン方式 25前後対1
筒内直接噴射方式 35〜55対1

(2)スパークした火花の強さ

どんなプラグが良いのか?は、こちらへ

 プラグの電圧は12000〜15000ボルト(ある資料では15000−21000、プラグメーカーは2−3万ボルトの印加を基準)の範囲になるように設定されていますが、
燃焼が始まる最小値は(1)燃料、(2)空燃比、(3)圧力、(4)温度などによって変化します。

資料の電圧値が異なるのは、要求電圧が、諸条件で変化するためと、電源能力にも異なる仕様があるためと思われます。 詳しくは、こちらのデータで!
リンバーンや筒内直接噴射(三菱ではGDI、トヨタはD-4と呼んでいるもの)では、スワール、
タンブル、スキッシュ(図参照)、や圧縮比をかなり上げるなどしてミスファイヤーを防止しています。
また、火炎の伝播する距離を短くするため、プラグの位置を燃焼室の中央付近にしたり、燃焼室の形を
コンパクトにし、高い圧縮比と、冷却損失低減と、燃焼時間の短縮をはかっています。現在は屋根の形の
ペントルーフ形が主流です。

なお、燃焼速度が早くなりますと、ピストン速度の遅い場合でも下記の図のように
パワーが出ますので、圧縮比を上げなくても燃費率は良くなります。

参考文献:兼坂弘著「続 究極のエンジンを求めて」三栄書房
ミスファイヤ(失火)は火花が飛ばないときだけでなく、火花が飛んでいても
空燃比や火花の強さによっても起こるわけです。
火花の隙間が広すぎて途中で途絶えてしまったり、
プラグコードが燃焼室以外のところでリークして、火種になる十分なエネルギーを発生しないため
火炎伝播を起こせなかったり、
火種自体が不十分になる状況があります。
この場合、燃焼室では、不完全な燃焼が起こります。
プラグ自体が液体の燃料で濡れていたり(キャブの詰まりやエアエレメントが詰まっているため大気の取り込みが出来ず
キャブレターで燃料が霧状にならないなど)、同じように大気を十分吸い込めない状況の場合にも起こります。
ミスファーアーはある程度確率の問題で、その都度、程度の差はあれ起こっていると考えられています。
その確率をさまざまなシーンでどれくらい減らすことが出来るかが考えられて、良い電圧、良いプラグ、良い混合気の状態、etcが
工夫されることになります。

拡散燃焼

いわゆる「ディーゼル車」の燃焼方式と言われていますが、実際の拡散燃焼だけで走ることは現在のディーゼルエンジンでは
様々な理由から不可能で、予混合化された複合的な燃焼方法を採っています。
ディーゼル車とガソリン車の最も分かりやすい燃焼させかたの違いとしては点火方法の違いになります。
ガソリン車があらかじめ作っておいた「混合気」をプラグなどで強制的に点火して燃焼させるのですが、
ディーゼル車では、ピストンに「空気」だけを取り入れ、圧縮し、高温になった空気中へ燃料を噴射することで、
その燃料が自ら燃え出すという燃焼の仕方も全く異なることになります。

拡散燃焼と予混合燃焼の違い
ディーゼル車で吸入された空気は、圧縮されて高温・高圧となるのですが、
この時の圧縮空気の温度は燃料の軽油・重油の自発火温度(250度C前後)以上、上がらないと
燃焼出来ず、エンジンがかからないことになります。
その為、ピストンでの燃焼室の圧縮比は、ガソリン車が7−10程度であるのに対して、
ディーゼル車は13−23程度と高く設定されることになります。
普通、ディーゼルでの圧縮行程の最後近くまで圧縮されますと、空気は500度C以上にあがり、
そこに燃料が霧状(数十ミクロン程度)に噴射されますから、燃料は瞬時に混合気になろうとします。
ですが、混合気は筒内でまんべんなく混じり合う事が瞬時に出来上がるはずはありません。
混合気が出来るのは局部的になり、空燃比自体も濃い場所と薄い場所が出来ることになります。
とりあえず、噴射された燃料は、噴射が最後まで終わるのを待つわけにゆかず、燃焼に最も適した空燃比の部分で
自ら発火して−この現象が自己着火(自発点火)と呼ばれます−燃焼が始まることになります。
予混合燃焼のガソリン車では混合気自体を吸入するため、点火すると一気に火炎伝播し、
急速な燃焼が進むのですが、
ディーゼル車ではこの自己着火した火炎に、まだ後から噴射される燃料が供給されながら燃焼が進行しますので
急激な燃焼はおきません。
 
 

新燃焼方式の一覧


ただいま工事中

(4)異常な燃焼の仕方と処置

ただいま工事中


次のページへ
前のページへ

ホームページへ inserted by FC2 system